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間違った売り込みが一番危険! 富裕層への上手なアプローチ法

■ 各社が抱える富裕層ビジネスの課題

「富裕層とは一体何処で巡り会えるのか?」
「富裕層への確実なアプローチ方法とは?」

最近、このような質問・相談を受けることが多くなっている。百貨店の外商、ハイジュエリーや高級車、プライベートジェットの販売会社、プライベートバンクなど、これまでも長く富裕層ビジネスに携わってきた企業でさえも常にこういった問題に頭を悩まされている。先日も富裕層ビジネスの成功に向けたテーマで講演を行ったが、そこに参加頂いた企業の関心事の6割以上は「富裕層へのアプローチ」をどうすべきかであった。

こういった課題を抱える多くの企業には、例えばこれまでも決して安くはない広告宣伝費を払いながら、しかしその費用対効果の低さに頭を悩ませているという現実がある。富裕層向け雑誌1つとってみても、その中には多くの富裕層を対象とした商材、サービスの広告が溢れており、どこまでそれが各社の戦略的な裏づけの中で掲載されているのかは疑問だ。

企業の多くは、ただ闇雲に高い広告費を払い続けているだけで、そこから目に見える成果を生み出すことができてはいないようである。一言断っておきたいが、ここでは富裕層向け雑誌そのものを否定しているわけではない。それを活用する側にも考え、解決していくべき課題があるという意味で述べていることをご理解いただきたい。

富裕層の人たちは、これまでにも様々な場面で多くの商材、サービスの売り込みを受けている。そして、彼らは一方的でしつこい売り込みに対して嫌気がさしている。そのような状況下、たとえ売る側にとっては初めてのアプローチであっても容易には聞く耳を持ってもらえないことの方が多く、富裕層の側からすると「またか…」というのが偽らざる心の声となっている。そして多くの場合、富裕層へ間違ったアプローチをしてしまった企業は、その提案に全く興味、関心を示してもらえないのである。

■ 「たった1人の見込み客のための広告」を! 鍵は徹底的なコミュニケーション

では、富裕層への効果的なアプローチとして一体何が有効な手段となり得るのか。

これを考えていく上で非常に参考になる、ある富裕層ビジネスをされている経営者の方の印象深い一言をご紹介しよう。先ほどアプローチの1つの切り口として富裕層向けの雑誌広告に触れたが、それに関するものだ。

「私がこの富裕層向けの雑誌に広告を出しているのは、多くの富裕層の認知度を上げることで成果を出すことを狙っているのではありません。今まさに関係を築きつつある〇〇さんに、この商品を購入して頂きたいからです」

つまりこの経営者は、ある1人の富裕層の見込み客に商品を販売するためだけに数百万円の広告料を支払っていた、というのである。しかも、ただ広告を掲載するということではなく徹底的にその見込み客との関係を深める中で、その履歴、趣味嗜好といったプロファイルを調べあげ、それに基づき、編集、デザインまでこだわった広告を掲載したという。まさに「たった1人のお客様のための広告」、この経営者のお話を伺いながら、富裕層ビジネス成功のヒントは、そこにあるように感じた。

富裕層ビジネスというのは一般消費財のように安く、大量に販売していくことではない。一般的に高額と言われる商材、サービスをどれだけコアな富裕層の顧客に信頼を勝ち得ながら販売していくのかが鍵であり、ビジネスモデルは一般消費財とは大きく異なる。富裕層への販売を実現していくためには、先の経営者の話にも関連するように企業自らが富裕層である見込み客を知り、徹底的に深くコミュニケーションを図っていくなかで彼らの共感と信頼を勝ち得ていくことが必須条件となる。

■ 富裕層にとって大切なコミュニティの存在

この課題を考えていくためには富裕層の特性を考え、それを踏まえた上での施策を打っていくことが必要だ。

その代表的な特性の1つとして挙げられるのは、富裕層は誰しも「自分達のコミュニティを大事にする」ということである。富裕層ビジネスを成功に導くためには、この「コミュニティの中に日頃からどれだけ深く関わっていくことができるか」、「そのための仕組みを自らの組織の中にどう作り上げることができるか」が重要なポイントとなる。

富裕層の特性については以前の私のコラム「富裕層と超富裕層はこれだけ違う」の中で、富裕層を金融資産とその他いくつかの属性により「ミリオネア(富裕層)」と「ビリオネア(超富裕層)」に区分してその違いを述べた。富裕層それぞれの特性を踏まえると、富裕層のコミュニティを考えていく上では、ビリオネアとミリオネアそれぞれが好むコミュニティの特性が大きく異なることも理解しておかなければならない。

