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「団塊の世代」中小企業経営者が“引退間近”に。後継者問題をどう解決すべきか

■ 後継者がいない企業が増える? “引退間近”の中小企業経営者が抱える悩み

現在、日本の人口構成比の中で最も高い比率を占める「団塊の世代」。

「団塊の世代」は、一般的に第二次世界大戦後のベビーブームに生まれた世代と定義され、現在60歳~65歳くらいの方々を指す。戦後日本の成長を支えてきた世代であり、その人口の多さから、様々な形で日本社会に大きな影響を及ぼしてきた。

団塊世代が一斉に定年を迎えた数年前、「定年にともなう、退職金の増加が企業経営に影響を与える」、あるいは、「技術の継承がうまくいくのか」などといった問題を多くのマスコミも報じていた。しかし最近では、そうした報道も見られなくなった。

この世代の方々は、日本がまだ経済成長していた1980年に30代前半、バブル期に40代前半だった。そうした時期に社会人として一番油の乗った年齢だったこともあり、起業している方が多い。そして、企業規模の違いはあれど、それなりに成功を収めている。

あれから数十年。

団塊世代創業者がいま、後継者に会社経営のバトンを渡そうとしている。精力的に仕事をしてきた彼らが、一般企業に勤める人々よりも少し遅れて「自らに定年を言い渡そう」とする時期にさしかかってきた。

上場企業クラスならば、優秀でリーダーシップのある社員に後を託せばいいのだが、中小企業の場合(創業者は銀行からの融資に個人保証をつけていることも関係するのだろうが)、自分の息子を後継者にすることがほとんどだ。

しかし、このバトンタッチがうまくいっていないケースも実は少なくない。

都市部の一流大学に進学し、有名企業に就職している息子などからは、「おやじの会社を継ぐのはなあ…」という声が聞こえてくる。また、産業のライフサイクルを考えると、創業時は時流に乗った産業であっても、今では衰退期(あるいは横ばい期)にさしかかっている。

したがって、今後の企業成長のためには大掛かりな改革(業態の転換など)の必要があり、会社の舵取りが困難であることが予想される。ひどい場合は、大きな負債を抱え、今後の会社運営が厳しいこともある。

このような場合、創業者は「息子に継がせるのは…」と考えるうえ、息子も「オレが継いでもうまくいかないよ」という思考になっている可能性が高い。

そこで創業者たちの多くが考えるのが、次に挙げる方法だ。会社を存続させるのか、会社をたたむのか、あるいは、「従業員もいるし設備もあるわけだから、いっそのこと今のうちにどこかに会社を買ってもらおうか」などである。

創業者の引退に伴って会社を売却するといった行動は数年前から見られ、中小企業のM&Aが(年により波はあるにせよ)増えている。大きなM&A案件と比較して、地味な印象がある中小企業のM&Aや事業再生案件は、メディアにはあまり登場しないが、その数は年間かなりの数になっているようだ。

■ 中小企業の事業承継M&Aが増加。しかし、地方銀行はチャンスを活かせていない

M&Aに関する業務を中心に活動している公認会計士が私にこんな話をしてくれた。

「新たなM&A案件のことで地銀(地方銀行)や信金(信用金庫)を訪問しても、彼らはあまり情報を持っていない。税理士や会計士のほうが、よっぽど情報を持っている」

そんなものなのか、と思って聞いていた。そして彼は、さらにこう続けた。

「本来、銀行はその企業の詳しい財務状況を知っており、経営者や経理財務担当者と信頼関係を築いているはずなのに…」

地銀や信金とは対照的に、大手銀行は積極的にこのような案件に関与しているようだ。経験者を中途採用し、関係各社と提携をして、大きな事業に発展させている。

一方の地銀側は、こうした状況をどう思っているのか。先日、某地銀バンカーと会食したときに聞いてみた。

「地銀も、最近スプレッド(貸出利ざや)で稼げないから、M&A関連業務をしたいと思っており、年間に数件という低レベルですが、徐々に仕事になり始めています。しかし、融資先からは意外と情報が出てこない。こうした際に銀行が役に立つとは思っていないからでしょう。しかし、本当はそれらしき情報を担当者も持っているのです。ただ、その情報を上手く形にできていない。行員達にも経験が少なく、ノウハウといえるものが蓄積されていない。当行でもこれからは、こうした事業に積極的になると思います」

多くの中小企業の取引先を抱える地銀や信金・信組(信用組合)。彼らは単なる融資を受ける側とする側という以上の関係を融資先と築けていないのだろう。本来、有益な多くの情報を持っているはずなのに、それを活かしきれていないのだ。中小企業のM&A案件が増えているにもかかわらず、いまだそれが事業化されている地銀は少ない。

■ 地銀だけではない! M&A関連で得られる新たなビジネスチャンス

中小企業のM&A案件へのアドバイザリー業務は、売る企業と買う企業を結びつける“お見合い”的な業務が主流のようだ。一般的なM&A業務では、財務(会計的)デューデリジェンス(会計士などが行う)とビジネスデューデリジェンス(コンサルティング会社などが行う)をし、さらに企業のバリエーション(価値評価)を行って売買金額を算定する。しかし、中小零細企業案件においては、それほどきっちりとした算定は行っていないこともあるようだ。この手法には賛否両論ある。

また、中小企業の中には、小さなビルや工場用地、倉庫用地などバランスシート(BS)のアセットの項目がやたらと大きい(重たい)という事例もあり、その土地を活かすことが難しいにもかかわらず、価値算定するとかなりの高額になってしまう。こうなると、買い手がつかない可能性は高くなる。つまり、「これくらいなら、売却してもいい」と「これくらいなら買ってもいい」の折り合いがつかないのだ。このような場合には、不動産の売却と企業のM&Aを分けて考えなければならず、B to Bを専門とする不動産流通業者との連携が必要になる。

こうした企業がよく、私の元を訪ねてくる。「M&A案件などで、まだ情報が市場にでていないものはありませんか」と(もちろん、守秘義務などの契約があり、軽はずみな発言はできない)。

ある業界大手企業の担当者は、「仲介業として、買い手を捜すと時間がかかるのが問題となる案件でしたら、弊社が購入します」と話す。今、彼らは、不動産仲介だけでなく、自らも積極的に不動産を購入しているのだ。

このように、M&Aのアドバイザリー業務は、多くの専門家との連携が重要だ。そして、多くの関係者にとって、ビジネスチャンスが広がっている。

冒頭に述べたような理由から、これからさらに中小企業のM&Aは増えるであろう。いまは、M&Aアドバイザリー会社が専門的に行っているが、これからは地銀をはじめ、他のプレイヤーも参入してくると思われる。そして、その周辺業務を行う企業が提供するサービスのレベルも向上するはずだ。「成長産業」から「成熟産業」への移行の“きざし”がはっきりと見えてきたと言ってよいだろう。

(この記事は2010/12/03に初掲載されたものです。)