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コンサルティング脳の使い方(10)~新規事業の展開パターン~

今回は新規事業の展開パターンについてお伝えする。ここ数年、新規事業に関する問い合わせが増えてきている。依頼内容は様々だ。既に新規事業の内容が決まっていて、その事業の市場規模を算出したうえでシェア目標を決めて事業計画を作成する場合もあれば、新規事業の内容をこれから決める場合もある。コンサルティング会社としては、当然、前者の方が支援しやすい。

いずれの場合も「既存事業とのシナジー」を意識するケースが目立つ。企業は一般的に事業の効率性を求めるので、ワンソース・マルチユースの発想で既存事業の経営資源を活用することを望む。この考え方は間違っていないし、新規事業を展開する際にはどの企業も既存事業にプラスに働く効果を望むのは当たり前である。しかし、新規事業を考える際に、「既存事業とのシナジー」というキーワードに縛られ過ぎない方が良い。

むしろ、「既存事業の市場を侵食する新規事業の展開パターン」を考えるケースも多い。なぜなら、新規事業の立ち上げを考えなければならない状況というのは、既存事業が縮小しつつあるから新規事業を立ち上げるわけで、既存事業へのプラス効果だのシナジーだの考えても意味がないからだ。

また、新規事業単独で収益をあげるビジネスモデルを考えるべきで、既存事業とのシナジーによるプラス効果を見込むのは、楽観的にビジネスモデルを構築することになる。新規事業を考える際には副産物を期待すべきではないということである。では「既存事業の市場を侵食する新規事業の展開パターン」とはどのようなパターンか。

例えば、多店舗展開する小売業の企業がネット通販を展開するケース。ネット通販は店頭売上を確実に侵食するが、今となってはどの企業も当たり前のように展開している。恐らく、ネット通販参入の構想段階では、店頭販売額の縮小を危惧する社内意見もあったに違いない。しかし、既存事業を侵食しても、新規事業の市場拡大スピードが速ければ良いし、利益率が既存事業よりも高ければ良いのである。

食品メーカーが展開するPB商品の開発も同じであろう。PB商品を販売すれば自社のNB商品は売れなくなるが、競合メーカーに市場を侵食されるよりはマシだ。既存事業の市場の侵食を恐れずに新規事業の展開を推進しなければならないのは事業会社に限らず、我々コンサルティング会社にも当てはまる。

例えば、これまでコンサルタントという「人」を介して顧客企業に提供していたサービスやノウハウの一部は、テクノロジーを駆使すれば、わざわざ「人」を介さなくても良いケースもある。我々も顧客企業のオペレーション改善のための学習アプリや、コンサルタントの代役になりうる顧客企業の社内ファシリテーターを育成するための学習アプリを開発しているが、これは既存のコンサルティングサービスを侵食するものである。

同じ業界の企業が集まる勉強会でのノウハウ共有の仕組みも、ネット上のコミュニティを組成する業者が増えれば、コンサルタントによるノウハウ提供や成功事例の紹介は必要なくなるかもしれない。競合が自社の今の立ち位置に追いつく頃には、自社は更に先を走っている。競合との差別化ではなく、競合をはるか後方に置き去りにする。こういったポジションを築くためにも、「新規事業による既存事業の創造的破壊」が企業にとって必要なのである。

濱野 雄介
船井総合研究所 プロジェクトマネージャー