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失敗事例から考える事業ドメインの決定、セグメント・ターゲティングの落とし穴

今回は、事業ドメインの決定からセグメント・ターゲティングまでの部分での事例をお話しさせていただきます。

成功事例に関してはすでに皆さん食傷気味だと思いますので、今回は日頃あまり目に触れることのない失敗事例をご紹介します。考える際のヒントになるように、失敗のポイントについては幾分強調しておりますので、その点ご了承ください。
また、成功事例については改めてお伝えしたいと思います。

■ 対象企業J社の概要

今回の登場企業は一般消費者を年齢/性別でセグメントし、それらの各セグメントの特性や嗜好性に応じた個別のサービスを提供しているJ社です。サービス業界での自社の経験を活かして、現在のカバレッジは手薄であるが、今後確実に厚みを増していくであろうシニア層を狙ったビジネスを大きく立ち上げたいというのが主なニーズです。参考までにこの時点での想定は数百億円という事業規模を目標としていました。

■ 新規事業のドメイン

J社は「高齢者に向けて健康になる機会を提供することで、老後の豊かな生活を創造する」ことを新規事業のコンセプトとして、“精神的な健康を維持するためのコミュニケーションの場の提供”と“肉体的な健康を取り戻すための健康増進サービスの提供”の大きく2つを事業の柱として想定しています。

■ マーケットリサーチの結果

外部環境としては、国の大方針と今回の事業コンセプトでもある「健康増進」の整合性がとれていること(喫煙者の方々は実感していることと思いますが、最近喫煙可能な場所が極端に減っているのも国のこの方針に基づくものです)や、今回ターゲットとしているシニア層の人口が2043年までは一貫して増加傾向にあることなどが新規事業の展開にプラスだと判断されましたが、一方で顧客となるシニアの視点からさらに深く見た場合にはマイナスの要素もいくつかありました。

というのも、今回ターゲットとしているシニア層の余暇時間は男女ともに「国内観光旅行」「外食」などに費やされており、“非日常性”を強く求めている傾向が見られたからです。
シニア向けに『健康増進』効果を謳う場合には、精神的、肉体的な負担は軽くする必要がありますし、とすると効果は漸進的にならざるを得ませんから、「コミュニケーションの場への“定期的な”参加」や「健康増進サービスの“継続的な”享受」というように行動を習慣化してしまわなければ期待するような健康増進の効果は得られません。ところが、日々の習慣になってしまった時点でシニアにとっての魅力がなくなるのですから、魅力のないものを習慣として維持するのは難しいという結果になってしまうのです。

また、事業規模の算定では全国展開したとしても最大100億円に到達するかしないかといったレベルでした。

■ J社はそのとき

この時点での大きな問題点は
1. 事業規模の不足(最大でも100億円程度しか見込めない)
2. 魅力的な(非日常性を感じる)事業と健康増進事業の不一致
の2点です。
ここでこれらの問題点を解決するために、J社は重大な決断を下します。
その決断とは
1. 健康増進をテーマとした事業の規模は100億円でもよしとする
2. 健康増進サービスに加えて、シニアに受け入れられる魅力的なサービスを付加する
3. 想定していた事業規模との差異は付加したサービスによって補填する
というものでした。
結果としてこの新規事業プロジェクトは上記2のサービスのリストアップまで進み、事業規模も想定していたレベルまで計画できましたが、最後まで事業の全体像を描ききることができず、いつの間にか立ち消えになってしまいました。

■ どこで躓いたのか

J社の新規事業プロジェクトが完結することなく立ち消えになってしまったのはなぜでしょうか?
どの分岐点で間違った方向に進んでしまったのでしょうか?
皆さんがコンサルティングを依頼されたらどのように考えますか?
(この記事は2008年8月14日に初掲載されたものです。)