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世代交代を迎える中小企業の抱える問題

日本の企業数は、平成9年をピークに10年以上減少傾向にあります。

バブル崩壊をきっかけに減少していますが、減少要因のひとつに世代交代(事業承継)がうまくいっていないことがあると考えています。

数年にわたり、あるメーカーの系列販売店の後継者育成をお手伝いさせていただいております。この販売店は、ピーク時には全国に1万店以上存在しましたので、現在のセブンイレブンと同程度の店舗数があったと言えますが、後継者が事業を承継できる店舗はわずか1割弱とみられています。

この販売店は1970年代に急速に増加しました。メーカーと互助関係を保ちながら、地道な顧客づくりを継続し、製品販売のみならずアフターメンテナンスもできる、地域に根ざした店を確立してきました。

しかし30年以上経過し、高度成長期に大量に創業した世代が60歳以上となり、引退を検討する時期になりましたが、後継者が育っておらず、世代交代の準備ができていないため、創業者がいなくなると廃業を選択せざるをえなくなっています。

このうち、後継者が事業承継をする意欲のある店舗に対し、代表者交代に向けた準備をお手伝いさせていただいているわけですが、世代交代の難しさが浮き彫りになってきました。

ほとんどの販売店が中小企業で、創業者のご子息が事業を承継します。創業者の先代は、何もない状態から店舗を構え、長年のお客様づくりをし、資産を作ってきました。競争環境も現在ほど厳しくなく、待っていれば売れる時代を経験してきたところもあります。一方後継者の時代は、良くも悪くも会社が存在します。先代のごひいきのお客様は、3割引き継げれば良い方ですので、新たなお客様を増やしていかなければなりません。

資産については、蓄えがあり良好な状態の場合もあれば、負の遺産からスタートを切らなければならない場合もあります。これまで扱ってきた商材が売れるとも限りません。いずれにせよ、先代が作り上げたものを引き継ぎ、新たな顧客・資産を作り、経営を継続していかなければなりません。

また中小企業の場合、経営者の意思決定権限が強いですので、リスクの高い商習慣やコスト構造を引きずる可能性もあります。この販売店では、掛売りやアフターメンテナンスを無償で行っている店舗が非常に多いです。後継者の時代には、これらの商習慣をリセットする必要があります。
このように後継者は、会社が存在する状態がスタート地点となるため、先代とは異なる難しさを抱えています。良い経営は引き継ぎ、改善が必要な経営は変えていかなければなりません。そのためにも創業者の目の黒いうちに自社の真実の財務状況を後継者に伝え、お互いに経営者の目線で会社をつぶさないためにはどうしたらよいかを話し合っておくべきです。

生臭い話であり、なかなか話し合う機会を作れない会社が多いですが、お手伝いをさせていただいている販売店では、このような経営の話を先代と後継者できちんとできている会社が事業を承継できています。

事業承継は短期的にはできません。創業者は健全なうちに会長職に退き、後継者と代表交代し、ともに経営をする期間を作り、段階的に後継者に受け渡すことをお考えいただければと思います。
(この記事は2009年10月26日に初掲載されたものです。)