(THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役 伊藤 達夫)
はじめから高単価、高粗利の商品をお客さんが買ってくれるか? といいますと、そんなことはありません。まあ、個人が家を買うときは例外ですけどね……。いきなり買います。でも、お試ししたい。いきなり高単価のものを買って失敗したくないのは当たり前です。
今日は、セールスプロセスの中でも、当初何を売り、その後何を売っていくのか? という提案についてお話しします。
どの会社でも、存続しているなら、定番商品があるはずです。その定番商品を売り続けることで事業のベースができる。でも、それだけ売ってても維持はできますが、拡大はなかなかできませんよね。
いや、単品で突破できるほどの強い商品はなかなかありません。吉野屋の牛丼とか、マクドナルドのハンバーガー並に強い商品を作れますでしょうか? けっこう厳しい。そうすると、既存のお客さんに提案する次の商品は何か? というのはすごく重要です。
提案営業系ですと、私は3段階ぐらいに分けることをお勧めしています。1段階目は定番のコレ、次はコレ、その次は? という設計をしっかり組みましょう、と。
これを私は「販売の階段」と呼んでいます。
この階段をしっかり組むことが事業を軌道に乗せていく際には、すごーく大事です。
ソリューション系のサービスでは、定番商品を当初ご購入頂くときに、道筋をはじめから、提示しておきます。当社のお客様は、この商品でお付き合いがはじまって、こういったお付き合いになっていくことが多いんですよ、と提示するんです。当初に提示することで、「ああ、単発で終わるお付き合いではないんだな」、というのをお客様も認識できます。
例えば、コンサルティング会社などでも、お客様を招いてセミナーをやりますよね。それが1段目の階段です。で、2段目は何? となります。2段目はコンサルティングでしょうか?
ただ、参加費が数千円のセミナーの後でいきなりコンサルティングにつながるか? というのは、疑わしいですね。それと、コンサルティング発注の決裁権を持った方がそんなに多数参加されるとも思えません……。もし、コンサルティングを最終的にやるのならば、もう一段の階段がいりますね。
2段目として適切だと思われるのは、企業への出張セミナーぐらいでしょうか? そういった出張セミナー依頼が来るようになって、そのお付き合いがあるお客さんなら、現実的にコンサルティング依頼につながるとは思います。セミナーテーマのヒアリングの段階からコンサルティングにつなげる仕組みは必要だと思いますけどね。
このセールスの階段はセールススキルが高い場合は、逆の階段も作れます。いきなり、500万円ぐらいのコンサル提案をした後に、いやそれは無理だよ、と言ってから、では、診断はいかがですか? 100万円ですよ、と提案します。それもなー、と言っているお客さんには、教育のためのセミナーはいかがですか? 数十万円ですよ、と。
階段を下りる組み方もできますが、セールススキルが高くないとできないので、あまりお勧めはしません。素直に階段を上るアプローチが安全ですね。その設計をした上で、階段の1段目のお客さん、2段目にいるお客さん、3段目にいるお客さんの数で、今後の事業計画もたてられます。
そう、顧客が資産であるという考え方に基づいて、企業価値の算出までできますね。(厳密には流出率がかっちりわかってないとできませんけど……。)
見込み客を集めてから、現金が口座に入金される。当初の入金はこれで、次の入金は、という段階を踏む。
それを私は「販売の階段」と呼んでいます。
この階段の全体リードタイムを出す。段階ごとの顧客の流出率を出して、どれぐらいの見込み客を集めれば、将来にわたってどれぐらいの価値が? というのがわかります。簡単に計算する分には割引率とかは考慮しなくても充分です。そんな計算をしている暇があったら、新しいマーケティングプランでも考えてください……。
(この記事は2008年12月19日に初掲載されたものです。)
【記事提供元】
INSIGHT NOW!(インサイトナウ)