企業における新規事業の立上に、これまで何度となく携わってきた。その中には、日本を代表する世界的企業も数社入っている。我々は、新規事業の依頼を受けたときに、当然ながら、以下をまず明確にする。
・新規事業における想定される市場規模とその将来予測
・その事業のKFS(成功要因の鍵)の明確化
・想定市場における競合企業や先行企業の状況とそのビジネスモデルのポイント
・想定される顧客層のニーズ明確化
・その市場をとりまく環境(法律、技術革新など)
そこで、問題になるのが、市場規模と最大に自社が獲得できた場合の売上高である。多くの企業において新規事業をしかける場合、これまでの経験でいうと、自社の売上の10%位を狙えるものが一つの目安になっているようである。例えば、船井総研は売上高が約100億円のため、新しいコンサルティング分野を立ち上げる場合、それは将来10億円位を狙えるコンサルマーケットか、というのがポイントとなる。これが1兆円の売上規模の場合、少なくとも500億円以上、できれば1000億円を将来狙える市場というのがポイント。
しかしながら、この世の中、例えば500億円を狙える市場は、どこまで存在するのだろうか。多くの企業における新規事業では、この規模で挫折をしているように思われるし、実際、私がご支援させていただいた大手企業の新規事業も、大半は目標とする売上規模に達することが計画段階で描けないため、せっかく人やお金をかけたプランも、簡単にボツにしてしまう。さすが大手といえばそれまでだが、実は、ここにヒントがある。例え今は小さな市場でもあっても将来的に化ける市場は結構存在する。そんな市場をベンチャー企業は上手にみつけて、最初は小さくとも気づくと大きくなっているということはよくある。
でも大手は、市場が大きいと分かった成熟期での参入が多く、その時にはすでに競争が激化しており、先行者メリットを享受できない状態で、結局、その事業を大きくするために、すでに先行している企業をM&Aにするという手法にでてしまう。ここでいいたいのは、市場規模は確かに大切であるが、あまりそれに目を奪われすぎるのも良くないということである。今、大きくなっている企業の創業は、みんな小さなマーケットから出発して、先行者メリットを享受して大きくなっているはずである。新規事業を考える場合、ここをもう一度考慮してほしい。