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現場・経営層間のコミュニケーションの隔壁

今回は、企業における現場のリアリティと経営層のリアリティについて考えてみます。

得てして経営層と現場の間には、大きなコミュニケーション上のギャップが存在するケースが多々ありますが、それは、上記のギャップに起因するところが大きいと思います。

リアリティに対する双方の捉え方の違いが、現場・経営層間のコミュニケーションの隔壁となっているということです。

まずは、現場のリアリティについて考えてみましょう。現場は、事業遂行の主体として、種々雑多な業務を日常的にこなしています。

そして、将来やより良い姿を見据えて考えることも確かに重要ですが、とにもかくにも自分に与えられた業務をこなすことそのものが彼らの基本ミッションとなります。当たり前ですが、彼らが自分たちの抱えた業務をこなさなければ、事業は遂行されないからです。

その彼らにとってのリアリティはどこにあるのでしょうか。
ここでは、今回の論点における顕著な例として、業務サービス系の現場を挙げて考えてみます。

彼らにとって、ルーティーンに類する多量の業務をこなすことが第一のミッションです。そして彼らにとって最大のミッション遂行上のリスクは、自分に予定されたルーティーンを予定通りこなすことに対するものとなります。

つまり、事業継続性ならぬ業務継続性に対するリスク認識が強いということになります。具体的には、例外処理やクレームに対して敏感になります。いずれもルーティーンに対する最大級の阻害要因だからです。

つまり、彼らにとって重大なリアリティは、自分のところで発生する各論の突発的・特異的な過程のケースに存在します。それさえなければ、ルーティーン遂行という最重要ミッションを無事こなすことができるからです。

逆に、同質のルーティーンを連続的にこなし、各論・突発的な過程のケースに意識が偏在している中では、全体像を普遍的・定量的に把握することにはあまり関心が向かないことが大半です。

一方、経営層のリアリティはどこにあるかというと、業務活動の結果として現 れる定量的・俯瞰的な視点となります。

経営層は、組織全体をコントロールし、内部だけでなく対外的なステークホルダーに対する説明責任も含めて果たす必要があり、客観的、普遍的に判断することが求められるからです。各論の定性的・主観的・過程的・突発的なケースに経営層がいちいち振り回されるわけにはいきません。

こうして、現場と経営層のコミュニケーションギャップが顕在となります。

つまり、現場は過程各論の主観的・ケース視点の定性判断を重視し、経営層は結果としての客観的・俯瞰的な定量判断を重視する、これではコミュニケーションの折り合いがつきません。

結果的には、パワーバランスの関係で現場が経営層に合わせることになりますが、顕在化した現場と経営層のコミュニケーションギャップが放置されていた組織では、現場から定量情報を提供しようにも、感性的なケース対応が横行して定量情報の蓄積を怠り、生データを持っていない、また、各論対応を重視して、全体像を持っていない、ということがあるのです。

この場合、元データがない状態で無理に経営層の定量情報要求に応えようとして、数字遊び的な要素が横行します。とあるケースでたまたま持っていた網羅性が保証されていないデータを感覚的に率などで割り戻して網羅性があるように見せるなどといった具合です。

しかし、現場では数字に対するリアリティが薄く、このようなことをしながらも、結局自分にとってのリアリティである、定性ケースを自分の中では含み置いて、上述の数字算出の違和感には目をつぶったりもします。

このような状況だと、いつまで経っても現場と経営層のリアルなコミュニケーションは成立しないのです。
(この記事は2008年7月4日に初掲載されたものです。)