MENU
×

MENU

コンプライアンス体制構築

今回は、コンプライアンス体制の構築について解説します。

コンプライアンスとは、単語的には「従うこと」を意味し、日本での一般的な使い方は、「Compliance with the law=法令遵守」となります。読者の皆さんも、コンプライアンスという言葉には触れる機会が多いと思います。しかし、このコンプライアンスという言葉は、冒頭で「日本での一般的な使い方は」という表現をしたように、実はスコープが書籍や企業によってまちまちで、解釈の境界がグレーな状況にあります。

挙句は「狭義のコンプライアンス」と「広義のコンプライアンス」という微妙な判定を一冊の中で両立してしまう書籍もあります。企業の戦略・戦術は、対象スコープの捉え方によって目的論や優先度が変わります。逆に、企業活動における曖昧なスコープ定義は、リソースの拡散や過不足を招き、効率的な投資による適切な効果の達成を阻害します。

よって今回は、コンプライアンスのスコープをここで明確化したいと思います。
そもそもコンプライアンスとは、脈々と企業においてアンダーグラウンドで行われてきた法解釈を巡る微妙な行為や、好業績から見過ごされてきた法令違反の隠匿行為が、バブル後の市場低迷期に顕在化して耳目を集めるようになったといえます。

つまり、企業にとって従来は法務部などの専門部署単独である程度いなすことも可能であったリーガルリスクが、それでは収まらず全社的なリスクとして捉えなければならない重要懸案事項となったということです。

この観点からは、コンプライアンスはリスクマネジメントに含まれる一カテゴリとなります。
さらに、コンプライアンスが全社懸案事項として昇華することで、組織横断的なガバナンス(=内部統制)強化のインセンティブの一種ともなるに至っています。ガバナンス強化のインセンティブという観点では、コンプライアンスと同じようにBCPやCSR、ERMなどが遡上に上ります。

■BCP:Business Continuity Plan
■ERM:Enterprise Risk Management
■CSR:Corporate Social Responcibility

今回の論点であるコンプライアンスに関するスコープの迷走は、これらの概念が理想論とともに輻輳することから発生しています。

特に現状では、ガバナンスというインセンティブによって売上を得たい業者や書籍著者などにおいて、アプローチの広範性を担保するため、コンプライアンスという概念に関するスコープの拡大傾向が見受けられます。

例えば昨今の市場認知度が高いキーワードは恐らくCSRとコンプライアンスであり、これらを近似化することで両者に興味のあるユーザー層に広くアプローチする機会ができます。「社会的責任(CSR)を全うするためのコンプライアンス」とするような考え方です。

このような考え方をしているうちに、法令遵守だけでは社会的責任は全うできない、法令だけでなく自社のインテグリティ全体を高めなければならない、と理想像が膨張し、その結果コンプライアンス体制構築の境界線がグレーになってしまうのです。

こうなると、コンプライアンスとして始めたはずのプロジェクトが、膨張した理想像を求めて拡大の一途、つまり、コストと組織負荷の増大を招く結果となります。
では、どうすればいいのか。

結論は、コンプライアンスのスコープを具体的な法令遵守に明示的に限定するということです。回帰的に考えればよいのです。

法令とはそもそも、日本法曹界の構造問題によって環境変化への追随性に欠けることは否めないまでも、先述のように社会・経済の要請によって、「最低限守るべき事項」が定義されたミニマムスタンダードです。

このミニマムスタンダードも守れずして、高尚な理想像などあり得ないのです。CSRだ何だと対外コミュニケーション的先行投資に走る前に、まずは自社に影響を与える具体的な関連法令遵守のためのガバナンス構築という意味のコンプライアンスの範囲にフォーカスするのが、ステップとして正しい選択と言えるでしょう。

明示的なスコープでのコンプライアンス体制構築の経験は、その先の広範なリスクマネジメントやCSRなどのプロジェクトを円滑に進めるノウハウとして蓄積されることも期待できます。

コンプライアンス体制構築をご検討中の方は、是非ご検討いただければ幸いです。
(この記事は2008年3月22日に初掲載されたものです。)