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様々な業界に影響を与えたコロナウイルス
新型コロナウイルスは、あらゆる業界に対して様々な影響を与えています。船井総研では年間で6,000社を超える中小企業様の経営に携わらせていただいておりますが、「集客が激減している」・「今までよりも単価がとれなくなった」等のネガティブな影響がでているお客様も少なくありません。
【①船井総研発行レポートより抜粋】
例えば小売・サービス・飲食・観光業は「インバウンド需要激減」や「国内集客・イベント激減」といった、多大なダメージを受ける結果となりました。一方で、「前々からデジタル化・オンライン対応を強化していたので、むしろ売上高前年比は120%です」といったポジティブな影響がでている企業様のお声も寄せられています。
【②船井総研発行レポートより抜粋】
上記の「格差」を生み出している要因は、何なのでしょうか?例えば同じ飲食業でも、前年比売上が60%に落ち込んでいる企業様と、110%の企業様がいるのは、どんな違いがあるのでしょうか?企業様へのインタビューを行っていくと「時流適応」と「事業ポートフォリオ発想」が背景にあることが見えてきました。
打撃を受けた外食業界。ただプレーヤーによっては非常に善戦した
以下に、コロナの影響を大きく受けた業界の1つである外食企業を例にとって、事例を2件掲載いたします。
【③船井総研発行レポートより抜粋】
まず事例①についてですがAさんとBさんの業績差は、ずばり「テイクアウト・物販・通販領域に、あらかじめ力を入れていたかどうか?」という点につきます。店舗だけの売上でみるとAさんの方が高い「繁盛店」でした。しかし、コロナ前から店舗以外の収益獲得チャネルをもっていたBさんは、結果としてコロナ下における「巣ごもり需要」をとらえることができ、売上を激減させずに済むことができました。
同様に事例②の企業様においては、外食・宅配・卸の3事業を持っていた企業様になります。コロナにより外食は落ち込みが激しかったですが、一方で食品スーパーへの冷凍食品卸が好調だったため、結果として企業全体売上はそこまで落ち込むことはありませんでした。
事業ポートフォリオを見直すタイミングが来た
象徴的な事例として外食業界の事例を掲載いたしましたが、「コロナの影響で業績が大幅に下がった企業」と「善戦した企業」の明暗をわけたのは「収益の柱の数」と言えるでしょう。特定の収益源に依存している会社外食業界に限らず、あらゆる業界で「事業ポートフォリオの見直し」が経営テーマとして掲げられています。
船井総研では様々な業種の企業様とお付き合いをしておりますが、今回のコロナの影響を受けた業種・企業様の事例を整理の上、以下に「事業リスクを分散するための考え方」を整理させていただきました。
【④船井総研発行レポートより抜粋】
ポイント解説でも掲載をさせていただいた通り、今後新規事業を検討していく際は、「収益モデル」「対象顧客」「顧客ニーズ」「展開地域」「販売手段」の5つの視点をみたときに、「パターン①か②のどちらかに偏りすぎていないか?」「足りない要素を付加する上で必要な事業は何か?」という視点をもって、事業案を検討していくことが、重要になるでしょう。
ケーススタディーとして、「住宅販売」「酒製造業」「宿泊業」「外食チェーン」「リフォーム」の業種を例にとり、事業ポートフォリオを再考した場合の例を掲載させていただきます。
【⑤船井総研発行レポートより抜粋】
例えばフロー型の収益構造しか持ち合わせていない企業様であれば、ストック要素が付加できる事業を考えてみる。個人向けのビジネスのみに特化していた企業様の場合は、法人需要が取り込めるビジネスを発想してみる。店舗集客が前提のモデル(オフラインのモデル)の企業様の場合は、オンライン上で受注できるサービスや、オンライン上でサービス提供までが完結するサービスを考えてみる。こういったように、事業ポートフォリオを改めて見直すことで、企業経営をより盤石化させることが可能です。
「複数事業の展開=経営資源が分散し、非効率になる」という言葉に騙されるな!
従来から経営の世界では「複数事業を展開することは、リスクでしかない」「まじめに一本の事業を突き詰めることが大切である」と語られてきました。経営の世界には「絶対」はありませんので、単一事業を突き詰めていくことも、正解の1つだと思います。ただし、その言葉に縛られすぎてしまうことは非常に危険です。
確かに、『既存業種と全く関係しない事業の付加』や『「収益モデル」「対象顧客」「顧客ニーズ」「展開地域」「販売手段」を意識していない事業の付加』を行ってしまうと、単純に経営資源の分散化がおこり、企業が弱体化してしまうリスクは高いでしょう。ただ今回解説をさせていただいた「事業ポートフォリオの再設計提案」については、経営資源を極力分散化させない形で新たな事業付加を行い、経営をより盤石化していくためのご提案になります。
コロナの影響が方々へ波及しているなか、今こそ冷静に「自社が今後取り組むべき事業は何か?」を一度考えてみてはいかがでしょうか?本コラムをお読みいただいた企業様のうち、1社でも多くの企業様にとって、10年後の事業成長ビジョンを描く上での参考になれば幸いでございます。