経営戦略とは自社のビジョン明確化させた上で、それを実現するために自分たちが考えた最良の打ち手の選択です。船井総研では特に、あるべき論だけにとどまる戦略は意味をなさないと考えています。
もちろん企業のあり方は船井総研としてももっとも重視する要件ではありますが、あり方が明確になっても、その企業では経営資源の不足から取り組めるはずがない、やれる状態ではないというケースも多いということを多くの企業支援の中から学んでいますので、かならず「あり方」を落とし込む「やり方」への提示を行うということを意識しています。要は絵に描いた餅、総論としてのあるべき論にはおさめないという覚悟をもって仕事に取り組み、経営サポートに挑むことを心がけています。この部分は船井流の現場主義と評される部分です。
すなお、プラス発想、勉強好きという船井総研が大切にする成功の三条件に基づき強者は強者なりの戦略、弱者は弱者なりの戦略を立案し、即実行(即時処理)の精神を大切にしながら社員が一体化して業務に取り組み結果としての即時業績向上を目指すという流れを作り出すことを目指しているわけです。
では正しい戦略、自分たちの強みが活きる最良・最高の打ち手はどう模索し策定していけばよいのでしょうか。
その仕事を担う経営幹部、戦略スタッフは、時流の把握、環境変化の動向、競合の動きなど、状況を的確に関係者にわかりやすく説明していくなかで、成長に向けての課題を浮き彫りにしていかねばなりません。そしてその課題を解決する戦略はこのようなプランが望ましいと提言し、ボードメンバーをはじめとする意思決定者がGOサインを出せること、そして要となるキーマンのコンセンサスを形成し、目的、目標を共有できる環境づくりを行っていくように動いていくのです。ですから理論上の正当性だけでなく各セクションのキーマンが「これならやっていける」「ぜひやりたい」「すぐにでも始めたい」と思わせる明るい未来をイメージさせるプランを構築していくことが重要なのです。理論はわかるがどこからどう手をつけてよいのかわからない。動いたあとのイメージがピンと来ないという戦略では話にならないのです。特に中小企業においては資金的、人的に制約が多いわけですから、そのような状況においても頑張って取り組んでいくぞというムードを形成できるプランの提示がとても重要なことなのです。
世間で一般的にマーケティング力が高い人というのは、具体的なアクションに結びつきやすく、実現性の高いプラン策定にむけたわかりやすい課題解決のヒント(ここでいうヒントとは課題をとりまとめ、わかりやすくシンプルに表現したコンセプト)を説明できる人だと言えましょう。それは決して評論家的な人ではありません。
では、そのようなマーケティング力をどう高めていけばよいのかということになります。私が幹部教育、戦略スタッフ教育でよくお話しするのは野球の練習では千本ノック、テニスでは壁打ち、ゴルフの練習では打ちっぱなしとあるように、数をこなすことでマーケティング力は向上するということです。具体的には「マーケティング千本ノック」というワークをやってもらいます。マーケティングも数をこなす中で型を見につけようという取り組みです。何種類ものワークシートを作ってやっていますが、代表的なものは以下のようなものになります。
ワーク)自分が気になるヒット商品、人気企業を決めます。
そして……
・その商品、企業がなぜ人気なのかを説明してください
・その商品、企業の戦略やコンセプトを説明してください
・その商品のコーポレートコピー、ネーミングから気づくことはありませんか
・誰がその商品、企業を支持していますか
などと進めるわけです。これを小売業、サービス業、メーカーなどなど業種を問わずどんどんやっていきます。千本ノックですから千企業やるぐらいの勢いでやって、そのとりまとめたシートの内容を仲間にプレゼンしてもらうわけです。何人かのメンバーで行うとその中から多くの気づきが生まれることだと思います。分析力、仮説構築力、プレゼン力などの個々の力が高まることはもちろんのこと、柔軟な視点の醸成やトータルの仕事力の向上にも有効です。
また、世の中で今、トレンドとなっているテーマ、それはTPPであっても人口減少であっても、タイのクーデターであったりするわけですが、そういう旬なテーマを、なぜそういう現象が起こっているのかをとりあげ、仲間にショートスピーチするということをやってみることもおすすめです。その過程で自分自身がわかっているつもりだったけれど、ぼんやりとしか理解していなかったり、自分のスタンスを明確にせずに事象だけをみていたりしていたことがはっきりとつかめます。そしてなぜその現象が起こっているかの説明だけでなく、次に自分はどうしていくのが正しいと思うのかということをスピーチしてみることです。
論理的は話ができないと聞き手のメンバーは意味がよくわからない話として伝わります。いわば「なりきり池上彰ゲーム」です。頭の体操にもとてもよいはずです。
変化が大きな時代です。当社の幹部は真面目で決まったことは忠実にはやっていくのだけれど、最近マンネリで困っています・・・というような話はよく出ます。ですが、これだけ変化が大きな時代ですから、経営幹部や戦略スタッフはより柔軟な思考と既成の思考の枠組みや業界の慣習、過去の成功事例にとらわれず、未来を描く力を持つことが重要です。そのためにはマーケティング千本ノックのようなマーケティング脳の育成取り組みが重要なことなのです。