今回は「競合企業」について考えてみたいと思います。
皆さんは競合企業についてどのように捉えているでしょうか。
皆様の会社の競合を1、2社程度頭に思い浮かべながら、読み進めて頂きたいと思います。
さて、自社の戦略を考える上で、競合を知ることがいかに重要かは容易に理解できることと思います。例えば、競合企業が新たな付加価値を提供するような独自のサービスを開発したとします。
このような状況では、当然、自社としてそれ以上の付加価値を提供するようなサービスを開発していく必要があります。
なぜならば、このままでは市場シェアを奪われてしまう可能性が高くなるためです。よって、シェアの維持・向上を目指して、自社も競合企業以上の付加価値を提供するサービスを開発していくことが必要になります。
このように、競合企業というのは、自社の戦略立案上、少なからず影響を及ぼすことは容易に理解できることと思います。
従って、戦略上、競合企業を「的確に」捉えることは大変重要な意味を持つことになるわけです。
それでは、いかにすれば「的確に」競合を捉えることができるでしょうか?
今回は、競合選定の考え方を提示したいと思います。
ここで競合について、皆様に考えて頂くために、一つ質問をします。
なるべく自分で回答を考えてから以下を読み進めて頂きたいと思います。
それでは質問です。
「ミスタードーナツの競合はどこでしょうか?」
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考える時間
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競合企業を頭に思い浮かべることはできましたでしょうか?
この質問に対して皆さんはどのように考えられたでしょうか?
恐らく、多くの方々は競合として、マクドナルド、モスバーガー、ドトールコーヒー、スターバックスコーヒーなどを挙げられたことと思います。
これらの回答は決して間違いではありませんが、一つの側面からしか競合を捉えていないといえます。
つまり、「業種や提供サービス」からしか競合を捉えていないということです。
ミスタードーナツは全国で1,300店舗を展開している、ドーナツや飲料を主力商品としたファーストフードチェーンです。
よって、ファーストフードチェーンという同業態の競合としてマクドナルドやモスバーガーを挙げられたことと思います。
もしくは、類似サービスを提供しているドトールコーヒーやスターバックスコーヒーなどを競合として挙げられたのではないかと思います。
今回お伝えしたい重要なポイントは、「競合とは、業種・業態の類似性からだけではなく様々な観点から判断する」ということです。
例えば、業態ではなく、「顧客の視点」から競合を捉えるとどうなるでしょうか?
ミスタードーナツのメイン顧客は10代から20代前半の女性です。
さらに客層を見ると、中学・高校生が最も多いそうです。
では、女子中高生の視点から見た場合、ミスタードーナツの競合はどこになるのでしょうか?
結論を言えば「携帯電話会社」です。
現在、女子中高生の6~7割が携帯電話を持っているそうです。
多くの場合、女子中高生は月の「お小遣い」の中から携帯電話代金や軽食費・娯楽費を出費します。もし、携帯電話代金が今月高くなってしまったら、ミスタードーナツに行く機会を減らす可能性は十分考えられるわけです。
このように、顧客の視点から競合を捉えれば、携帯電話会社も十分に競合として考えられるわけです。
これにより、新たな戦略立案が可能となり、市場シェアの拡大を狙うことが可能になります。
この好例が、映画産業です。
かつて、斜陽産業として市場が衰退し、多くの映画館の廃館が相次ぐ中、シネマ・コンプレックスと呼ばれる、大規模小売店と複合型映画館を共同で展開するような業態が登場し、市場の回復が図られました。
この時に、シネマ・コンプレックスの競合として捉えられたのが、カフェショップでした。業種・業態からではなく、顧客の視点から「ゆったりと時間を過ごせる空間の提供」を映画産業の付加価値として考え、様々な形で施策として実施・展開していくことで、市場の回復・発展に大きく寄与してきました。
以上のように、競合を捉えるには業種や業態、提供サービスという視点だけではなく、顧客の目線まで考え方を広げることが戦略立案の上でも非常に重要であることがお分かり頂けたと思います。
冒頭で考えて頂きました、皆様の会社の競合を今一度顧客の視点から考えてみてください。
今回のテーマをきっかけとして、様々な視点から再度自社の競合を捉え直す機会を設けてみてはいかがでしょうか?
(この記事は2008年6月5日に初掲載されたものです。)