週刊粧業という業界新聞に月1回掲載することになりました。本日は、11月14日号に掲載された記事をご紹介します。
スティーブ・ジョブズの悲報に世界中が落胆したのは先月の初め(10月5日)のことでした。
そして10月中旬には、iPhoneの新機種となる「iPhone 4S」が発売されて、アップルストアの前に多くの方々が行列を作りました。
さらに10月下旬には、伝記作家として有名なウォルター・アイザックソンによる著書「スティーブ・ジョブズ I」が発売され、
今も主要な大型書店で大量に平積みされているのを見かけます。
亡くなられた後もなお、世界に話題を提供し続けるスティーブ・ジョブズとはどんな人間だったのだろうと大いに興味を抱き、早速本書を購入しました。
そのなかで、彼はこんな発言をしていました。
「アップルに復帰してからの12年間は人生においてもっとも生産的な時間だった。しかし、もっと大事なゴールがある。革新的な創造性がたっぷりと吹き込まれ、創業者よりも長生きする会社を作ることだ。」
恐らく、会社を興したすべての創業者は、皆さん同じ気持ちなのではないでしょうか。
以前、中堅の化粧品メーカーとお付き合いさせていただいたときのことです。すでに創業者は亡くなっていましたが、その創業者が開発した石鹸を主力商品にして成長してきた会社です。
あるとき、後を継いだ社長の奥様がしみじみと語ってくれました。
「会社を立ち上げた頃は、先代と一緒にこの石鹸を足が棒になるまで売り歩いたものです。まだ、試供品なんてなかったから、じゃあ試しにこれだけ使ってみてよ、ってナイフで切り落とした石鹸を渡したりしてね。」
そのときは、「やはり創業時の苦労って生半可なものじゃないですね。」などと答えた記憶があるのですが、
今ならば間違いなく「創業者の“創業原点”を共有しましょう。」と言うでしょう。
なぜ事業を興そうと考えたのか、開発した商品にかけた情熱、事業が軌道に乗るまでにかかった時間、
その間にどんな苦境を乗り越えてきたのか、なぜ乗り越えられたのか、
そういった会社の原点を今いる社員に伝えること、そして共感を得ること、はとても大切なことです。
多くの創業者、創業原点を受け継いだ社長には、「自分が直接営業に行けば、もっと売れる」と思いながらも、
会社の成長のためには社員に任せなければならない、というジレンマがあると思います。
しかし、もしも社員の皆さんが創業者、あるいは社長と同じ気持ちで仕事に向かってくれるとしたらいかがでしょうか。
そのためには“創業原点”の共有が必要不可欠だと思うのです。
先日、NHKで放送されていた「神様の女房」をご覧になった方もいると思います。
やはりあの松下幸之助でさえ、創業時はどれだけ歩いても全く売れない状況でした。
「もう倒産しかない」ところまで追い詰められながらも営業を続けるなかでようやく売り先が見つかり、苦境を脱した経験を経て、
あの名言「成功の秘訣は、成功するまで決して諦めないことだ。」が生まれました。
創業しても大多数が倒産するなかで、残っている会社には必ず理由があります。
例えドラマにはならなくても、その理由のひとつである“創業原点”の共有に挑戦してみませんか。