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プランタン銀座のバレンタイン商戦にみる「業績アップの基本」

【1】“バレンタイン売上”売上高前年比10%増を狙うプランタン銀座
プランタン銀座/72ブランド650種類のチョコでバレンタインフェア
流通ニュース 2015年01月22日配信
記事によると、プランタン銀座では、2015年のバレンタイン商戦について、プランタン銀座初登場の21ブランドを含む国内外72ブランド約650種類のチョコレート展開を期待しているとのことです。

2015年の売上目標は前年比で10%増。本館地下2階、本館1階で行う通常のバレンタインフェアの展開を1日早めたほか、本館5階、本館1階特設スペースを含めた最大展開の期間を1月28日からと4日早め、売上達成を目指していくことが記事に掲載されておりますが、バレンタイン商戦での売上アップ実現は、2月の売上を高める効果があることはもちろんですが、その他にも様々な波及効果をもたらしてくれます。

【2】商売の基本=狙ったタイミングで狙った商品を「売り切る」こと
上段で紹介したバレンタインデー商戦について、小売店がバレンタインデー商戦を行うまでには、ざっくりとですが以下のプロセスを踏んでいます

(1) 売上・客数等の目標数値を決めて、仕入れ商品を決める
(2) 販売目標を材料にメーカーと交渉し、数量・売価を設定する
(3) 様々な事前告知を行い顧客の購買意欲を少しずつ高めていく仕掛けを実行する
(4) バレンタインデー当日には関連イベントを行い集客の最大化を図る
(5) 販売オペレーションを効率化し、普段よりもレジ対応能力を高める
(6) 仕入れた商品をきっちりと売り切る

1つの商戦を乗り切るまでには、上記のようなプロセスを踏まえていく必要があるわけですが、
上記(1)~(6)までのプロセスは、「商品を特定タイミングで売り切るためのノウハウの基本」といえます。

ただ商品を仕入れて、いつもと同じように売場に並べるのではなく、事前告知によるPRを行い、集客のためのイベントを行い、売るための接客体制・接客方法を事前トレーニングし、販売活動に臨む。この一連の流れが、日本全国の小売店で行われることで、1年で最もチョコレートが売れる1日が生み出されているのです。

【3】特殊イベント時以外でも、ムーブメントは作り出せる
バレンタインデーのように、特定タイミングにあわせて商品を仕入れ、販売していくまでの型がしっかりと身についている企業は、2つの利益を得ることができると我々は考えています。まず1つめは、当たり前ですが「特定タイミングの売上を最大化することができる」ことです。この能力が身についている小売業と、そうでない小売業との間には、明確に販売力の面で差が生じます。

例えば、狙ったタイミングの売上を最大化できる企業であれば、最も顧客が増えるタイミングを狙って特定商品を大量発注し、それにより原価も抑制しつつ、売り切ることで廃棄ロスも発生させない販売を実現することができるでしょう。一方狙ったタイミングに商品を売りさばく力がない企業の場合、いくつ売れるかわからないから弱気な発注しかできず、且つ販売方法も店舗判断にゆだねており売れ残る可能性もあり、結果として調達時原価も下げられず、売れ残りによる廃棄ロスがさらに利益を圧迫する、といった状況にもなりかねません。

次に2つめは、「特定商品を売り切る型」ができている企業は、たとえ商品や時期が変わっても、世の中の時流が変わったとしても、そのタイミングにスムーズに適応することができます。代表的なアパレルチェーンであるユニクロを例にとると、ユニクロは時代時代にそれぞれヒット商品を生み出していますが、最大の強みは特定商品をヒットさせる「販売力」にあるといえるでしょう。

特定商品にフォーカスし、大々的なマスプロモーションを展開。さらに店頭での売場レイアウトでもその特定商品(=重点商品)が優先的に訴求されるレイアウトに変え、チラシ内容・店舗オペレーションにいたるまで、一環して重点商品をヒットさせるための取り組みを、組織全体で実行することができる。「重点商品を売り切る型」をもっているユニクロだからこそ、今日の成長があるのだと考えます。

【4】やってみよう!重点商品拡販を通じた組織改革
ユニクロにて当たり前に実践されている販売オペレーションのような体制を構築していくためには、まずは難易度の低い重点商品販売から着手し、少しずつ達成難易度を上げていくことが理想的です。例えば、先にあげたバレンタインデー時にチョコレートを拡販することは、比較的容易なイベントといえます。なぜなら日本全国がバレンタインデーを演出しており、顧客の購買モチベーションも高いため、何もしなくても特定商品が売れていく可能性があるからです。

まずはこういった特殊イベント時の売上で、過去最高の実績を出すところからはじめていくことがステップ1になります。ステップ1のポイントは、しっかりと綿密な計画を立てつつ、拡販を実行していくことです。目的は商品が売れることではなく、自ら積極的に「売り切る」ことにあります。大事なので繰り返し表現しますが「よくわからないけど売れたね」ではなく、「明確な狙いをもて、〇〇な取り組みを行った結果、〇個売りきったね」という状態を目指すことが目標となるのです。

その為には、販売マニュアルの整備やツールの準備、タイムリーな情報共有を実現するための各種調整等、様々なやりやるべきことがあるでしょう。そういった「やるべきこと」をすべて具体的なプロセスに落とし込み、役割を明確にし、「売り切るための体制構築」を図っていきましょう。

次にステップ2として取り組むべきは、世間のイベントとは関係のないタイミングで、その企業独自の「ムーブメント(世の中の動き)」を作り出すことへのチャレンジです。基本的にはやることは「バレンタインデー商戦」と同様ですが、唯一ことなるのは、販売テーマを作り出す必要があることです。例えば「春のパン祭り」「受験シーズンのキットカット」といったような顧客の購買イメージは、昔は無かったが企業努力により新たに生み出されたムーブメントといえるでしょう。

ステップ1で構築した「売り切るための体制」に、新たな企業独自のイベントテーマを載せて、商品拡販を目指していきましょう。以上、簡単にですが、重点商品を拡販していくことで業績アップを目指して行く上の基本を解説させていただきました。既存店の業績が伸び悩んでいる、実行施策がマンネリ化してきている、こうした悩みを抱えている企業様は、是非一度重点商品施策を実行してみてはいかがでしょうか。

吉田 創
マネージングディレクター
船井総合研究所に入社以来、様々な業種・規模のクライアントに対し、経営戦略/中経営計画の策定、ビジネスモデルの再構築、新規事業開発をサポートし、これまでの累計担当社数は300を超える。 その経験を活かし、持続的成長に向けた課題を見える化する「ビジネスモデル診断」の開発、高収益なビジネスモデル作りを目的とした経営者研究会「企業価値向上益経営フォーラム」を主宰している。