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台湾企業に学ぶ

9月10日付の日経新聞にインドでは地場ブランドのスマホが躍進しているという内容が伝えられた。「マイクロマックス」、「カルボン」といった地場ブランドが、サンムスンに次ぐ2位、3位のシェアを獲得しており、しかもそのシェアを伸ばしているとのこと。これらの地場ブランドは、中国製の電子部品を採用して、低コストで地場ブランドのスマホを販売しているとのことである。

インドは自国に電子部品産業が乏しく、ハードウェアのメーカーやEMSは自国資本で育っても、電子部品は輸入に依存しており、それがインドの貿易赤字を拡大させる一つの要因となっている。現在ELCINAをはじめとする業界団体の積極的な働きかけで外資誘致を始めたが、中国からの電子部品の輸入は引き続き増加しており、自国電子部品産業の成長にはまだまだ時間がかかるかも知れない。

さて、このインドに電子部品を供給している中国の電子部品メーカーは、言わずと知れた台湾資本である。そもそも、中国国内で電子部品を製造し、中国国内外に販売しているメーカーの多くが台湾資本の電子部品メーカーである。パソコン部品と周辺機器ではHonhai、Lite-on、Wistron、BenQ、Delta Electronics、Micro-Star、Mega-Byteなどがあり、半導体の前工程では、SMIC、GSMC、半導体ファウンドリーでは、TSMC、UMC、半導体の設計とパッケージではVIA、ACE、ASEなど、いずれも台湾資本の世界的な企業であり、すべての企業が中国に拠点を持ち、中国で生産活動をしている。

EMSとしてアップルなどの大手から製造を受託する企業もあれば、そういったEMSに部品を供給する企業もある。世界中のブランドから製造を受託し、規模を拡大して、スケールメリットを生かしてローコストで生産。新興国地場の新興メーカーにも電子部品を供給し、ますます他の追随を許さない実力を身につけていっている。

台湾の製造業の対中投資は、ほとんどの企業が黒字で、しかも、その収益は拡大しているとのことである。さらに中国の主要輸出企業のトップ10のほとんどが台湾資本企業。そして台湾は中国に対して貿易黒字。すでに中国の経済成長にとって台湾資本は欠かせない存在となっている。

台湾企業のグローバル展開の特徴として、原材料・部品などの中間財から、完成品、さらには製造に使用する生産財まで台湾企業同士でサプライチェーンを構築している。これは、上述のような電子部品に限らず、自動車部品でも同様である。また、現地調達先として、地場資本に優秀な企業があれば、自社だけでなく、他の台湾企業とも情報共有して、その地場資本企業を育てて、自分達のサプライチェーンに巻き込み、より台湾企業同士のサプライチェーンを強固なものにしている。

一方、日系企業はまだまだ台湾企業のような自国資本同士での相互補完的なグローバル戦略は構築できていない。中国や東南アジアに進出している電子部品メーカーや自動車部品メーカーも多いが、あくまで日系企業同士の関係は、サプライヤーとユーザーであったり、競合であったりしていて、台湾企業のような共存共栄の関係までを築き上げることはできていない。むしろ、最近の傾向として、日系企業の中国拠点やアジア拠点では、日本製ではなく、コストダウンのために台湾製や中国製の機械を積極的に購入することが多くなってきている。

中国市場で成長してきた台湾資本企業はいずれも委託加工企業である。中国の華南地域の輸出加工区のメリットと、かつて台湾の10分の1と言われていた人件費を活用して、世界中から生産を受託して規模を拡大してきた。そして、人件費の格差があまりなくなった今においては、圧倒的なスケールメリットと低コスト生産ノウハウを活用して、同地域にある他国資本の企業よりも、安価に製品を製造し、今度は、委託加工企業ではなく、メーカーとして、これから成長するであろう新興メーカーに対して製品供給を開始している。

これまでの日本企業のグローバルサプライチェーンは、大手ユーザー主導で構築されてきた。まず中国に進出して、ボリュームを取り込んできた台湾企業とは全く逆のアプローチである。日系の大手ユーザーが円高や、政治的な問題で苦しんでいる間は、日系企業のサプライチェーンも同じように苦しむことになった。一方で、台湾企業は、台湾企業同士でサプライチェーンを組んで、総合力で世界中から仕事を取ってきている。もちろん、それらの台湾企業の後ろで技術的な支援をしているのは、日本企業であり、台湾企業ががんばれば、日本企業にもなにかしらの形で恩恵が得られるような仕組みにはなっている。しかしいつまでも、台湾企業が日本企業とパートナーシップを持ち続けるとは限らない。

新興国が成長するこれからの時代において、日本企業も台湾企業の取り組み方から学んでいかなければならないかも知れない。