今、全国の旅館・ホテル業界に激震が走っています。
それは、昨年の11月に国土交通省より出された改正耐震改修促進法によるものです。
まず、この法律の内容をみてください。
■改正耐震改修促進法
1981年以前の旧耐震基準で建てられ、
不特定多数の人が利用する大規模な建築物(病院、店舗、旅館、ホテルなどで3階以上かつ5,000平方メートル以上の建物)が対象。
まず、2015年末までの耐震診断を義務付ける。
2013年11月25日に施行。
診断結果は地方自治体が公表する。
施設側が診断結果を報告しなかったり、虚偽の報告をして行政の是正命令に従わなかったりした場合、100万円以下の罰金を科すことができる。
来年中にまず、耐震診断を受け、その状況を報告。
ちなみにこの耐震診断も値段が高く、1000万円を越す費用が必要となります。
ただし、地域によって差はあるものの、この診断費用のほとんどは補助金などでカバーできます。
問題は、耐震診断の後にあります。
1981年以前の建物の多くは、耐震に不備があるところが多く、
かなりの確率で耐震補強工事をしなければならないことが予想されます。
その工事を行わない旅館やホテルは、
地方自治体より名前が公表される=国から「あの旅館・ホテルは耐震がだめだから泊まるな」といわれるようなものです。
これは、人命のことを考えれば、仕方なしということですが、経営の観点から見ると大変なことです。
5000㎡以上となると旅館でいうと100室をこえる地域の大型旅館の部類に入るところほとんどが対象となります。
これらの旅館・ホテル業態は、設備投資産業であり、定期的に億単位の投資が必要になります。
そのため、多くが借入金に苦しんでいます。
その上、この耐震補強も下手をすると10億円ほどかかり(実際には補助金がでるがそれでも30~50%は自己負担が発生)、
さらに工事期間中、数週間から数ヶ月休業することになります。
それでなくても苦しい経営をしているところが多い中、
この法案により、廃業もしくはM&Aによる身売りをする旅館・ホテルが急増すると予想されます。
一方で格安旅館グループといわれるところが、そのような旅館を低価格で買い取り、
さらにチェーン化していく流れも加速することでしょう。
現在、私がお付き合いしている旅館も、この法案で大変です。
新たに金融機関に借入金の申し込みが必要となりますが、
それでなくとも借入金が多い中、金融機関も簡単にはお金を出してくれません。
2020年の東京オリンピックに向けて、インバウンドと呼ばれる外国人観光客が増える中、
何とか、日本が誇る宿泊産業を活性化していきたいものです。