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日本メーカーが強いワケ

こんにちは。船井総研の木部です。

昨今の経済環境の変化により、日本企業の多くが業績の下方修正や赤字決算を余儀なくされています。業種や業態を問わず、製造業から小売業、サービス業にいたるまで幅広い影響を受けているといえます。

しかし日本のメーカーは、力強い底力を持っています。中長期的に見ると、必ず回復し再び成長曲線に乗るでしょう。なぜならば、「商品の高い品質とそれを維持する持続力」を有している
海外における日本商品の評価は、「品質が高い」「不良品が少ない」「壊れないから修理が必要ない」といったものが多く、「日本製品=高品質」という公式は、日本製品に触れたことのある諸外国の人々であれば認識していることです。しかし、この品質の高さはどのようにして生み出されるのか、という質問に対して明確な答えを持っている人は少ないはずです。

恐らく、「技術力が高いから」とか「手先が器用だから」とか「勤勉だから」といった答えが多いのではないでしょうか。

しかし、日本製品の品質の高さを生み出す真の源泉は、単なる技術力ではなく、現場での巧妙な仕組み作りやそこで働く人々の意識作りにあるのです。

日本製品の品質の高さを支える要素の一つ目は、絶え間ない改善活動です。

1. トヨタの原価低減額2,300億円(2004年3月期)
2. トヨタの改善提案件数61万件(うち91%が実行)
3. 花王の「アタック」の商品改良回数26回(発売から19年、9ヶ月に1回のペース)
4. 花王のTCR運動の成果150億円
5. 花王の欠品率0.04(5年前は0.12)

トヨタ自動車の純利益は2007年度には約1兆2000億円あり、そのうちの2割が原価低減活動により生み出されているという事実は驚くべきものであり、それは50万件を超える改善活動の積み重ねによるものです。また花王においても、家庭用洗剤で圧倒的なシェアを誇る「アタック」の商品改良活動を、絶え間なく実行しています。

ここで重要なのは、こういった改善活動が、トップダウンではなく現場から次々に上がってくるという点です。現場で働く人々が常に問題意識を持ち、能動的に問題を発見し解決しようとしている結果なのです。

改善活動においてもう一つ特筆すべき点は、前述した改善活動が、部署を超えた最適化がなされるようなものであるため、縦割り組織が強く部分最適発想しかできない企業に散見されるような業務連鎖を無視した品質悪化は見られないことです。

トヨタや花王には、「前工程は神様、後工程はお客様」という認識があり、部品の仕入先を含めたサプライチェーン全体を良くしようという発想、業務連鎖の品質に対する強い責任感を現場のメンバー個々が有しています。
日本製品の品質の高さを支える要素の二つ目は、QCサークルや小集団活動に見られるような改善活動を生み出す仕組みです。

これらは、不良品ゼロを目指すための品質管理活動として、1960年代頃から日本の製造業の現場に広く普及しており、日本製品の品質が大きく向上したことに貢献したとされています。これらの仕組みにより、前述したような改善活動が有機的に生み出されることはもちろんのこと、副産物として、人材育成というメリットもあります。

4~5人程度の小グループで職場における課題を自主的に解決するために、全員のチームワークで目標に挑戦し、チームワークだけでなく個々の能力向上に大きく寄与します。4~5人という人数は、誰か一人でも手を抜くとすぐ分かるため、一人一人が責任を持ち、なおかつチームとしての団結を保ちながら知恵を出す努力をするうえでは効果的な人数です。

そうすることで、現場で働く末端の社員までが経営者の視点を持つことに繋がり、そうして成長した人材が他の人材を育て、新たな知恵を絞ることで、新たな改善が生み出されるという好循環を発生させることができるのです。
日本製品の品質の高さを支える要素の三つ目は、技術畑出身で、前述したような改善活動を実体験として経験してきたメンバーの多くが、経営ボードに名を連ねていることです。

トヨタにおいては、豊田英二、豊田章一郎と技術畑出身の社長が二人続いた後、奥田碩、張富士夫、渡辺捷昭と三人事務畑出身の社長が続いたが、役員の中には技術畑出身者が必ず入っています。また、ホンダは現社長の伊東孝紳をはじめ代々技術畑出身者が社長を歴任しているし、日立においても4代続いて技術畑出身者が社長となっています。

技術畑出身者の経営参画がもたらすメリットは、モノづくりの本質を理解しているが故に、売上や利益といった数字を追い求めるだけでなく、メーカーとしての本文とも言える品質向上に対して、強いコミットメントを発揮することができることです。

技術や製造現場のことを全く知らない事務畑出身者のみで経営ボードが占められてしまうと、現場における実行可能性や品質向上に対する取組みが無視された戦略が立てられてしまい、製造現場は単なるモノを生み出すファクトリーとして軽視されてしまうこととなりがちです。経営ボードと製造現場が同じゴールを目指し同じベクトルを向いていない限り、高い品質の製品は生まれえないのです。

製造業の原点は現場にある、という言葉はもはや使い古された感が有りますが、現在の苦しい状況を打破するためには、原点に戻ること、当たり前のことをきちんとすることが大事ではないでしょうか。日本のメーカーが強いワケ。皆さんの会社でも、是非振り返ってみてください。
(この記事は2008年11月2日に初掲載されたものです。)