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老いては子に従えるか

相続税の基礎控除が3千万円、法定相続人1人あたり600万円と大幅に減額(以前は基礎控除5千万円、法定相続人1人あたり1千万円)になり、資産を持っている多くの人が相続対策に関心を持つようになりました。例えば、妻、子供2人が法定相続人で賞味遺産額が8千万円の場合、これまでは無税でしたが平成27年以降は175万円の納税が必要になります。今までは影響がないと考えていた個人の方々も相続税に関心を示すようになったらしく、節税対策としての不動産活用の相談が増加傾向にあるそうです。
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個人の相続に関する関心が高まって行く一方、企業相続である「事業承継」はまだまだ遅れている状況になっています。特に、経営者一族の事業承継に関しては、受け継ぐもの、受け継がせるものの根本的な思いは同じはずなのに、いざその場になると各社各様ですが、最近のニュースでは「ジャパネットホールディングス」と「大塚家具」は、共に創業経営者の事業承継事例として取り上げられています。

ジャパネットホールディングスはテレビ通販大手のジャパネットたかたを傘下に置き、名物社長の高田明氏(66)が自ら宣伝マンを行う形式で急成長した会社です。高田明氏は今年の創立記念日の1月16日に合わせて長男に社長の座を譲られました。彼は「25年12月期(25年1~12月)決算の経常利益で過去最高益を更新できなければ社長を辞める」と宣言し、その目標を実現した経営者でもありますが、潔い引退に感銘を受けた方も多いのではないでしょうか。

一方、家具販売業界大手の大塚家具は、創業経営者と後継者の意見の食い違いが大きな波紋となってメディアを騒がせています。大塚家具は、昨年7月に創業者の長女である大塚久美子氏(47)が社長職を解任されて取締役となり、創業者で父親の大塚勝久会長(71)が社長を兼務していました。

結果的にはそれでも業績が回復せず、1月28日、大塚勝久代表取締役会長兼社長は代表取締役会長、大塚久美子取締役が代表取締役社長に復帰しました。その後2月13日に経営体制一新を発表し、大塚勝久氏は取締役から除外されていましたが、それを不服として全く異なる「株主提案」を提示、さらに2月17日には、彼の「株主提案」を会社として反対することを取締役会で決議したとの発表があり、「親子げんかで経営が混乱している」と報道されていました。

大塚勝久氏は、創業した家具販売店を会員制度などの手法を使ってジャスダック上場企業に育て上げた極めて優秀な経営者です。企業内の指揮者が2人いるようなスタイルになると混乱することは、ワンマン経営で企業を育て上げた方であれば当然理解しているはずです。それにも関わらず、業績不振に我慢ができない、自分の手で回復させたいという創業経営者の業が前に出てしまうと、黙っていられないものなのかも知れません。

ジャパネットホールディングスも、今後の状況によっては、創業経営者の業(ごう)で、長男のやり方に我慢できなくなって現場復帰するという可能性は否めません。「老いては子に従え」ということわざがありますが、創業経営者でこれを実践できる方は少ないのかも知れません。中小企業の事業承継が進まない原因も、このあたりにあるような気がします。

中野 靖織
株式会社船井総合研究所 上席コンサルタント
経営者・幹部様向け/2世育成のための経営戦略ノウハウ・事業承継
戦略の立案から展開、定着まで、経営全般にわたり幅広いコンサルティングフィールドを持つ。主にコンシューマー向け企業の現場における具体的な活性化業務に従事し、メーカーの営業戦略立案、展開サポートに多くの成功事例をもっている。 JRCA登録QMS審査員補。