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マーケティング的毒性を考える【2】

消費税増税二年半延期という話題が波紋を広げているが、前回の増税時の販売傾向を商業統計からグラフ化してみると、全業界で「駆け込み」「反落」が発生し、先食いの影響で次年度全体が伸びない状況に陥っていることがわかる。

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耐久消費財ほどダメージが長く続く傾向があるため、消費の根本的改善が進んでいない現在では駆け込みのリバウンド、つまり大きな変動に耐えられる体力がある企業ばかりではないことが実態である。大手企業の前期決算は為替差益が大きく、来期以降の想定為替レートに関して甘い予測ができないという状況も、先送り判断に影響しているであろう。

上場企業が先行きに対して厳しい見方をすれば当然株価に影響が出るのは周知の事実である。 輸出関連企業の代表格であるトヨタ自動車の2017年3月決算期の想定為替レートは1ドル=105円と設定し、大幅減益予想を出しているが、大切なことは、トヨタ自動車レベルの企業が、先行きに対する見通しを厳しくしていることである。

また、メディアでは賃金が増加傾向と盛んに報道されているが、平成26年の国民生活基礎調査の概況で掲示されている「所得金額階級別世帯数の相対度数分布」をみると、中央値(所得を低いものから高いものへと順に並べて2等分する境界値)は415万円であり、平均所得金額は528万9千円になっている。

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これを見ると、1億総中流どころか平均所得金額以下が61.2%で、生きるための消費ウエイトが必然的に高まることは簡単に予想できる。
参考までに、以下に示す平成13年の同調査結果と比較してみていただきたい。

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13年前の世帯収入と比較して、平均所得でおよそ100万円、中央値で85万円減少しているのだ。 当時より消費税、株式売却益税率、社会保証費用が上がっていることを考慮すると、多少の賃金増加程度では実質的可処分所得は下がったままである。国立社会保障・人口問題研究所によると、世帯総数は2010年の5,184万世帯から増加し、2019年の5,307万世帯でピークを迎えるとされている。

人口減少はすでに始まっているが、とうとう世帯数も減少に転じる予測が出ているのだ。また、65歳以上人口の構成比は25%を超え、現役世代に負担が大きくなっていく環境下で、世帯収入がかつての水準以下になっているのである。元々もらっていた水準から低下し続けているのだから、生活が苦しいと感じるのは当たり前のことと言えよう。

次に、最新の商業動態統計を参照しながら考えてみよう。平成28年5月30日、経済産業省大臣官房調査統計グループから4月度の商業動態統計速報が発表された。平成28年4月の商業販売額は36兆4120億円、前年同月比▲4.0%の減少となった。これを卸売業、小売業別にみると、卸売業は24兆9470億円、同▲5.4%の減少となった。小売業は11兆4660億円、同▲0.8%の減少となり、同日大臣官房調査統計Gサービス動態統計室からは「弱含み傾向にある小売業販売」という見解が示されている。

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商業動態統計速報に掲載されている前年同月比推移グラフ(上記)を見ると、消費全体の緩やかなダウントレンドが続いていることがわかる。
次に、小売の中を見てみよう。商業動態統計では、百貨店、商品スーパー、コンビニエンスストアのデータが示されている。

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それを見ると、食品の消費全体は比較的安定しているのに対し、衣料品、生活用品関連は不安定な動きをしている印象が強い。しかしながら、4月は食卓塩などの値上げの影響で一時的に上昇しただけという意見もあり、食品市場が回復しているとはいえない状況にある。実質的に、世帯としての消費余力が増えない状態が続いているため、消費全体が改善しにくい状況にあるものと考えられる。

それだけに、従来より鮮明な特性や個性等を主張できなければ能動的選択を獲得することがしにくい状況にあると考えるべきである。すでに能動的選択を獲得している強いブランドですら、安易な値上げには消費者からしっぺがえしが来るものだが、それを凌ぎ切った企業も存在する。

氷菓ガリガリ君(赤城乳業)は、25年ぶりに60円から70円に値上げとなったが、企業として真摯に実態を訴える「お詫びCM」が当たって、下がるどころか販売本数が1割増加したことは記憶に新しい。 元々低価格で強いブランドであったにもかかわらず、お詫びというスタイルで消費者に理解を求めるという真摯な企業姿勢が能動的選択を強めた好事例と言えよう。