■ ミリオネアとビリオネアのコミュニティの違い

では、ミリオネアとビリオネアではどのようにコミュニティの好みが違うのだろうか。

ミリオネアは「教祖(カリスマ)型」アプローチを好み、どれだけ自分を露出させ目立たせるかにこだわるため、多くの人が集まる異業種パーティーや会合に積極的に参加して自分を目立たせながらネットワークを拡大していくことを好む傾向がある。一方、ビリオネアと呼ばれる人たちは「黒幕(フィクサー)型」のアプローチを取り、ミリオネアと比較すると「目立たない」、「少人数」、「より信頼度の高いメンバー」を好む傾向がある。

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例えば、ミリオネアに当てはまる人たちは富裕層の集まる異業種交流会や富裕層会員制クラブなど積極的に複数を掛け持ちしている人も多い。実際に私の主宰する富裕層ビジネス研究会の会員の方の中にも6~7つのコミュニティの場を掛け持ちしている方が複数おられ、大人数が集まる派手な場所を好む傾向が見られる。

一方のビリオネアな人たちはこれとは対照的であり、実際に私が知るそれに当てはまる人たちは表に出てくることを好まない。私がビリオネアの方々とどれだけ良好な関係を持ち、個人的にはよくお会いできていても、私が主宰し多くの方が参加する研究会や異業種交流会などに出席することを彼らはあまり好まない。

では、ビリオネアな人たちの好むコミュニティとはどういったものなのか、先ほども述べたようにビリオネアが好むコミュニティはミリオネアのそれとはいくつかの点で対照的もしくは異なることが多い。すなわち少人数で、メンバーも信頼のおける人で固定化されるか、その固定されたメンバーの紹介に限られるといったケースが目立つ。

あるビリオネアの方は都内に300坪の自宅を持つが、講演やそれに関連する集まり以外には滅多に大勢の人前に姿を見せることはない。しかし一方で定期的に自宅に友人や信頼のおける知人を招いての食事会や懇親会を行っており、その参加者はいつも決まったメンバーやそのメンバーの紹介者に限定されている。

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■ 企業自らが「富裕層コミュニティ」を創造することも有効な手段

このようにミリオネア、ビリオネアの特性は大きく異なるが、何れにしても彼らはそれぞれの生活の中で彼らのコミュニティを大事にしている。故に富裕層ビジネスを行う側としては、それぞれの富裕層の特性とそのコミュニティを理解したうえで、どう彼らと関わり、共感と信頼を得ながらその中に入り込むのかを徹底的に深く考えていくことが必要となる。

具体的な進め方として、1つは既にあるミリオネア、ビリオネアのコミュニティに会費を払い、紹介を受けながら入っていくことが挙げられる。但し、これは参加する側が多くのコミュニティに関われば関わるほど、信頼のおける紹介者を得られるまでには多くの時間とコストを要する。また、ミリオネアの集まるコミュニティでは、コミュニティ側にもしっかりとしたビジネスを促進する仕組みがないと富裕層ビジネスへの有効な手段にはなりづらいことも多いと考えられる。

もう1つの進め方としては、富裕層が好むコミュニティの場を企業自らが創り上げ、その中で自らのビジネスを拡大させていくというやり方である。ここ最近、多くの富裕層、富裕層ビジネスの関係者とお話する中で感じることは、売る側は自らの商材を販売することには必死だが、それを購入する富裕層が、その商材やサービスを日常の生活の中で利用し、その良さを実感し、それを所有すること、利用することの喜びや満足を再認識し続ける場が特に少ないように感じる。

それを実現する手段として企業が自らの顧客や見込み客となり得る富裕層な人たちとの接点を増やすことを目的として、購入前だけでなく彼ら富裕層がその商材、サービスを利用し、それを誇れる場を購入後も永く継続的に提供できたとするならば、それもある意味、富裕層が大事にしているコミュニティを創り上げることにつながる。このコミュニティの創造と提供が、富裕層の「共感」と、もう1つ富裕層ビジネスにおいて重要な要素である、富裕層からの「応援」を獲得することにつながるのである。

加えて、そういった場を同じレベルの富裕層を顧客とし、それなりの実績を出している異業種を含む他社とのコラボレーションを図っていくことも富裕層ビジネスにおいて有効な手段となり得ると考えている。これまでとは異なる新たに提供できる価値を創造し、また、そのことがそれぞれの各社が持つロイヤリティの高い顧客をシンクロナイズさせ、新規の顧客獲得、既存顧客の維持にもつなげていくことに有効ではないか。こういった取組みは富裕層ビジネスを行っている各社が成果に向けての多くを暗中模索している今だからこそ、各社にとってこれまで考えられなかったやり方、企業同士の新たな組み方を可能にすると考える。

企業自らが富裕層のコミュニティを創り、新たな価値を提供し続けるという視点、一度真剣に考えてみてはいかがだろうか。