企業再生のデューデリなど、短期間で会社の現状を洗い出して整理し、業績向上策を練るといった作業を行った経験から強く感じることがあります。それは、関与先企業の人間関係や仕事の深いところを理解し、中身を見抜くということです。
例えば複数の幹部や現場スタッフにヒアリングするとします。その方たちは、会社全体のためにこれが必要だ、これが問題だということを語ります。しかし、それは本当に会社全体のために必要なことなのか?ご本人はそう思い込んでいるかもしれないが、それも果たして本当にそうなのかどうか。嘘をついたり、自分の都合のいい方向に誘導しようとしていないか。それも複数の人間が同じ勢力の中で口裏を合わせたかのように同じことを言っていたりはしないか。
我々や金融機関、投資家など外部関係者を利用して、自分たちの都合のいいように話をもっていこうとしていないか。決して仮想の話ではなく、実際にそのような事案をいくつも経験しています。一人の意見で惑わされることはあまりないかもしれませんが、これが複数の人間の話になると俄然重要性が高まってくる。とはいえ、その複数の人間が、同じ派閥でその都合だけを語っているとしたら…?
こういったケースで大事なのは、話は話として「全体最適解」なのかどうかを見抜くことではないかと思います。あの人がああいったから、こうなんだ、こうだから、ああなんだというほど経営は単純ではありません。そのためには、その事業の特性やボトルネック、権限の集中している部門や人物にフォーカスをあてながら、その発言の趣旨は自分の権益確保や拡大、地位向上につなげるためのものではないのか?という検証をしなければなりません。都合のいい話の裏側を見抜かねばならないのです。
大きな会社だけではなく、小さな会社でもこのようなことは日常茶飯事です。ましてや経営不振企業ほど、こういうことばかり考える人が増えやすい傾向にあります。会社の規模に関係なく、経営者を軸に社内が一体化していない組織はうまく機能しません。そういう組織ほど、各々の派閥の意見がさも正論であるかのように語られるものです。いろんな人に話を聞いた、どうやら皆が言うにはこういう話だ、だからこうしたらどうか…といった、簡単な解決だけでは大局を誤ることになりかねません。
「見抜く力」これを養うためには、人を疑うということではなく、その業界の深いところに精通したコンサルタントが、「全体最適解」を求めながら論点を整理して道筋を組み立てるということが大切になってきます。そして、本当のキーマンとなる人は、往々にしてきれいごとで自分をかっこよく見せるようなことをしない人である場合が多いです。