多くの企業で、現場に向かって言われている「お客さまの立場になって考えましょう」は、
今年1月のコラム『今こそ“お客さまの立場”に立ってみよう』でも伝えたように、
個々人の“お客さま力”が欠けている状況では、なかなか難しいのが現実だ。
よって、例えば従業員研修などの依頼があると、参加する従業員の皆さんに必ずこんな宿題を出すようにしている。
「レストラン、洋服、コンビニ…、皆さん日々あらゆるところで“お客さま”になっているでしょう。
“お客さま力”を鍛えるためにも、サービスレベルをしっかりと評価する意識で店員さんと接して、
良い点はどこで、悪い点はどこなのか、判断するようにしましょう。次回の研修で発表してもらいます。」
そうすると、もちろん次回の研修では、それぞれの発表がある。
「きちんと評価しようと思って接すると、これまでとは違った見方が出来るようになります」といった前向きな意見も、多くの従業員から出てくる。
つい先日、同じ企業から3ヶ月ぶりのフォロー研修の依頼があった。
早速、全員に前回研修以降、どう“お客さま力”を鍛えてきたのかを発表してもらおうと、投げかけてみると…、
「今回は宿題があると聞いていなかったのでやっていません」という答えが返ってきた。
それも、殆ど全員が同じような認識のようだ。
「“お客さま力”は研修の為に鍛えるもの、なのでしょうか?」
「“お客さまの立場”に立てないという問題に気づいた皆さんが、それを改善するために“お客さま力”を鍛えようという話だったのを覚えていますか?」
しかし、このような話は決して珍しい話ではない。どんな企業であれ、何のフォローもなければ、殆どは同じような状況になる。
だから、何らかの問題意識をもち、その改善に関して従業員の皆さんに委ねなければならないようなものに関しては、粘り強くフォローしていく体制は不可欠だ。
フォローが無い状況で、勝手に継続するケースはそうそう期待できない。
なぜ、このような話をするのかと言うと、このような個々人のスキルに関しては、それぞれの日々の練習を促すしかないからだ。
突然、お客さまを前にしたときに、意識したからと言って出来るわけではない。
それは、例えばゴルフコンペの前日に、慌てて練習場に行ったりするけれども、全く当日には活かされないことと全く同様だ。
本当に、ゴルフが上手い人間は、毎日練習しているのが当たり前で、突然コンペの前日だから練習しようというような行動はしていないわけだ。
スキルを、現場で発揮するためには日々の練習、即ち、そのことに対してどれだけ意識を持ち続けているのかに尽きる。