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阪神・淡路大震災後のように需要に応えられるか。被災エリア復興で問われるハウスメーカーの力

東日本大震災によって被る打撃は、被災地だけでなく日本経済全体に及ぶことが確実だ。地震や津波による直接的な被害、原発事故による放射能被害、計画停電がもたらす影響など、(先の戦争を除けば)これまで日本が経験したことのない事態となっている。

しかし、ほんの少しずつではあるが、復旧が進んでいる状況が報道されると、うれしい気持ちが心にじわっと広がってくる。被災された方々・地域の復旧・復興を心から祈っている。

テレビを見ているだけでは、被災地の建物の被害状況はよくわからない。津波に飲み込まれてしまった地域の映像は何度も放映されてはいるが、仙台市街地のような都市部の様子はあまり映し出されていないからだ。

私が聞くところでは、津波が押し寄せた地域を除けば、倒壊した家や建物はそれほど多くなく、直下型地震だった阪神・淡路大震災のように倒壊家屋の多さが目立つ状況ではないという。しかし、被害の範囲が比較にならないほど広範囲であるから、今回の地震による倒壊家屋は阪神・淡路大震災以上になるだろう。

J-REIT法人各社は、震災発生の翌日あるいは(土日をはさんで)翌月曜日には、被災地域にあるポートフォリオに組み込まれている物件の状況報告をリリースした。そのなかでは、該当物件は概ね問題はなく、損壊があったとしても軽微なものだ、と報告されている。

では実際、地震の発生はハウスメーカーやビルダー、工務店へどのような影響を及ぼすのだろうか。

■ 阪神・淡路大震災後、急増した建替需要。業績を伸ばしたハウスメーカーやディベロッパーも

株価の推移をみてみると、東証業種別株価指数における建設・資材系は大震災以降、大きく値を下げたものの、その後回復している。これは株式相場全体よりもかなりよい状況といえる。市場は他の業種に比べて、こうした産業は復旧・復興需要を見込んでこれから期待できる、と見ているようだ。

阪神・淡路大震災が発生した時、私はちょうど社会人になる直前で、実家のある伊丹市におり、激しい被害にあったエリアからそう遠く離れていなかった。私自身も1週間程度は避難所で過ごしたが、比較的自宅の損壊が軽微だったため、早く戻ることができた。そしてその後、知人などに物資を届けるために何度か激しく被災したエリアに入った。

そこで、スーツの上にジャンバーを着てチラシをポスティングしている集団に遭遇した。倒壊した家にはさすがにチラシを投函していなかったようだが、半壊レベルの住宅やかなり傷んでいる住宅にチラシを投函していた。ジャンパーには某ハウスメーカーのロゴと社名が入っていたことを記憶している。

確かに、この年のハウスメーカーやディベロッパー、ビルダーはかなり業績を伸ばした。それはもちろん阪神・淡路大震災により、被災した住宅の建替需要が一気に集中したからだ。

倒壊した住宅のローンの返済がほとんど終わらない状態で新しい住宅を購入した例も多く見られた。ローンの金利優遇など負担軽減のため、国・県・金融機関も被災者に手を差し伸べた。需要が集中した1年間くらいは、職人や資材の手当てが出来ず、着工までかなり待たされることもあった。

当時はバブル景気が終了し、着工数が伸びず苦しい時期が数ヵ年続いていた頃だった1995年。ハウスメーカーは震災後、業績を伸ばす状態が数年続いたが、このことは別の角度から見るとハウスメーカーの改革を遅らせたとも言える。

1995年以降、生産者人口(15~64歳)が減少し、10年以内には人口減少社会が到来することは明らかだった。新築着工数もそれにつれて減少することも当然のこととされていた。そのため、ハウスメーカーやビルダーは新築偏重主義を止めて、ストックビジネス(リフォームなど)も力を入れる必要があると言われていた。そんな矢先に阪神・淡路大震災があり、需要に応えるために(1日も早く被災者に快適な住環境を提供するのは当然のことである)、精一杯の努力をしたのだ。

■ 町自体を復旧・復興させるため、早急に被災地域に希望を与える再生プランを

あれから16年。今回は当時とはやや様子が異なる。なんと言っても被害が広範囲に及んでいる。そして、津波で被害を受けた地域のなかには、その町に住宅がほとんどなくなっている状態のところもあるというから、建替需要というレベルではなく、町自体をどう復興させるかというレベルの議論になるだろう。まさに、大正時代に起きた関東大震災後に後藤新平が東京の街を再生させたような復旧・復興が求められている。

現在、幾人かの都市計画の専門化が手を上げているようだが、現在も混沌としたなかで未だ動き始めたという状況にはない。少しでも早くこうしたプラン作成が動き出すことを願っている。再生の具体策が見える形で示されれば、被災地域の人々も希望が湧いてくるだろう。そう考えると、甚大な被害を受けた地域では住宅メーカーの出番はだいぶん後のことになりそうだ。

ただ、すでに仮設住宅を建てる業務を各ハウスメーカーは受けているようだ。(これは阪神大震災のときと同様)。津波の被害がなく、地震による被害だけを受けた地域は、ほどなくするとハウスメーカーやビルダーの出番がはじまるだろう。

1つ懸念すべき問題は、住宅資材製造工場が被災のため稼動できていないところも多いという点だ。ハウスメーカーの住宅は、工場であらかた作って、現場で組み立てる方式だから、すぐには対応できないという。

また、一部のハウスメーカーでは、自社工場は操業に問題がなくとも、部品を作る企業が被災し(あるいは、原発周辺避難エリア内にあったり)、そのために地震の被害がない西日本の住宅建設現場においても、工事が止まっている、あるいは着工できないということも起こっているようだ。

こうしたことを加味すると、ハウスメーカーやビルダーの需要が一気に上がることは、(阪神・淡路大震災と違い)なさそうだ。

被災エリア復興のためには、ハウスメーカー、ビルダー、工務店などの力が必ず必要になる。こうした企業には、可能な限り被災者の立場に立った対応を望む。決して便乗的に高い利益を得るようなことをしてはならない。

(この記事は2011/03/28に初掲載されたものです。)
(出典:ダイヤモンド・オンライン)