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どちらを選ぶ?「多角化」それとも「選択と集中」?!その②

前回は、1つの企業の事例に「選択と集中」に誇りを持つ企業を大局的に見ると、低リスクで機会が転がっている例を挙げた。では、何故、多角化が敬遠されるのか?一般的に、話題性のあった多角化(コングロマリット)ディスカウントを気にしているからではないだろうか。そして、「選択と集中」の方が、効率良い。一般的にはそう思うであろう。しかし、本業によっては一概にそうではないことを前回の事例でもお伝えした。

そもそも、多角化ディスカウントとは何か?多角化の経済合理性は、企業の中に複数の事業を持つことにより、事業がそれぞれ独立して活動する時よりも大きな価値を生み出す正のシナジー効果にあるが、多角化ディスカウントとは、株式市場がそれを評価していないことにより起こり得る、企業価値を実際よりも低く評価される現象である。2000年の新会計基準の導入、外部モニタリング機能の強化、多角化ディスカウント解消のための各企業の取り組みなどで、多角化ディスカウントは解消されつつあるようだが、依然、多角化が進展するほど企業価値(株価)が低く評価されることを実証する論文は多い。

なぜ、多角化企業は株式市場に評価されないのか?その原因は、株式市場内における多角化企業の事業の透明性ではないかと考え、外部モニタリング機能が比較的強く働く上場子会社売却の事例をサンプルに、親会社において多角化ディスカウントが起こっているのかを研究したことがある(吉岡郁栄,2009年)。結果、上場子会社売却行為は、売却後、売り手(上場親会社)の株主価値に負の影響を与えることが観察された。つまり、多角化ディスカウントが起こっていなかったことが証明され、これまであったシナジー効果の毀損を株式市場が評価したことになる。

この研究は、サンプル数が少なく定量的に観察できていないため、あくまで1つの推計であり、更なる研究が必要ではあるが、企業と株式市場間の透明性が多角化ディスカウントを解消するひとつの可能性であることを示唆している。また、牛島 辰男氏(2014年、青山学院大学国際マネジメント研究科教授)は、「多角化と組織構造は企業価値にどう影響するか」の中で、多角化による複雑な組織構造、および分社化を進めることが企業価値の低下をもたらすことを示唆している。

つまり、多角化ディスカウントとは、多角化により事業、組織が複雑化することにより、内外に対しての情報が不透明になることが要因の一つで起こる可能性が高い。そもそも、株式市場の評価を気にする必要のない未上場企業様にとっては「多角化ディスカウント」など関係のない話なのだが、共通する重要な点は、社内(事業間、組織間)での情報の透明性と、より利益率を上げるための事業ポートフォリオのあるべき姿を全社員で共有されている事ではないだろうか。