船井総研は商圏か、商品か、客層のどれかで一番を目指すことがビジネスの成功の一大条件、経営のコツなのだと説明してきました。
詳しく説明すると商圏(もしくは選択した事業ドメイン)の中での勝者を目指すという意味であり、
ビジネスの対象となるターゲットを明確に定めた上で勝者を目指すという意味でもあり、
競争優位性を持つ商品を重点的に取扱いライバルに打ち勝とうという意味でもあります。
つまりセグメント、ターゲティング、ポジショニングを明確にして一番を目指すのだということと同義なわけです。
これらはマーケティングの基本のキなのですが、
セグメント、ターゲティング、ポジショニングという外来語で教えると中小企業では社内浸透、
実践の段階でかなりの困難が生じることになります。
なぜならまず言葉が難しく聞こえるためアレルギーが発生するからです。
また言葉の意味を考えるという作業がワンクッションはいってしまい行動が遅れ足並みが乱れやすいからです。
つまり戦略を落とし込むときに更に説明や解説が必要になるわけですから時間もかかりますし、
誤解も生じやすくなります。またフルスロットルで進めることが難しくなります。
しかしこの商圏の中で一番を目指そうという言葉は実際にビジネスに携わる担当者にはとてもわかりやすいものとなります。
またこの商品を重点販売して勝負していこう、この商品を一押しでおすすめしていこうということも取り組みがとても容易になります。
また若い女性に人気ナンバーワンのビジネスを展開しよう、
ファミリー層に一番喜ばれる店舗を作ろうという風に客層一番の推進に取り組もうという話も社員が具体的にイメージしやすい形となります。
船井幸雄は全社一丸となって取り組む目標づくりを一番化というわかりやすいコンセプトで説明したわけです。
一番化主義の採用の効果はコンサルティングの現場では絶大なものとなります。
戦略論を勉強した経営幹部だけでなく、一般社員もそしてパート社員もアルバイトにもわかりやすい目標提示となるからです。
そして一番化を目指して周知結集し社内を一体化させていけば、結果が出やすくなります。
総論賛成各論反対となりやすい日本の組織では、良い話でもなかなか実行するには課題や困難が生まれやすいのですが、
一番化というワンメッセージは人の気持ちも行動も効率的に動かすことができる大きな力を持つのです。
未来に対して不透明感を感じる低成長成熟化社会において、経営者はシンプルな目標を全社に提示しなければなりません。
そういう意味で今一度、これからの新しい時代に何の一番を目指すのかを考えてみてはいかがでしょうか。
ただし昔ほど簡単に一番化の設定ができるわけではありません。競合企業との戦いも日々熾烈になっていきます。
ですから徹底的に情報収集を行い、商圏設定も、商品の設定も、客層の設定もシビアにしなければなりませんし、より具体的にしていかねばなりません。
徹底的な市場調査、競合調査が必要なのです。
その調査に基づき、狭めて狭めて絶対に勝たねばならないピンポイントな土俵設定を行い、その中で一番を狙うというような感覚が重要です。
科学的な裏づけを取ることはとても重要なことです。
なぜなら一番になっても企業が成長、発展していくことが可能なボリュームが存在するのかが確認しておかねば後で大変はことになるからです。
詳しく説明しましょう。
昨今は新しい技術の台頭で古い技術が形作ってきた市場が短期間で蒸発してしまうことが珍しくない時代となりました。
例えばデジカメは旧来のカメラとフィルムのマーケットを短期で蒸発させてしまいました。
また3Dプリンターはすでに簡易な木型、金型、モックアップの市場を蒸発させようとしています。
蒸発が進むマーケットで一番になっても未来はありません。
ですから十分な情報収集と未来予測を行ったうえで一番化を狙うことが重要なのです。
日本の家電メーカーの苦境は新興国のキャッチアップの実力を見誤ったこと、
技術の進歩による市場の変化や需要の蒸発の可能性を十分に理解できなかったことにあります。
一番化はあくまでも美味しい果実を獲得できる裏づけがあってこそ取り組みがいたあるコンセプトなのです。
ぜひ新しい時代の新しい一番化目標の設定に取り組んでみてください。