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地域ブランド作りの舞台裏シリーズ【7】 「まちおこしテーマの設定」

地方創生が話題になっている昨今、多くの地域がブランド作りにチャレンジできる素地ができはじめました。しかし地域のブランド作りにはある程度の手順があります。前回は資源の選び方をお伝えしましたが、選んだ資源を価値に変えていかなければ地域のブランドをつくることはできません。ただ、価値といっても文化的、社会的、経済的と様々です。そこで今回は私が得意とする経済的価値=お金に換える、というお話をしていきましょう。一般的には地域資源を選んだ後は、それらを商品化し販売することで経済価値=お金に変えるというやり方が取られます。

ただ気をつけなければいけないのはこの「商品化」という方法にポイントがあり、ポイントを外すと成功は望めないという点です。私も仕事で様々な地域を訪れますが同じような資源、同じような人、同じように取り組んでいるのに結果に大きな差が出ているケースをよく見ます。特にその差は商品の「テーマ設定」によって生まれてきます。では、どのようにテーマを選べばいいのでしょうか。今日はそのポイントである「テーマ設定」についてお話をしていきましょう。

■事例 黒壁長浜 のテーマ設定
例えば、地域ブランド化に成功している事例の一つに滋賀県長浜市の駅前商店街で展開された「黒壁長浜」という事例があります。この地域では、郊外の大型ショッピングセンターやナショナルチェーンに押されがちであった駅近くの商店街が、古い町並みを活かして観光型商店街に衣替えをしています。現在は毎年200万を超える来場者を迎えており、長浜というまちを一気に全国区へ押し上げました。

この成功の裏側には多くの要因がありますが、間違いなくその一つとして挙げられるのがテーマ設定です。長浜は「黒壁」と呼ばれる町の中心に位置する古い建物に「ガラス」というテーマを付加しており、初期段階では特に大きな起爆剤となりました。特に黒壁を多く訪れている中高年の女性層とガラスというテーマの親和性は高く、何度も訪れているリピーターも多くいます。

ところで、「黒壁」という建物に設定された「ガラス」というテーマですが、実は取り組み当初は設定されておらず、一時は地域で出土した貝殻などを飾ろうという案もあったそうです。もしこのアイデアが採用されていたとしたら、おそらく現在の長浜はなかったかもしれません。それほどにテーマ設定は重要と言えるのです。

■視点は3つ!「市場」、「競合」、「自社」
ではどのようにテーマを選べばよいのでしょうか。様々な方法が挙げられますが、今回は一般的にマーケティングの分野で基本と言われている「3つの視点」をご紹介しましょう。ちなみに3つの視点は、以下のようにそれぞれの英語の頭文字をとって「3C」という言われ方をされています。

 自社の視点 ⇒ Company
 競合の視点 ⇒ Competitor
 市場の支店 ⇒ Customer

それでは、先ほどの長浜の事例でお話しましょう。
一つ目の視点は、市場の視点です。まず長浜ではブランド化のテーマを決めるに当たり、様々な先進地域の事例を見たそうです。その中で、ある地域でガラスと観光の親和性が高いことに気がつきました。この気付きが市場の視点=Customer に当たります。つまり、お客様に支持されている分野は何かを把握するという視点になります。

二つ目の視点は、競合の視点です。ガラスというテーマが良かったとしても、もしもすぐ近くの地域にガラスで日本一のまちおこしをしている施設などがあればどうでしょうか。おそらく注目や認知度は一気に下がるでしょう。一方、ガラスでまちおこしをしている地域が少なければ、大いに注目されます。これが周りをしっかり知るための競合の視点=Competitor となります。

三つ目の視点が、自社の視点です。実はこの視点が最も大事になるのですが、いくらお客様に支持され、競合がいない視点でも、地域とは何の関連もないテーマであればなかなか成功することはできません。自社の視点では、設定したテーマで本当に地域の資源を活用できるかを探る必要があります。

長浜の事例でお話しすると「黒壁」という建物は明治に建設された建物でガラスという洋風文化に適合します。また長浜という地域そのものが、安土桃山時代という南蛮文化を多くとりいれた時代の英雄 豊臣秀吉という人物が治めた地域でもありました。その点でガラスは地域へのなじみも悪くなかったのです。このように自社の視点=Companyでは本当に地域の資源と合致するかどうか、特にその地域の人々が本気で取り組めるかどうかを判断する視点が大切になります。

多くの地域ブランド化の事例をみると、この三つの視点を抑えてテーマ設定を行っている地域がしっかりと成功していると判断できます。ぜひ皆様の地域でもこの三つの視点を活用して地域活性化に取り組んでください。

杤尾 圭亮
株式会社船井総合研究所 プロジェクトマネジャー
経済産業省認定 中小企業診断士
総務省認定 地域再生マネージャー(平成22年度)
総務省認定 地域創造アドバイザー(平成23年度)

2004年慶應義塾大学 大学院 政策・メディア研究科 修了後、船井総合研究所に入所。入所後から一貫して地域再生を志し専門部署「パブリック・イノベーションチーム」を設立。自治体、商工会議所などの公的機関に対するコンサルティングを行っている。得意分野は地域を含めた特産品等から創めるブランド化。おおむね5~10年間 地域にかかわりながら徐々に地域ブランドを進める手法を採用する。

【公式Web】地域ブランド創造:http://www.machiokoshi.net
【ブログ】地域活性化コンサルタント日記:http://blog.livedoor.jp/keisuketochio/