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マーケティング的毒性を考える【3】

総務庁統計局が開示している人口推計(平成26年10月1日現在)結果の概要では以下のことが記載されている。
・年少人口(0~14歳)は1623万3千人で前年に比べ15万7千人の減少
・生産年齢人口(15~64歳)は7785万人で前年に比べ116万人の減少
・65歳以上人口は3300万人で前年に比べ110万2千人の増加
・65歳以上人口が初めて年少人口(0~14歳)の2倍を超えた

国内では入進学関連、成人式等の子供の成長に連動する消費も多くいため、年齢構成比が市場規模に与える影響は小さくない。また、大量消費を支えてきた年代が現役を退いていくと、将来不安が大きくなるため消費そのものにブレーキがかかる可能性は否めない。このことから、少子高齢化が進み、人口の構造そのものが衰退して行く国内市場では、更に能動的選択を得る工夫としての「毒」を真剣に検討していかなければならない状況にあるとお考えいただきたい。

マーケティング的に毒の効用を考える時には、スタンフォード大学のロジャース教授が提唱したイノベーター理論で整理するとわかり易い。彼の理論では新商品購入の早い順にイノベーター(Innovators)、アーリーアダプター(Early Adopters)、アーリーマジョリティ(Early Majority)、レイトマジョリティ(Late Majority)、ラガード(Laggards)の五つに分類し、最も着目すべき存在として全市場の13.5%のアーリーアダプターをあげている。

前出の相沢氏は、流行に敏感で、情報収集を自ら行い、判断するアーリーアダプターをオピニオンリーダーと呼び、彼らの本音を見極めることに注力しているが、彼が「毒」を効かせたいと考えているターゲットはこの層なのである。イノベーターは冒険心が強い開拓者、つまり、強い毒性があっても新しいモノ取り入れる強さを持っているが、オピニオンリーダーにそこまでの耐久性はない。

毒性が強すぎるとイノベーターで止まってしまい市場全体に受け入れられない、つまり市場創造ができないということになる。オピニオンリーダーはその製品を通じて得られる新たなベネフィットを見抜く目を持っていると同時に、解毒作用を持っている。この解毒作用こそがアーリーマジョリティに対する翻訳機能になっているのである。

商品が普及するためには市場全体の34%を占めるアーリーマジョリティにブリッジをかけていかなければならないが、オピニオンリーダーの翻訳機能には個体差があるため個々に委ねるだけでは難しい。かつては雑誌等のメディアがオピニオンリーダーに対する翻訳を支援する役割を担っていたが、昨今はそのスキルが低下しており、このことを前出の相沢氏が嘆いているのだ。

仕掛ける側として、イノベーターに対する毒の開発とオピニオンリーダーに対する解毒支援はセットと考えるべきであろう。社会インフラとしてのSNSが普及し、当事者より評価者がはびこっている現代では、強毒性は攻撃の対象になってしまうリスクが大きい。それだけに毒性を弱める、つまり受け入れ易く翻訳するという役割が重要なのだ。

「とんがっている個性」と「受け入れやすい翻訳」という相反するモノを融合させていくという意識がマーケティングを進化させていくトリガーになると言えよう。