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日本も世界基準のブランディングを始める時間だ

ニューヨークにあるナショナルテニスセンターのセンターコート。USオープン男子シングルスファイナルに錦織圭選手が立っていた。日本中がこの快挙を褒め称え、一時のテニスフィーバーの凄かったこと……筆者は20年来のテニスファンで、グランドスラムと呼ばれるツアー最高峰のトーナメントを見続けてきた。だからこそ、感慨深いものがあった。ほんの10年前まで、グランドスラムファイナルに日本人、いやアジア人が立っているなんて夢にも思っていなかった。その偉業を錦織選手は成し遂げたのだ。全米オープン後も、マレーシアで行われた250シリーズ、東京で行われた500シリーズを2週連続優勝し、世界ランキングTOP5入りも待ったなしの状態である。もうワクワクが止まらない。今年の5月、マドリードで行われたマスターズファイナルにも……興奮しすぎて、テニスの話だけでコラムが終えそうだから控えておこう(笑)

今、錦織選手のウエアがバカ売れらしい。ご周知のとおり、錦織選手はファーストリテイリング社のユニクロブランドを身にまとっている。同ブランドは現世界ランキングNO.1(2014年10月9日時点)であるノヴァク・ジョコビッチ選手も着用している。彼らはユニクロのグローバルアンバサダーなのだ。「グローバルアンバサダー」という言葉。ちょっと聞きなれない言葉かもしれない。簡単に言うと、全世界発信における広告塔、いわゆるイメージキャラクターである。テニスという競技は、男子ならばATPツアー、女子ならばWTAツアーと双方ともツアーという文言が含まれている。その文言どおり世界を転々とし、トーナメントをこなしていくのだ。テニスは世界レベルではメジャースポーツの一角である。故に、トップになればなるほど、選手個人に対して様々な企業がスポンサーに名乗りをあげる。自社商品をグローバルに露出させることが可能だからである。錦織選手も様々なスポンサーが付いている。所属している日清食品は勿論のこと、ウエアはユニクロ、ラケットはウイルソン、シューズはアディダス、時計はタグホイヤー・・・その他諸々。錦織選手は日本国内だけでなく、アジア全域における広告塔になることで、全世界から注目を浴びている。

少し視点を変えてみよう。錦織選手のウエアにはバッジが付けられている。バッジは「カップヌードル」と「ウイダー」である。カップヌードルは日清食品社が有するブランドであり、ウイダーは森永製菓が有しているブランドである。今までの日本企業がスポンサーに付く場合、社名を露出する場合が殆どであった。しかしグローバルレベル(特に欧米)では社名を露出およびPRすることはめったに無い。化粧品などは特に顕著である。大手百貨店に必ずテナントを構えている「ランコム」や「シュウウエムラ」はフランスに本社をおくロレアル社が保有しているブランドである。生活者にとって、ランコムの化粧品が目的で、ロレアル社は関係が無いのだ。しかし多くの日本企業は、ブランドではなく、それらを保有する企業の露出とPRに力を入れる傾向にある。「ブランディング」という言葉も、日本では企業ブランド力の向上、CI(厳密にはVI)の導入のように用いられてきた。日本においてのブランディングは、信用や信頼を与える手段として用いられてきたのだ。一方、欧米では企業ではなく商品ブランドにブランディングを用いてきた。商品ブランドの認知を主目的とし、営利に結びつくことを前提に手段として活用している。

テニスのトッププレイヤーはグローバルアンバサダーとしての一面がある。錦織選手のバッチもその所以であろう。世界の人々にとって、「日清食品」ではなく「カップヌードル」という名前を選ぶのである。世界的に見ると、商品ブランドこそが購買動機になりえるのだ。これは日本であっても同じことが言える。よっぽどの新商品・新ブランドで無い限り企業名は見ない。しかし日本企業の多くは新ブランドを出したがる傾向にある。それはブランドを保有している企業の認知および信頼を得ている側面もある。ただし、それは日本国内においての話である。今年の初め、亀田製菓が「柿の種」のアメリカ展開を発表した。この際にも、「KAKINOTANE」の響きを重視し、商品ブランドの認知および露出に注力したと言われる。各企業ともグローバル展開を模索する中、商品ブランドを大事にし、どう育成するかが近道なのだ。つまり、日本のブランディングも、欧米のやり方、世界基準を意識する段階に入ったのだ。