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新規マンション開発に代わり、“魅力的な事業”へ! 「不動産管理ビジネス」に高まる期待と将来性

今、住宅・不動産業界の中で、不動産管理ビジネスが注目されている。
住宅の新たな供給が先細りするなか、
既存の住宅の価値を活かす「不動産ストックビジネス」として、
賃貸管理業、分譲マンション管理業などに対する将来性、ビジネスモデルの発展性に期待が集まっているのだ。

■ なぜこれまで不動産管理業界は“魅力的な業界”ではなかったか
しかし、これまで不動産管理業界は、それほど魅力的な業界とはいえなかった。
その主な理由としては以下の2つが挙げられる。

[1]業界トップ層に位置づけられる主要な企業の多くが、親会社からの供給、すなわち系列による受託という構造がスタンダードとなっており、純然たる市場競争が行なわれにくい環境にあった

[2]提供するサービスそのものが、清掃や設備のメンテナンス、管理員の派遣といった契約で決まった内容を漏れなく愚直にこなすというモデルであり、極めて労働集約的かつ差別化がされにくい業界であった

もちろん、これらの裏返しとして、安定的な競争環境、安定的なキャッシュフローの獲得という点が、本業界の最大の強みであるとも言える。
しかし成長性や収益性の観点から見れば、今ひとつ物足りないことに加え、
特殊な競争環境による弊害として新たなイノベーションやサービスが生まれにくいという弱みもこれまで指摘され続けてきた。

業界全体を俯瞰すると、賃貸管理市場、分譲マンション管理市場のいずれにおいても、
大手上位数社による寡占化の傾向はあるものの、1社単独の市場シェアは極めて低く、
トップシェアでもその割合は10%にも満たない(そもそも賃貸管理市場については、
管理会社に委託する賃貸住宅は全賃貸住宅のおよそ半分程度)。

これらの業界は、小さなプレイヤーのクラスターで、大きなプレイヤーが存在しにくく、
市場シェアの大部分や主要技術を占有する企業がない「市場分散型業界」の典型といえよう。

一方で不動産管理ビジネスは「規模の経済性効果」を追求するべき事業でもある。
すなわち、管理戸数、管理棟数が増大することによって、生産性が向上し、
戸あたりや棟あたりに配賦されるコストが低減されるという考え方である。

そうだとすれば、本来、管理業界は「集約と統合」を繰り返し、
今以上に規模の経済を実現できるスケールをもった企業(例えば業界シェア25%を超える企業の存在)があらわれていてもおかしくはないはずだ。
しかしながら、それは図らずも前述の系列による実質的な競争制限が業界内で発生しており、
そのような状態には至っていない。

このような実質的な競争制限は、結果的に市場の効率化を阻害し、
業界全体としてみた場合のサービスを提供する側の利潤と、
受ける側の満足度(価格に対して得られる価値)の合計を最大化する点において、むしろマイナス要因として捉えられる。

■ 新規マンション開発の先細り、資産デフレ…。内外要因で高まる不動産ビジネスへの期待

ところが、冒頭で述べたように、かつては「それほど魅力的ではない」とされていた不動産管理ビジネスが、
次の内的・外的な2つの要因によって、今、あらためて注目されつつある。

[1]管理会社を含む大手不動産グループにおいて、これまで主力であった賃貸マンション開発や分譲マンション開発といった新規フローのビジネスの先細りが明らかになってきた

[2]バブル崩壊後、長期のデフレに苦しむわが国おいて、不動産の持ち手の管理に対する意識や要望が変化してきた

1つ目は内的要因である。前述のとおり不動産管理業におけるトップ集団は主に大手不動産グループの一事業セグメントである場合が多い。
開発セグメントが新規に開発した不動産を管理セグメントが受託管理する。

そうすることによってグループとしてマンション事業における入り口から出口までのバリューチェーンを網羅し、
長期に収益を最大化させるというのが狙いである。

とはいうものの、やはり開発事業の売上や利益の規模はグループ内において圧倒的に大きく、
何より右肩上がりの時代においてはその持続的な成長性が非常に魅力的であったといえる。

しかし、言うまでもなく、昨今のわが国における人口減少、世帯数の伸び率低下、過剰な住宅供給(空き家率の上昇)等により、
新規開発事業においては明らかにネガティブな中長期トレンドが顕在化し始めている。

それにより、各社とも、これまで開発してきた既存の不動産に対する管理に加え、
日々の生活の中から生まれる派生的なビジネス、或いは修繕やその先の建替え需要の獲得といった、
不動産ストックビジネスに注力、強化せざるを得ない環境が生まれている。

さらに2つ目の外的要因もこれらの動きに拍車をかけている。
バブル崩壊後、資産デフレが進む中、
不動産を保有する目的がキャピタルゲイン(資産を売却したときに得られる差益)重視からインカムゲイン(資産を手放さずに安定的・継続的に得られる収益)重視に移りつつある。
経済成長が右肩上がりで期待インフレ率が高い時代は、
不動産を将来高く売却することによって得られる利益に注目が集まっていた。

