「新規出店をしたいので店舗物件の情報を集めたい。しかし、不動産屋さんに依頼しても、なかなかいい物件情報が集まらず、決めきれないんです。」そのような声をよく耳にします。
そういう場合、こんな風に不動産屋さんに依頼していませんか?
「JR中央線の沿線で、立川とか国分寺とか、あっ、でもいい物件があったら吉祥寺や三鷹で情報くれませんか。賃料は、うーんといい立地だったらちょっと高くてもいいけど、できれば安いほうがよいよなあ。大きさは30坪程度がいいけど、多少大きくても小さくてもいいよ。フロアは1階がいいけど、上のほうや半地下でもいいかな。駐車場は近くにあったほうがいい。とにかく、いい物件の情報をいっぱい持ってきてよ。」
さて、あなたが不動産会社の人だったら、これで依頼主の求める物件情報を提供することができるでしょうか?
不動産会社で仲介を手がける営業マンにとっては、賃貸住居の仲介は早ければ数時間で成約に至ります。ところが、商業店舗というのはいくら物件情報を送っても、鍵をもらって現場に案内しても、なかなか決めてくれない。何日も何日も付き合わされたあげく、結局成約しない……
こういうケースが頻発します。
借り手は熱心であればあるほど多数の物件を見ては悩み、見ては悩みが続きます。仲介は、ずっとそれに付き合わされることになります。
そうです。不動産仲介にとっては、商業店舗仲介は、できれば「やりたくない仕事」なのです。
不動産会社の営業マンの身になって考えてみてください。仲介手数料は、賃料一か月分しかいただけません。30坪で坪1.5万円だとして45万円です。この作業に何日も何日もかけていては、割に合いません。これが住居だったら仲介手数料15万の案件を、うまくすれば一日に2~3件キャッチできます。あなたが営業マンだったら、どっちをやりたいでしょうか?(※貸主借主双方から手数料をいただける場合はこの倍になります)
不動産会社の仲介担当者はきっとこのように感じているでしょう。
「せめて、どこの駅にするか決めてほしいよなあ」
「面積は何坪がいいんだろう、多少大きくても小さくても、といってもどの程度までOKなんだろ」
「いい立地だったら高くても……って、いい立地ってどういう基準なんだろ」
「駐車場は近くって、どのくらい近くならいいんだろ」
「いい物件の情報って皆いうけど、なにをもっていい物件なんだろ。」
でも、仕事だから、まあいいやとせっせと情報をメールやFAXで送ります。何十軒、何百軒にもなります。FAX送信の手間も馬鹿になりません。そのうち、電話がかかってきます。
「いっぱい送ってくれたのはいいけど、こんな、だめな物件情報ばっかり送ってこないで、もっといい情報を送ってくれよ」
それでは仲介は困ります。
「いいとかだめとかって、なにが基準だろう。そもそも、手持ちの在庫物件しか情報を送ることはできないし、いっぱい送れっていうからいっぱい送ったのに……。」
そういうやりとりが何回かあったのち、不動産会社から情報はこなくなってしまいます。
ここまで読めば、もうお分かりでしょう。
求める物件のスペックを可能な限り「明確」にして情報収集を依頼しないと、
何百と情報を集めてもまともな物件はひとつあるかないか……ということも珍しくないのです。
ですので、物件情報を効果的に抽出するには、「対象エリア」「面積」「賃料」「フロア」「付帯条件」を、可能な限り絞り込んで依頼することがポイントです。
実際、物件条件を絞りきれないから困っている…という方も実際は多いのです。ここがブレブレだと結局失敗しますので、まずはここを絞り込めるように「自社の勝ち筋」について、しっかりと定義することが必要になります。
この定義がきちんとできるか否かが、不動産物件の効率的な情報収集に直結するわけです。弊社の業種別専門コンサルタントも、このような局面でお役に立つ機会も多いです。
過去25年にわたり、店舗開発のお手伝いを中心に、ショッピングセンター開発やチェーン店の出店コンサルティング、商業用不動産の物件評価などを手がけてきている経験からお伝えしました。