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営業力強化のオトシアナ[マーケティング戦略・営業戦略]

皆様の会社におかれましても、営業部門の担当者を対象とした勉強会の実施や、研修会社が実施する「営業力強化」をテーマとしたセミナーの利用をされたことがあると思います。

1990年以降、コンピテンシーモデル(高業績者の行動特性)が人事制度のツールとして注目を浴びて導入企業が拡大していきました。その流れはしばらく継続し、営業部門においては高業績の営業マンと一般的営業マンの“行動の違い”を明らかにするためのフィールドリサーチ(営業同行調査・デプスインタビューなど)に取り組む企業も多く存在しました。

フィールドリサーチの結果から導き出されたコンピテンシーモデルを、全ての営業マンが徹底的に実行に移しさえすれば、理論上、成果を一定レベルまで上げられる点については皆様も納得できると思いますが、現実はそれほど甘いものではなく、なかなか営業成果があがらないというのが実情ではないでしょうか。

コンピテンシーモデルが機能しないケースと同様に、「営業力強化」をテーマとしたセミナーを活用したり、営業ノウハウが満載されたマニュアルや市販の書籍で学習を促しても、思うような成果を得られないといったケースは頻繁に見受けられます。
こうした営業部門における“好ましくない事象”を生み出してしまう要因は何でしょうか?

企業により事情は異なると思いますが、一般的に、コンピテンシーモデルにせよ、研修会社が実施するセミナーにせよ、「営業力強化」というテーマを掲げた瞬間、「個人の営業スキル」に興味が集中してしまう傾向があります。これが、企業がポテンシャルを発揮しきれない最大の要因だと個人的に考えています。

もちろん、「個人の営業スキル」をアップさせることは重要ですし、取り組めばそれなりに成果をあげることは可能なので、戦略の一要素にはなり得ます。

しかし、経営課題として「個人の営業スキル」ばかりに興味が集中してしまうと、「営業力」を発揮するために解決すべき本質的問題を見落とすリスクがそれだけ高くなることを意味します。これが「営業力強化のオトシアナ」です。

成長市場で戦っている企業であれば「個人の営業スキル」を強化すれば、その成果は大きいかもしれませんが、成熟期に突入して競合他社と製品・サービスのレベル差・価格差が少なくなった環境下においては、「個人の営業スキル」に依存するだけでは限界があります。個人営業からチーム営業へのレベルアップ、営業管理システムの強化まで取り組んだとしても片手落ちでしょう。
「営業力」が強いと評価される企業は、「個人の営業スキル」だけが強いわけではありません。高い利益を生み出すコスト構造、高利益体質に裏付けられた企画・開発力、差別化された製品・サービスの保有、モチベーションアップに直結する人事制度、情報共有・コミュニケーションの仕組みなど、「営業力」を発揮するための“武器”と“基盤”を装備することが重要です。

「個人の営業スキル」だけで成長を遂げている会社は、時間の経過とともに社員は疲弊し限界を迎えるため、新たな武器を持たなければならない時期が来るでしょう。

「営業力強化のオトシアナ」にはまらないためには、付け焼刃的に「個人の営業スキル」だけに注目するのではなく、“そもそも営業力を発揮するために自社に必要な要素は何か?”という視点で、取り組むべき課題の優先順位付けをすることがポイントになると思います。

濱野 雄介
船井総合研究所 プロジェクトマネージャー