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ITの重要性と課題(1)

今回はIT投資について解説します。

皆さんはご存知でしょうか?
ある統計資料によると、オープン化・ダウンサイジングなどが囁かれ始めた1991年から、昨年2004年の間に、約300兆円ものIT投資(総額)が国内で行われています。
300兆円という金額はなかなか想像できるものではありませんが、例えば、バブル崩壊において喪失した株式総額が300兆円という説があります。
つまり、あれほど日本国内が衝撃を受けた金額に匹敵する投資がITに対して行われたということになります。
あるいは日本を代表する優良企業であるトヨタ自動車の年間利益が16年度決算で約1.6兆円ですから、トヨタ自動車の188年分の利益総額ともいえます。
何ともいえない比較論ではありますが、どれほど大きな金額かはご理解いただけると思います。
では、この莫大な投資は実際に成果を挙げているのでしょうか。
ガートナー社が2004年に発表したレポートによると、これまでのIT投資について、経営層にその成果意識を尋ねると、「期待通り」と答えた比率が6.6%、期待以上と答えた比率は僅か0.6%でした。
つまり極論すると、サンプリングの誤差があるので一概にはいえませんが、期待通りかそれ以上の成果を挙げられたIT投資は僅か7.2%となり、残りの92.8%、300兆円という投資総額を適用すればおよそ278兆円のIT投資が経営層の期待に応えられなかったということになります。

いずれにしても実際のところ、「貴社のIT投資は成果を挙げていますか?」
という問いは、多くの企業において相当答えづらい質問だと思います。
そしてこの問いは、何ら真新しいものではなく、IT投資が企業において一般化した数10年来、絶えることなく言われ続けてきたことです。

なぜ何10年という長期に渡りこの課題は修正されないのでしょうか?
よく言われる理由は、以下のようなものです。

■IT投資を適切に判断できるCIOがいない、或いはいてもスキルがない
■IT投資が適正なのかを判断する軸がそもそもない
■IT投資を主導するIT部門がビジネスを理解できない

これらは各論として正しくもありますが、そもそもの根源課題が霧散しているともいえます。
つまり、上記はいずれも、その根源課題の結果に過ぎないのです。
根源課題とはつまり、ITは戦略を実現するEnablerの一つに過ぎないのに、聖域として戦略から隔離されてしまっているということです。
10年近く前までは、ITリテラシーという言葉が騒がれ、パソコンスクールが中高年サラリーマンたちで大流行するという現象が起きました。
この頃のテクノロジーに対する苦手意識が継承されてしまったのか、ITは専門分野だから専門の技術スタッフに任せるという風潮が根強くあります。
確かにITテクノロジーの進化は早く、それをトレースするのは容易ではありません。しかし、ITの導入効果は先進性だけではありません。
新技術を取り入れることが正しいのではなく、自社の戦略実現性を向上させる能力をITという手段で獲得することが重要なのです。
この重要かつ基本的な思考を追いやり、技術スタッフにIT投資の判断を全面委任してしまった結果、先進性とテクノロジーそのものを好む技術スタッフの性向と、Enablerの一つに過ぎないはずのITの本来的ポジションに齟齬が発生し、結果、経営層としてとても成果を実感できないIT投資が出来上がるという構図が長らく続いていると考えられます。

今回はまず、IT投資の現状についての見解について述べました。
次回はどのようにIT投資を最適化するのかについて解説します。
(この記事は2008年7月26日に初掲載されたものです。)