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アパレル大不況の原因を理解し、現状打破するためのヒント【3】

■日本のアパレル市場に対するトップの勘違い・幹部の勘違い

カッコよさに対する意識が変化する中、日本の総合アパレル企業は毎シーズン、毎シーズン、トレンドを追いかけ、トレンドを提案し服を次々と企画・仕入れし売ってきた。自動車や家電商品などの耐久消費財では平均的な“買い替えサイクル”が存在する。しかし今のファッション商品の買い替えサイクルは非常に短い。トレンドを追いかければ追いかけるほど、1~2シーズンで寿命は無くなっていく。タンスの中はワードローブでいっぱいなところに更に商品を売り込むわけだから今や一般的なアパレル商品は“消耗品”的な消費財だと捉えるのが正しいのだろう。

次に日本では9兆円のアパレル市場はラグジュアリー、トレンド、マス・ボリュームに3つにわけて今の状況を考えて見よう。ハイエンドに位置し市場規模2015年で1,8兆円程度と予測されるラグジュアリーのゾーンでは海外ラグジュアリー大御所ブランドやファクトリーブランド・セレクト系ブランドが、他社では真似のできない圧倒的なブランドストーリーを作って高付加価値を提供する。そこにはトレンドが加味されている、いないに関わらず時代を超えた普遍的な自分たちの目指すスタイルが存在しているという存在感たっぷりのイメージがある。それは「これこそが自分たちの服だ」「あんな商品は絶対に扱わない」という信念が市場に伝わった状態と言って良い。

対してローエンドに位置するマス・ボリュームに引っかかる部分4.5兆円の部分は昔は問屋系商品、量販平場無名ブランド商品が闊歩していたが、現在ではファストファッション系ブランドが大きな需要を押さえている。すでに国内ユニクロ売上高だけで7,800億円なのだから、この部分の17%程度を押さえているといってよく、他にH&M、GAP、GU、しまむら、フォーエバー21、無印良品、伝統的紙通販ブランドなど上位10ブランド程度が大きな売上高を有して寡占化と言っても良いような状況さえ生まれてきているのである。ファストファッションには“オシャレなスタイルがある・ない”に関わらず抜群のコストパフォーマンスが存在するし、そこには軽めな「ソコソコいいでしょ」という時代の空気感も感じら消費者の確かな支持を集めている。

問題は中間に位置する2.7兆円程度の規模まで市場が縮小したトレンドのゾーンである。顧客をセグメントし「こんな人には今、こういう商品が良いでしょ」「今、来ているのはコレじゃないですか」という部分をファッション誌などと連携して提案していくというスタイルを90年代以降急増したショッピングモールを主戦場に販売してきた企業が多い。しかしショッピングモール同士の競合激化、ブランド店舗数の飽和が原因となり、アパレル企業の店舗はさながら大型店はファミリーレストラン、中小型店は全国チェーンの飲食店のように当たり障りのない味付けの存在となってしまった。

敷居の低い物件に敷居の低い店舗を作って拡販したのだから、仕方がないといえば仕方がないがメニューも味付けも一般的な食べやすい状態に陥り、狭い世界でライバル企業と日々食ったり食われたりの売上高競争に明け暮れる状況を創りだしてしまっている。さらにこのゾーンは紙通販企業では攻略が難しかったところだがネット通販企業がやすやすと侵食してきている。全国・全世界を簡単にターゲットとできるWEBの怖さである。

このように狭いゾーンで多くの企業、押し競饅頭している市場では体力が乏しい企業から淘汰されていく。理論的には総花的なMD強化では勝ち残れることは難しく、まずは一品、次に一品と売れて儲かるしっかりとしたモノ作りを行っていくことが重要だろう。ここでの基準は船井流の競争戦略で考えればユニクロ、GAP、H&M以上の付加価値、価格が1.3倍ならその付加価値は1.7倍(ユニクロで1980円ならば当社は2600円だけど3400円ぐらいの付加価値を自社は提供)、価格が1.7倍クラスならその付加価値は3倍(ユニクロで1980円ならば当社は3400円だけど5800円ぐらいの付加価値を自社は提供)と感じられるぐらいの思い切ったMD戦略をブランド企業が採用する必要があるということでもある。

価格は利益を押さえて少し高いぐらいに設定して、品質はファストファッションとさして変わらない状態では勝ち残りは難しい。ブランド全体の活性化は急には難しくとも戦略的に生産ロットを一定量確保してお値打ちなしっかりとした企画をまずは一品行うことが重要ではないかと最近、つくづく思うのである。それが嫌ならファッションの味付けを強めに打ち出しながらファストファッション系のマス・ボリュームに降りていくしかないはずと考えられるのである。

岡 聡
株式会社船井総合研究所 執行役員 上席コンサルタント
経営者・幹部様向け/流通業(メーカー・卸・小売)向け
入社以来、アパレルメーカーでの企画・製造・小売の総合的な知識に船井流マーケティングをドッキングさせ、ドラッグストア、ホームセンター、商業施設・商店街、食品スーパーなどの小売業の活性化、メーカー戦略、ブランド開発、商品開発、チャネル開発、新業態開発、営業部隊活性化、本社戦略・営業システム開発、マーケティング教育などをトータルに企画・コーディネートし、企業の経営企画をサポートしています。(経済産業大臣登録 中小企業診断士。日本商工会議所・全国商工会連合会 1級販売士。)