本稿では、一般消費者にとってなじみ深いBtoC業界(小売・飲食・サービス業)の
管理職であるスーパーバイザーの仕事術を通じて、
「ビジネスにおける収益向上の基本」をお伝えいたします。
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■衰退するチェーン・発展し続けるチェーンの違い
商品開発力、ブランドロイヤリティー、サービス力 etc、
多店舗展開を実現している会社には何かしらの強みが存在しています。
チェーン企業が成長している段階では、これら「強み」を発揮していきた企業も、
年月の経過に伴い本部機能がマンネリ化し、チェーン全体が弱体化していく企業も多くみられます。
一方で、オープンから10年以上も経過しつつもチェーンとしての勢力を保っている企業もあります。
例えばコンビニチェーンは時流適応を上手に展開してきた良い例であり、
時代・時代に求められる商品・サービスを店舗で展開していくことで
今日の人口減少時代にもかかわらず店舗数を伸ばし続けています。
・時流適応にスムーズに対応できる企業
・時流適応に対応できず、衰退していく企業
この両者において、衰退企業の多くには
「スーパーバイザー体制が適切に機能していない」傾向が見られます。
■スーパーバイザーが回す「PDCAサイクル」の重要性
現在当たっている業態も、時流変化に適応できない場合は衰退が始まります。
例えば、かつてショッピングセンターに見られたフードコートは、
現在はラーメン、たこ焼き、イタリアン等、専門店が集合するスタイルが一般的です。
また業態論でいくと、昔はよく見られた駅売店、こちらも衰退の一途を辿っています。
また、皆さんも一度は利用したことがあるかと思いますが、
「駅売店」は、駅乗降客数により多少の変動はありますが
・約3坪程度の売場面積
・年商1億円程度
・粗利率は15~20%程度弱
・7時~22時の営業時間を2名で回すオペレーション
以上のような「儲かる業態」といわれておりました。
その背景には駅中という立地上のメリットもありましたが、加えて新聞・雑誌・タバコという
・省スペースで展開が可能
・どこで買っても商品力が変わらない
・多くの人が恒常的に購入する商品
上記条件を満たす商品をメインで扱っていたことが要因でした。
(※新聞・雑誌・タバコの売上構成比は全体の約7割程度)しかし、
・新聞、雑誌は電子媒体の登場により売上減少
・タバコは値上がり、健康志向、喫煙スペース減少等による売上減少
・市中のコンビニ数は増加し競合環境も激化
以上の要素より、収益性は減少の一途を辿っています。
事実、最近のニュースとしてはセブンイレブンがJR西日本と提携し、
駅中にある売店をセブンイレブンへと順次転換していくことが発表されたのは、
記憶に新しいと思います。
▼2014年3月27日 日本経済新聞
駅にコンビニ500店 セブンイレブン、JR西と提携 既存店を切り替え
このように、市場は常に変動していくわけで、企業は如何に時流適応していくかが求められます。
市場の変化をキャッチするために本部は常に情報収集をしていく必要がありますが、その際の1機能を担うのがスーパーバイザーなのです。
■スーパーバイザー体制が機能している状態とは?
まず、スーパーバイザー体制が適切に機能している場合を定義しましょう。
<スーパーバイザー体制が機能している状態>
【1】店舗の収益を最大化するモデルがある
【2】モデルと連動した、店舗で打ち出すべき「重点施策」が計画化されている
【3】計画に基づき、SVは店舗へ「重点施策の徹底」を指導している
【4】SV本部施策の実行効果が定期的に分析されて、成功事例が共有されている
【5】成功事例(失敗事例)を元に、店舗の収益化を最大化するモデルが修正・更新されている
こうした計画・実行・検証・修正のPDCAサイクルが機能しているチェーン企業の場合、
時流変化に早期に察知し、対応策を講じることのできる素地ができているといえるでしょう。
一方、スーパーバイザーによるPDCAサイクルが適切に機能していない場合はどうでしょうか。
<スーパーバイザー体制が機能していない状態>
【1】店舗の収益を最大化するモデルはあった(オープン当初からほぼ変わっていない)
【2】モデルと連動した、店舗で打ち出すべき重点施策が定められていない
⇒基本的な店舗運営以外に、季節ごと、タイミングごとに重視するような施策がない
⇒施策があったとしても、具体的な数値目標や店舗での展開イメージが固められていない
⇒基本的には店長やSV個々人のスキルにゆだねられている
【3】店舗で実施すべき重点施策はばらつくため、SVによる店舗指導内容もばらつく
⇒重点施策が定義されていないため、本部によるSV管理が難しい
⇒できるSVとできないSVによる差異が発生してしまう
⇒チェーン全体としての品質管理が困難となる
【4】重点施策に定量的な目標がない為、効果検証が実施されない
⇒数値で分析することが少ないため、課題や成功事例が明確にならない
⇒成功や失敗事例が明確にならないため、チェーン全体でのノウハウ共有がなされない
【5】結果、重点施策や数値分析・成功事例共有が弱いため、時流適応が遅れる
■「モデルのリニューアル」の仕組みを作ろう
時流は常に変化していきますし、未来のヒット業態を予測することも困難です。
ただし、時流変化に即座に対応できる体制を作っておくことで、既存業態のマンネリ化や、
新業態への対応ヒントも抽出することができるのです。
そのためには、本部と店舗をつなぐ役割を担うスーパーバイザーの役割は極めて重要です。
現在、チェーン企業全体の既存店売上高が横ばい、又は微減傾向になりだした場合
時流適応に遅れていることのサインといえるでしょう。
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以上、時流の変化につかむことの重要性に重きを置いてご説明をさせていただきました。
「時流に適応するための準備」
「変化に気づける組織管理体制」
こうした取り組みは業種を問わず重要とされる視点です。
▼自社事業が展開当初と比較して成長速度が鈍化傾向にある
▼近年取り組み内容が定番化・マンネリ化してきている
上記課題を感じている企業の方は、これまでの取り組み内容を評価し、
改善・実行へとつなげていくPDCA体制の見直しをご検討されてはいかがでしょうか。