ビジネスにおいて結果を出すことは重要だ。
このことに関して、「いやいや、そんなことはない」などと言う方は殆どいないだろう。ところが、あまりにも結果に捉われてしまうと、本来発揮できるはずのパフォーマンスを出すことができず、よって、結果を出せないということが起きてしまう。
これは、スポーツの世界を例に取るとわかりやすい。
例えば、サッカーのPK(ペナルティキック)。
練習であれば、大体80%~90%の確率で決めることができると聞くが、いざ試合になると、「絶対に決めなければならない」という結果に捉われてしまい、一流プレイヤーであっても外してしまうといったシーンを見ることがままある。
心の状態をコントロールして、普段どおり「PKを蹴る」ことが出来れば、本来のパフォーマンスを発揮できるはずなのに、「PKを決める」という結果に捉われるがあまり、そのパフォーマンスが出せない……これは非常にもったいないことだ。
この夏に開催されたロンドン五輪において、日本柔道が思うような成果を出せなかった要因のひとつに、この「結果への捉われ」があったと感じるのは、私だけではないだろう。
結果からスタートする「結果エントリー」ではなく、心からスタートする「心エントリー」を学ぶことで、実は結果を出しやすくなる。「心エントリー」によって本来のパフォーマンスを発揮しやすくなるということなのだが、この事実を多くの方がまずは認識すべきだと思う。
さて、ビジネスに携わる私たちが特に意識しなければならないのは、もはや多くの業界が「結果を出しづらい」環境下に置かれているということである。
よって多くのビジネスパーソンは、「結果を出しづらい」厳しい環境の中で「結果を出さなければならない」というストレスに常にさらされているわけだ。自ずと「結果エントリー」の悪いスパイラル(本来のパフォーマンスが発揮できず、結果が出せない)に陥ってしまっているのではないだろうか。
ここ数年、社会に出てきた若者は“ゆとり世代”と呼ばれ、ゆとり教育の弊害からくる精神面の弱さが問題に上げられているのをよく耳にする。恐らくそれも要因のひとつだとは思うが、一方で以前よりもストレスフルな経営環境という側面を考慮しなければならない。若手を採用して育成しなければならない企業サイドとしては、「自分の“心”をコントロールする術」を教えていくことが必要不可欠な時代になったと考えた方が良いだろう。
我々人間の“心”は、常に色々な外部要因に影響を受ける。それによって、良い状態にもなれば悪い状態にもなるわけだ。「心エントリー」とは、なるべく外部要因に左右されずに、まず自分の心の状態をコントロールするという考え方である。
“心”の良い状態が「フロー」、悪い状態が「ノンフロー」と定義されるが、「フロー」であれば当然持てるパフォーマンスを発揮しやすい為、当然結果も出しやすくなる。
W杯金メダル、ロンドン五輪銀メダル、と世界を相手に結果を出しているなでしこジャパンの明るさ、過去最高のメダルを獲得し、結束力を見せた日本水泳チームの明るさを思い出すと、「フロー」の大切さを理解してもらえるのではないだろうか。
「結果を出せ」と追い込むのではなく、個々人の“心”の状態を「フロー」化して最大のパフォーマンスを発揮してもらい、それが結果につながる。そんな「フロー」組織を作ることに是非チャレンジしてもらいたい。