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日暮里が「コス」の聖地に

東京の日暮里駅。
東京・山手線の北のほうにある駅。
アパレル業界に携わっていれば知っている街ですが、そうでなければほとんど知られていないのではないかという駅(住んでいる方がいたらすみません)。
それが日暮里です。

日暮里は繊維問屋街として知られていて、東口に100軒くらいの繊維問屋が連なっています。
もともとはアパレルメーカー向けに生地やボタンなどの副資材を販売する街として知られていましたが、国内でこれらを調達するメーカーが激減。メーカー相手の法人商売でいったのでは商売にならないと判断し、街をあげて小売へと転換していったのです。

2000年を超えたあたりから一般消費者が増え始めました。
特に服飾関係の専門学校生などが日暮里で生地を買い、自分のオリジナルを作り、コレクションなどで発表するといった流れができて、日暮里にはたくさんの人が集まるようになりました。

その後、ママ達の間で「手作りブーム」が起こり、日暮里におしゃれなママが集まるようになり、若い学生だけでなく主婦層も集まる街へと変貌していきました。

そして、2010年を越えたあたりから、今度は新しい客層が日暮里に集まるようになったのです。
それが
「コスプレイヤー」
の人達。

アニメなどのコスプレ市場が広がるにつれ、コスプレの洋服を自前で作る人達が増えてきました。いわゆるコスプレ族、広い意味での「OTAKUカルチャー」を形成している人々です。
コスプレは人気アニメのキャラクターの衣装が必須アイテムです。
コスプレ好きな人はその写真も趣味のひとつですが、自分自身がコスプレを着てキャラクターになりきるという、いわゆる「なりきり」がポイントです。
すると洋服を作る必要があります。
でも洋服を作るにもお金がかかります。
コスプレイヤーは学生なども多く、そんなにお金に余裕がある人ばかりではありません。

そのようなコス好き(※コスプレをコスと略すのが彼らの言葉のようです)の人にとって、日暮里は最高の買い物場所なのです。

日暮里にはありあまるほどのたくさんの生地を販売する店やボタン、芯地などなんでも売っています。ここにくればひととおりの洋服は作れるくらい商品が揃っています。
最近では日暮里のほとんどの店でコス用アイテムを揃えています。

その中で、おもしろい話を聞きました。
ある老舗の生地問屋兼小売店では、これまで在庫をしていてまったく売れなかった紫色のエナメル生地があったそうです。
まさに死に筋商品。
紫色のエナメル生地なんて、ヤンキーの学生服の裏生地くらい(?)しか使えるところはありません。
しかし、この日暮里では最近、飛ぶように売れてしまい、今では同店の全アイテムの占める売上ベスト3に入る商品になったほどだと言っていました。

普通の感覚では買わない生地も、コス好きの客層にとってはもっとも買いたい生地なのです。

ある人達にとってはいらないものも、また別の人にとってはものすごくほしいものに変わる。
私は以前、サッカーの中田ヒデさんが言っていた言葉を思い出しました。

「僕は世の中のバランスの悪さをなくしたいのです。
 ある国でいらないものもまた別の国では必要というものがあります。
 日本にいるとわからないけれど、世界にでてみるとそのような状況によくでくわします。
 だから世の中のアンバランスを正すような活動をしたいと思っています」

このようなビジネスへと拡大解釈も可能なビジネスのヒントが日暮里にはあります。
それが日暮里で起きている現実に私は驚き、そして納得しました。

日暮里という街ができた当初のまま、アパレルメーカー相手に生地販売をしていたら、おそらく日暮里は今頃、商業地としての機能はなくなっているでしょう。

また、日暮里が個人相手に商売するだけで、単に生地を販売するだけでいたら、街の魅力はなくなっていたでしょう。

街をあげてコスプレの聖地にするという街づくりを進めるなど、常にお客さんの動きを見て、お客さんがほしい思うものを必死にそろえてきたからこそ、今の日暮里の賑わいがあるのです。

そして、コスプレは、日本以上に世界で注目されています。
日本のアニメが世界で人気があるわけですから、コスプレに特化して街を作れれば、世界からくる観光客にも人気の街になっていくことも可能です。
成田からも日暮里を通って東京にくる京成スカイライナーは日暮里をフックにして外国人観光客に訴えれば、かなりの集客につながるのではないか。そう思いました。日本の新しいカルチャーとして日暮里コスプレが注目されそうな気がします。

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