自社の社員の満足度調査や、働きがい調査など、従業員の気持ちを知る調査に取り組まれたことはありますでしょうか?私たち船井総研では、私たち自身の会社の状態を外部機関に客観的にチェックしてもらうことも、クライアント企業に対してそのような調査を提案・実施することも両方実行しています。
企業はヒトなりと言われます。「ヒトを伸ばし活かすこと=ヒトが輝く企業作り」を意識する事は企業成長を実現するうえで、必須の取り組みであるという意見を良識のある経営者の方は皆言われます。ところがアパレル業界においてはこのような積極的な意見を聞くことは稀です。
逆に「従業員教育に取り組まねばならないことはわかってはいるのだが、今はそれどころでではない」「とにかくパッと売上を上げてくれる従業員が欲しいのだが、なかなか最近はそういう人が少ない」「販売員はまず給料分だけ商品を売ってくれればよいのだ!難しい話はそれからだ!」というような話ばかりが横行しがちで、さながらブラック業界と言われてもしかたがないような水準です。
さらに多くのアパレル企業では、もともと服が大好きで業界にはいってものの、企画の人間以外で暖簾分け的に起業することはほぼ無理な環境ですし、人気の店舗で働いているという感覚もどんどん減少する中、ただただ客数不足、在庫状態に頭を悩まし予算に追われる毎日です。さらに飲食店のようにユニフォームの提供などもほとんどなく、販売スタッフは低賃金の中、自分の着用分を自費購入しなければならない環境であることもほとんどで、仕事の充実の前に生活に頭を悩ます環境です。
労働環境がアパレル業界以上に悪いと言われる飲食業界では人手不足、人材教育に危機感を持たざるをえない状況ですが、逆にこちらの業界の方が輝くヒト創りに成功している企業が多いようにも思います。その原因は飲食業界が自分たちの産業をヒューマンビジネスだと理解していることが大きいはずです。そして“わかりやすいサクセス”“手が届く距離にサクセス”が実際にあるからなのだと思います。
ヒトが集まる業界は賃金水準が勤労者全体の賃金水準の平均以上であることも重要ですが“業界と自分の夢があるか”“サクセスに向けてのシナリオを企業が用意しているかどうか”であると思います。飲食業界の場合、厳しい条件であっても“いつかは自分のお店を持ちたい”“とりあえず特殊な経験や技量を持っていなくても努力して仕事を覚えていけばそれなりに報われる”というようなイメージがあります。チームワークやモチベーションの向上に対して貪欲な取り組みをしている経営者もよく目にします。
生業的、家業的な経営の延長線上に見えるかもしれませんが体力的には厳しくとも確かに楽しさ感、猛烈に働いている感が現場にあるのです。アパレルは時としてデザインやセンスが良ければ利益はかってに生み出されるのだというようなムードに流されやすい業界です。飲食業にならい自分たちの会社はヒューマンビジネスに取り組む会社であると再定義し、夢が実現できる企業体質を作ろうと意識する事が大切なのだと思います。