現在は、円安の関係で日本の輸出企業は好調だ。それにより海外への進出が、より一層、加速、船井総研への海外進出サポートもさらに増加している。そのような中、私のご支援先で世界シェアNO.1を持っており、全世界80カ国程度に輸出している企業様があり、毎月、海外営業の会議を行っている。そこでの実態も踏まえながら海外事情を簡単にまとめた。
○ユーロ地域
まず、現在の世界経済で、一番の問題はユーロ地域。ギリシャを震源とした金融不安は続いている。ギリシャは欧州中央銀行やIMF(国際通貨基金)などから多額の借入金を実施しているが、その返済を現在延期状態。欧州中央銀行は、2月の返済を6月まで猶予することを決めたものの、今度は延期に同意しない意志を固めている。これに対してギリシャは、債務不履行(デフォルト)も考えているということを発表。この5月~6月が最大の山場に。これを乗り切れば、今年は世界的にも安定しそう。
逆にギリシャがデフォルト、ユーロ脱退ということになると一時的にユーロはさらに下がる。それを先読みして欧州各国の輸入は停滞状態が続いており、銀行も先読みレートをかなり下げている。本当にユーロ脱退となれば、ユーロへの輸出比率が高いASEAN諸国の経済へも影響。そこから世界経済への波及の恐れも。それ以外では、ドイツのみが一人勝ち。イタリア、スペイン、特にスペインの経済状況は非常に悪く、ギリシャに続いて…ということになれば、本格的な世界経済悪化となる。
○ロシア関連
ウクライナの戦争により現在、孤立を深めるロシア。経済制裁により、国内経済は非常に悪い。ルーブルの下落も続いており、ロシア国内の輸入もストップ。現状、ウクライナ問題は長期化の様相を呈しており、ロシア、東欧関連において本年度、輸出企業にとっては数値目標が立てられない状況となっている。
○中東からアフリカ地域
現在、中東は二つの問題を抱えている。一つはイスラム関連の紛争。もう一つは石油価格の下落。イスラム関連の紛争はご存知の通りで、解決の見込みがたっていない。また、石油はアメリカのシェールガスとの戦いで、採掘単価が高いシェールガスをつぶすために低価格をしかけた産油各国の施策が裏目に。早期に不採算に陥ると思われていたシェールガスが、日進月歩の技術革新で、どんどん採掘コストを低減しており、逆に産油諸国が厳しい状態になりつつある。
ちなみにドバイ市場のみは好調のようで、ドバイから特にアフリカへの輸出が活性化している。世界経済から隠れて、実はアフリカ経済は、市場規模は小さいものの、除々に成長しつつある未開拓の成長エリアとなっている。それと中東不安を受けて、その周辺においては経済好調といわれたトルコも失速、エジプトは引き続き政情不安で不調のままというのが実態。
○中国、アジア地域
中国は経済成長率が7%程度と完全に通常の経済成長率国家となった。ただし、その購買量は相変わらず高い。中国に進出していた世界の製造業は、労働争議と賃金の高騰からASEAN地域へ脱出しており、世界の工場から世界の市場に完全転換したといってもよいだろう。これに対してASEANへの工場投資は引き続き好調。各国とも比較的安定した成長を続けており、今年は安定。世界的に経済が安定している一つの要因は、このエリアが安定していることに大きな影響を受けている。日本国内もこの中国・ASEANのインバウンド恩恵を大きく受け、国内消費の助けとなっている。ただし、韓国の失速が顕著になりつつあり、注意が必要となっている。
○アメリカ・中南米地域
アメリカ経済は、現在も好調。来年のアメリカ大統領選が本格化する来年春くらいまでは、この安定とドル高が維持されそう。シェールガスなどの影響で、アメリカ国内の製造業も復活しつつあり、改めてアメリカ市場強化を輸出企業は打ち出している状況。これに対して中南米地域は、実は不調。まず、中核のブラジルはワールドカップ以降、経済成長がマイナスに。
さらにインフレ率が高まっており、消費が減退。また、中米ベネズエラが実は、経済危機に瀕しており、中南米のギリシャ化する可能性が大きくなっている。中南米はメルコスール地域ということで、アメリカからの独立を強化するため輸入関税を高く設定する施策をうったことが裏目にでつつあり、輸出企業としても注意を要するエリアとなっている。