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アパレルの海外展開

アパレルという製品は、製造の仕方で縫製品とニット製品に大別される。縫製品は織物の生地を裁断して縫うことで衣類に仕立てるのに対して、ニットは生地ではなく糸を編み上げることによって衣類に仕立てる。

縫製とニットのそれぞれを取り入れ、成形せずに編んだカットソーもあり、またニットでも、一着丸ごとの状態で編み機から立体的に作り出されるホールガーメントニットもある。アパレルの生産技術は多様化し、それによりアパレルの種類も拡大している。

しかし、いずれにしてもアパレルはデザインさえ決まれば手作業と機械作業であり、生産コストにおける人件費の割合が高い。プラザ合意後の円高の影響もあり、生産がどんどん海外にシフトし、海外生産されたアパレル製品に対する参入障壁も決して高くなく、日本国内で消費されるニット製品は、どんどん海外製品に変わっていき、国内消費量の95%は海外生産品と言われているほどである。

その一方で、良い縫製製品、ニット製品を製造しようとすると、熟練の技術が必要になる。熟練の技術を身につけるためには、忍耐強い訓練が必要であり、地味な作業を繰り返し行うこと以外の方法はない。さらに元来日本人がもつ決め細やかな特性と手先の器用さも必要である。

人件費の安い国での生産により、低コストを主眼として大量生産されたアパレル製品と日本で伝統的に培われた技術で製造されたアパレル製品とは品質に雲泥の差があることが、再び注目されるようになってきている。

たとえば、子供服メーカーGYNは、すべての製品がMADE IN JAPANであることを証明したタグをつけて販売したところ、中国市場で爆発的な人気となり、中国製品の何倍もの値段であるにも関わらず売れている。また、今、海外のたくさんの有名ブランドが日本製のニット製品を使用はじめていることは有名である。

このように、アパレル製品の95%は海外に出て行ったが、国内市場で残った5%は今、日本市場で見直されているだけでなく、海外市場からも注目されているのである。

日本には、職人技術だけでなく、さらに、アパレルの原料から、染色、加工、洗い、製品まで一貫できる能力がある。また繊維素材に関しては、日本にはグローバル企業が揃っており、そういった企業がヒートテックのような新素材も生まれている。

そういった素材開発力、一貫してフォローできる能力、安定して生産できる生産技術、さらに他国にはできない職人技術に基づいて生産された、国内の多品種少量生産のアパレル製品が再び「日本ブランド」として世界で注目をされているのである。

衣食住は消費者に直結する産業であり、他の産業よりも時流を的確に捉えている。実は、アパレルだけでなく、日本食、それも「だし」といった日本独特の決め細やかな風味が世界市場で注目され始めている。日本の気密性の高い住宅も、海外で注目されている。

消費者が「エブリデーロープライス」になれたのか、節約疲れしたのか、それともグローバル化が進み嗜好が多様化したのが、あるいはネット社会の浸透で情報があふれ、競って他者よりもよい製品を求めるようになったためか、アジア新興国各国の一人あたりGDPが上がり、ぜいたく品を求めることができるような所得水準になったためか、いずれの理由か分からないが、世界の消費者が、大量生産された安価品よりも、多品種少量の日本の良品を求めるようになっている傾向があるのは間違いないようである。

アパレル企業をはじめとして、様々な業種で、海外で作って日本で売る、という発想から、日本で作って海外に売る、という発想に転換することが必要なタイミングではないかと思う。