東京オリンピックの開催が決定し、アベノミクスによる円安誘導、さらには米国の景気回復のなか、東証1部に上場する企業(1,250社、金融を除く)の2014年9月中間(4~9月)決算は、経常利益の合計が前年同期と比べ9.58%増の17.3兆円と、リーマン・ショック前の2007年中間期(18兆円)とほぼ並ぶ見通しになっています。
輸出関連と内需主導で業績格差はありますが、これらの大企業およびその関連企業を主とする活況を受け、首都圏のホテルも久しぶりの好調を維持しています。
一部のホテルでは、13平米くらいの客室にも関わらず、1泊2~3万円で販売するなどもはやバブルのような価格設定も多く見受けられるようになってきました。
そんな活況のホテル業界から、1軒紹介させていただきます。
■新宿グランベルホテル
2013年12月開業の宿泊主体型ホテルです。
ミセスをターゲットとしたファッションカタログ通販企業のベルーナに関係する企業により運営されているホテルで、「グランベルホテル」としては、渋谷(2006年:105室)・赤坂(2006年:61室)に継ぐ3店目で、規模は380室と大きく前の2店を上回り、ブランドのフラッグシップとして位置づけられています。
歌舞伎町~東新宿エリアには、当ホテル開業以降のここ1年以内でも
(1)JR九州ホテルブラッサム新宿(240室):2014年8月
(2)スーパーホテル新宿歌舞伎町(117室):2014年10月
(3)アパホテル東新宿歌舞伎町(165室):2014年12月
(4)ホテルグレイスリー新宿(970室):2015年4月
と、全て徒歩数分圏内に4軒:1,492室もの新築ホテルが開業もしくは開業予定という大激戦エリアです。
装置産業の側面を持つホテルにとって、その施設の新しさが競争力の源泉の1つになることは言わずもがなですが、当ホテルの場合は、自身の開業後もチェーン系列の新規ホテルが相次ぐため、単なる施設の新しさでは明らかに埋没してしまうことが予想されます。
そこで、同ホテルでは「クリエイティブホテル」というワードを掲げ、「FUN to STAY」をコンセプトに、観光客からビジネス目的の利用者まで、幅広く楽しめるホテルということでアジアの若手クリエイター達とコラボレーションし、家具・内装のバリエーションまで含めると28タイプもの客室を用意しました。
特にスタンダードカテゴリに含まれる10タイプに客室については、さらに家具・内装のバリエーションとして、「オモテ」「ウラ」という2パターンが用意され、「ウラ」には、通常のライティングデスクに替り、ソファが配置され、よりレジャー需要に対応した作りとなっています。
近年増加してきたビジネスホテルのレジャー対応におけるルーム案の一例として
利用者の反応を注視したい取組みといえます。
現場の予約・販売サイドを考えると、大変手間のかかる話ではありますが、何回も利用する楽しさ、自分の気に入った部屋を見つける楽しさを提供するものと考えられます。
実際、客室自体は、決して広くないものの、一通りの充分なスペックの設備・家具が揃えられており、一定の満足度水準で、選択肢があることは有益のはずです。
(個人的には、客室面積に対する設備充実度として、非常に参考になるホテルでした。)
但しこのコンセプトに対する客室数としては、都心一等地であることを考慮しても、やや過大であることは否めず、現状は、外国人観光客による利用が多く散見されるなど、旧来からの都市型デザインホテルの延長という側面も見受けられ、本当にコンセプトが伝わっているかは「グレイスリー新宿」のオープンを待つことになると思います。
もし機会があれば、この商品のバリエーションを体験してみてはいかがでしょうか?