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取引コスト

10月7日~12日にわたって開催された船井総研の米国視察セミナーでは、前半はサンフランシスコ・シリコンバレーの企業を訪問した。グーグル、インテル、ジェネンテック、シスコシステムズ、セールスフォース・ドットコム、オートデスクなど、世界的な企業ばかりである。

多くのシリコンバレー企業は、ITを活用したソリューションを提供している。IT企業の提供するソリューションとは、すなわち、取引コストをいかに削減するか、ということである。IT企業は、企業の生産活動・販売活動・管理活動において発生するコストをITの活用により低減させる手法をそれぞれ実現している。例えば、受発注コストの削減に成功したのがSAP社のシステムであり、情報を入手するためのコストを低減することに成功したのが、グーグルを始めとする検索システムであるといえる。

今回、特に画期的であると感じたのが、セールスフォース・ドットコム社のプレゼンテーションである。セールスフォース・ドットコムは、「ビジネスプロセスの効率化と自動化」をクラウドの活用で実現することを提案しており、セールスフォースの導入により、常に自社の最高レベルのパフォーマンスを実現できるビジネスプロセスが、社内で共通化できることになる。

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このように、IT企業の収益源は、ユーザーの取引コストを低減することにあるといえるが、そのコストの殆どが、人的コストである。かつては取引台帳をつけるなどの手間が発生したものが、今では殆どの企業で台帳は手書きではなくシステム化されており、それによる取引コストの低減は測り知れない。そうやって低減された取引コストの一部がIT企業の収益に変わることで、経済が成り立っているといえる。

ITの世界は目覚しい進歩を遂げているが、それは突き詰めれば、いかに人的コストを削減していくかということの競争であるに他ならない。新しいソリューションが提案されればされるほど、人的コストは削減され、企業は本来の生産活動や販売活動に人的資源を投入できることになる。

新しいソリューションの多くが、世界中から優秀な頭脳が集まってくるシリコンバレーで誕生している。人的コストが削減されているのは、各国にある各企業である。その削減されたコストから収益を得ているのは、シリコンバレーの企業である。削減されたコストとは、すなわち人的コストであり、それにより多くの人が職を失っている。つまり、IT化により、職が減り、そしてシリコンバレーに富が移転している。
IT化は、進めば進むほど技術は集約されていく。最後に勝つのは、最も画期的なソシューションを提供した企業ではなく、最も取引コストを低減した企業である。マーケットが大きければ大きいほど、低減できる取引コストの金額も大きい。

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我が国企業は、時間とコストをかけてでもよい製品を作る点では、世界で最も秀でているが、取引コストを削減するという点では、弱い。そして、いずれの企業も取引コストの低減に課題を持っている。今回、シリコンバレーの企業はいずれも、日本を最大マーケットとして捉えていたが、その背景に、我が国企業が未だに多大な取引コストをかけており、シリコンバレーの提供するソリューションで解決できる事項が潜在的にたくさん存在していることがあると言える。

IT化により、我が国企業の本当の強みを失っていないだろうか?真剣に考えなければならないと感じた。