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【事例から学ぶ】仮説~検証のプロセス(2)

まずは前回の振り返りです。

■ 改善シナリオ

前回の最後に示した改善に向けた大まかな流れは下記のようなものでした。
右側にその改善を実施することによる効果を追記しています。

133_2【事例から学ぶ】仮説~検証のプロセス(2)

これではクライアントの最終的な目的(業務の効率化)を達成するのは難しそうだというところで前回は終わっていたかと思います。

■ 違和感が残るポイント

上記の改善の取り組みとその効果を文章として書いてみるとすっきりしないポイントが明確になるかもしれません。

まず、

1. 業務プロセスを整備すると業務の改善に必要なデータの入力項目・入力時期・入力担当者などを明確にできる

これは正しそうです。次にこの効果をもとにして

2. 入力項目・入力時期・入力担当者が明確になるとデータ入力に対するモチベーションの醸成が可能になる

モチベーションを醸成するための打ち手の効果には、多少の属人的なばらつきが出ると思いますが、項目や時期、担当者が明確になると「なぜ入力しないのか」という理由が把握しやすくなりますから、その理由を解消するための打ち手を検討することはぐっと容易になります。ということで、これも正しそうです。

そして、

3. データ入力に対するモチベーションが上がると必要なデータが入力されるようになる

これももちろん正しいと考えられます。次に

4. 必要なデータが(継続して)入力されるとデータ入力が徹底される
5. データ入力が徹底されると正確な情報が把握できる

モチベーションを醸成するための打ち手に「継続するため」の要素まで盛り込まれていることが前提とはなりますが、この2つも大きな問題はなさそうです。

最後に、

6. 正確な情報が把握できると業務の効率が上がる

これはどうでしょうか。正しいと言えるでしょうか。

■ 欠けていたステップ

ここの部分にはさらに次のような改善のステップが必要となります。

6′. 正確な情報が把握できる
 ⇒ボトルネックが明確になる
6″. ボトルネックが明確になる
 ⇒正しいポイントに対する改善策が立案
できる
7. 正しいポイントに対する改善策が立案できる
 ⇒業務の効率が上がる

要するに今回の「業務効率化のためのシステム整備」は、単純に“手間を省くことを目的としたシステム”ではなく『業務効率化を目標として現状を正しく把握するためのシステム整備』であったために、業務効率が向上しない理由としては「改善を講じるべきポイントがそもそも間違っていること」「対象としたポイントは正しいが改善の打ち手が間違っていること」の2つが原因として考えられたのです。

■ 最終的な提案

至急クライアントの担当者に連絡を取り、時間を割いてもらって確認したところ、システムが指し示すボトルネックに対して、何かしらの改善策は実行しているとのことでしたが、お世辞にも正しいといえる改善策ではありませんでした(ボトルネック自体が正しいかどうかはこの時点ではまだ闇の中です)。

最終的には、

1. 業務プロセスの整備やモチベーションアップを行った上で、データ入力の推進を行えば、正しいボトルネックが把握できるようになること
2. 各ボトルネックに対しては改善策のオプションがいくつか考えられること(リスト形式で提示)

の2つを大きな提案の骨子として、クライアントへの報告を実施しました。

今、このクライアントではデータ入力の推進が定着し、これからようやく改善策立案(方法や内容)のブラッシュアップに取り掛かるところだそうです。

当初のままデータ入力の推進だけを目的とした提案をしていたら、正確なボトルネックは把握できているが、打ち手がまずいためにほとんど業務の効率化は見られず、さらに現場の負担感は増し、システムそのものもいつかは運用を停止してしまっていたかもしれません。

結果としては効率化を達成しつつあるのですが、今思い出しても背筋が寒くなるケースの1つでした。
(この記事は2008年8月2日に初掲載されたものです。)