多くの日本企業から、経営者および幹部社員の世代に関してのお問い合わせが入る時代となりました。右肩上がりの上りエスカレーターの時代には、勇気と挑戦心さえあればなんとかなった会社経営も、人口縮小で下りエスカレーターとなった今の日本では、以前のやり方では回らなくなったことも多いからのようです。勇気と挑戦心は重要ですが他社に打ち勝つ優位性のある経営を実現しなければなんともならない時代になってしまったのです。
経営者の場合、避けては通れない問題として後継者育成と事業承継の問題があります。経営者は会社の現状の把握、分析・判断、意思決定を健全に行っていく義務があります。自分の子息であろうと内部昇格者であろうと、次の経営トップ候補が役職だけの承継ではなく、自分以上に健全な判断をしく環境と体質を創れるかどうかが心配の種になるわけです。
特に中小企業の創業社長の場合、自分と共に会社を引っ張ってきた幹部社員は自分の年齢に近しい存在であり、後継者候補が子息の場合、親子ほど違うベテラン社員が会社に残っている状態で経営の引継ぎを行わなければなりません。先輩であるベテラン社員を若い二代目経営者が動かすことができるのかということは本人のみならず、創業社長にとっても頭の痛い問題なのです。
日本では1980年代後半ごろから農家の後継ぎ問題、商店街の経営者の後継者難などで廃業が続いてきました。この現象が中堅の工場やメーカーにまで及んできているようなのです。その結果、事業承継などを諦め、M&Aに自社を委ね事業譲渡を考える経営者も多くなってきているのです。
企業はゴーイングコンサーンを言われるように事業に継続性がなければなりません。さらに自分たちの企業の存在意義を明確化させながら、未来を切り開く夢多きビジョンを打ち出し、社員にわくわく仕事をする環境を提供していかねばなりません。そのためには、これまで企業が大切にしてきた価値観や考え方を上手に継承させていくことが重要です。
この部分がうまくいかないと、成功を呼び込んできた正しい判断、意思決定ができなくなってしまいます。時流や経済環境はもちろん変わっていくので対応していくことは必須なのですが、そもそも論としての経営トップの判断の仕方、考え方が重要なのです。これらを帝王学と呼ばれる後継者教育を通じて、または少しずつ実務体験をする中で教え込みながら次世代経営者の育成をすることが望ましいのです。経営者が勉強をせず一人よがりな考え方を持っていたり、正しい判断ができなければ企業の永続性は失われます。
中小企業において経営者の存在はとても大きなものです。経営者が企業のすべてと言ってもよい会社が多いのが実態です。後継者育成、その後継者を支える次期幹部育成に真剣に取り組まない企業は商店街の店舗が衰退していったように、徐々に力を失っていくことが予想されます。社員だけでなく後継者も育つものではなく育てるものだという意識をもって、具体的な取り組みを始めることが重要なのです。