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すき家のワンオペ解消施策にみる、店舗生産性向上のヒント

■すき家の深夜ワンオペレーション問題
yahooニュース / 2014年8月7日
「すき家」初の最終赤字へ 1人勤務解消、牛丼並盛り250→270円

外食チェーン大手のゼンショーホールディングスで、昨今世間をにぎわせているのが、「ワンオペ」問題です。

深夜時間帯はアルバイトの1人勤務を基本とすることで人件費を圧縮する、非常にシンプルな施策でしたが、加えて、すき家では他競合牛丼チェーンが取り組まない
「バリエーション戦略※」を実践しているため、現場にかかる負担は牛丼チェーントップだったことが推測されます。
※ここで表現するバリエーション戦略とは、商品のボリュームやトッピング別に
 細かく商品を分けて展開していくスタイルと定義させていただきます

さらにレジ対応についても券売機制ではないためその点もオペレーション対応に負担を掛けている一因といえるでしょう。
※券売機導入の是非については、オペレーション以外の面からの議論もありますが、本稿では割愛をさせていただきます。

様々なニーズに対応できる店舗体制を整えることで成長をしてきたすき家。

しかし、労働環境と人件費・現場オペレーションのバランスを崩してしまった結果が、今回のワンオペ問題を発生させたのではないでしょうか。

■店舗生産性の向上が求められる時代
上述した、すき家以外の多店舗展開企業においても
・人材不足による人材獲得競争の激化
・人件費や原材料費上昇によるコスト水準の悪化
等々の理由により、店舗ビジネスにおける人材を取り巻く環境には変化が生じています。つまり、従来よりもコスト水準をとりまく環境は悪化しているため

・従来よりも店舗労働環境を改善しなければ、人材確保は困難である
・従来と同じ人員数・生産性では収益向上が見込めない

という状況が起きているといえるのです。

こうした状況下では、今までのビジネスモデルから考え方を転換していく必要があります。

外部環境の変化も踏まえ、店舗収益性を向上させるためには
何が必要になるのでしょうか。

すき家をシミュレーション対象にした上で考察してみたいと思います。

■すき家現状モデルのまま、ワンオペを解消した場合の影響
すき家では、労働環境の改善を目的としてワンオペ解消に取り組むことを宣言しています。

この結果、すき家の店舗別収益性にはどのような影響ができることが想定されるでしょうか。

現状のビジネスモデルを踏襲したまま、深夜のワンオペを解消した場合、すき家が得られるメリットの“可能性”としては、どういったものが考えられるでしょうか。
まず、単純に人員を増やすだけでは急速な客数増加や売上拡大を見込むことは難しいことが想定されます。

考えられるメリット可能性としては、

・お客様の待ち時間短縮による、顧客満足度の向上
・満足度向上によるリピート率の向上

といったところがあげられるところでしょう。

しかし、この効果が得られる前提は

・現状モデル下において顧客が「待ち時間」でストレスを感じていること

が前提となるわけですが、比較的顧客の時間余裕がある深夜時間帯において顧客が待ち時間にストレスを感じているとは考えにくいと思います。
(※あくまでも個人的見解であり、データ検証を実施したわけではありません)

とすると、深夜人員数だけを増員した場合「従来モデルよりも単純なコスト増となってしまう」可能性は極めて高いといえるでしょう。

従来のワンオペモデルのときと同等の利益水準を達成するには「人員が増える分、提供サービスに従来はなかった付加価値」、すなわち「“客単価アップのための施策”を追加展開していく」必要があると推測されます。
ここから先はアイディアベースとなりますが

・提供時間は若干増えるが高単価なメニューの展開強化
・アルコール類等の強化
・追加注文をとるための各種仕掛け(接客や店内販促物によるプラス一品の訴求)

等々の新たな施策の展開が必要になるでしょう。

■価格競争力の向上でなく、店舗生産性の向上を目指す
今回はすき家のワンオペ問題を題材に店舗生産性の向上させる上でのアイディアを掲載させていただきました。すき家以外にも、昨今の店舗ビジネスにおける競争環境の激化から店舗の運営人員数を削減する方向性で動かれている企業様は多いように感じます。

確かにそれも1つの方向性ですが、人材を増やし、店舗でのサービス力を向上させ
人件費アップ以上の売上・利益アップを実現していく戦略も1つの方向性となります。ローコストモデルの追求は現場の疲弊を招くリスクが常に付きまといます。

また、単純なコスト競争力のみを追求には限界もあります。
持続的に成長・発展していく企業を目指していく上では、どこかで突き当たるのが「生産性の向上」というテーマです。

現状モデルの将来性に不安を感じられている方は、ビジネスモデル全体にメスを入れ、「全体最適の視点」に立ち、

・人員を増やしても収益がとれるモデル

の検討してみてはいかがでしょうか。

吉田 創
マネージングディレクター
船井総合研究所に入社以来、様々な業種・規模のクライアントに対し、経営戦略/中経営計画の策定、ビジネスモデルの再構築、新規事業開発をサポートし、これまでの累計担当社数は300を超える。 その経験を活かし、持続的成長に向けた課題を見える化する「ビジネスモデル診断」の開発、高収益なビジネスモデル作りを目的とした経営者研究会「企業価値向上益経営フォーラム」を主宰している。