しかし、バブル崩壊以降のデフレ経済下においてはむしろ不動産の価値は目減りするものという前提のもと、
インカムゲインを重視する傾向が強まっている。
インカムゲイン、すなわち毎月の安定的な賃料を獲得する為には、
日々の管理や客付けは非常に重要な視点となってくる。

分譲マンションにおいても、資産デフレが進むなか、
例えば将来売却する際の価値をできるだけ低減させないという視点において、
管理の重要性は以前と比較して、より高まっている。

■ 「暗黙的談合」から「競争激化」へ。価格、サービスの面から顧客にはメリットも
このような内的・外的環境の変化により、ここ数年不動産管理業界も大きな変革を余儀なくされている。

まず、業界内競争が激化し始めている点が挙げられる。
つまり、これまでの系列による「暗黙的談合」状態が解消され、
既存物件に対する管理会社の切替営業(リプレース営業)が拡大しつつある。

この変化の直接的な要因は、いうまでもなく本業界における「暗黙的談合」状態を可能にさせていたゲームのルールの前提条件、
すなわち「系列による安定的な新規供給」が破綻したためである。
各社とも他社管理物件の獲得に対し、専属の営業部門を組織化し、自社への切替営業を強化している。

このような競争は「安かろう悪かろう」という安易な価格競争に陥る可能性も否定はできないが、
これまでの業界の特殊な競争環境によって価格、サービス、質の差別化がなされにくかった事情を踏まえると、
少なくともサービスを受ける側からの立場で見れば、むしろ歓迎すべき点が多いといえるだろう。

あわせて顧客の管理会社に求める要望も多様化・高度化し始めている。
インカムゲインを重視せざるを得ない時代背景の中で、
もはや「管理」は単なる管理員の派遣や清掃業務、設備メンテナンスといったハード面の保全ビジネスのみとは質を異にするようになった。
より資産価値という視点、より長期的な視点、より不動産に関する幅広い視点が必要になってきたといえるだろう。

■ 「安定的な新規供給」から「ストック事業」の強化へ。求められる人材像、役割も変化すべき
以上のような現状を踏まえて、これから求められる不動産管理ビジネスの新たなモデルについて提言してみたい。

[1]不動産グループ全体として「管理セグメント」を中心に据えたストックに対するワンストップソリューシ ョンモデルの構築

[2]1を踏まえた人材育成、組織等のマネジメントモデルの構築

前述のとおり、不動産事業はこれまで開発、つまり新しいものを建てることを中心に業界全体が成長・発展してきた。
管理をはじめとするその他の事業(仲介やリフォーム)はあくまでも開発のアフターフォロー的な役割であり、
その存在価値としては積極的な収益獲得というよりは、
グループとしての「収益の取りこぼしを防止する」という側面が、
その主なインセンティブであったように思われる。

しかしながら、今後は、少なくとも国内市場においては、ストックを中心に不動産ビジネス全体を構築せざるを得ず、
日常的かつ長期的に不動産と接する「不動産管理事業」の役割は想像以上に大きい。

既存の不動産から派生するあらゆるビジネスチャンス、
すなわち売買の際の仲介、専有部のリフォーム、修繕、建て替え、
入居者への各種サービスの提供等は全て管理事業をプラットフォームに据えて、
積極的に獲得する体制をグループ全体として構築しなければならない。

これは不動産管理会社単独の動きのみならず、不動産グループとしてのセグメント体制の改革が必要不可欠であり、
言葉だけでない本当の「ストック事業強化」に移行できるかが大きなポイントとなる。

そうなると次に、不動産管理会社にはこのような視点を前提としたマネジメントモデルの構築が必要不可欠になるだろう。
例えば、求められる人材モデル1つをみてもこれまでは「決められたことを漏れなく愚直にこなし続ける真面目さ」が重視されていたものから、
「総合的に不動産の価値を高める施策を創造し提案できる」という視点が求められる。

また、これに伴い、評価制度や人事考課の仕組みにおいても変化が求められるだろう。
これまでは「管理」というものがどうしても定量的に評価しにくいという事情もあり、
評価の源泉は常に定性的なものに依存せざるを得ないという特徴があった。
しかし、今後は不動産ストックビジネスにおけるプラットフォームの役割が増えれば増えるほど、
定量的な評価の側面も色濃く出る可能性も高い。

このように、求める人材像の変化や求める役割、それによる評価の変化は、
当然に企業全体のマネジメントモデルの改革を余儀なくさせるであろう。
そして、優秀な人材を獲得し、教育と評価によって高いモチベーションを維持させながら、
企業全体としての成長性を高める新たなマネジメントモデルの構築が必要不可欠決になる。

よく欧米では、不動産を扱うプロは日本に比べ、その社会的地位や評価が非常に高いと言われている。
それはひとえに「ストック重視」の視点が強い市場において、
管理担当者(プロパティマネージャー)の手腕を発揮する機会が多いことがその背景にある。

わが国においても、「選択の余地なく」という事情はあるにせよ、まさに「ストック重視」の時代が始まった。
個人的にも、管理事業の新たなイノベーションは今後の日本の不動産市場全体を変える力を持っているとさえ思うほど、
この業界に対する期待は大きい。

今後も引き続き、不動産管理業界の革新的な動きに注目していきたい。

(出典:ダイヤモンド・オンライン