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2012年の消費トレンドは参加と体験! カップヌードルミュージアムが人を集める理由

2011年3月11日に発生した東日本大震災から1年が経ち、企業や消費者をとりまく環境は大きく変化しています。
特に、「消費」については、消費者の心理や志向の変化について行けず、集客に苦しんでいる店や施設もまだ多いのが現実です。

このような状況で、抜群の集客力を誇る施設を先日、見学してきました。
それが日清食品の「CUPNOODLES MUSEUM(カップヌードルミュージアム)」です。
同館がお客様に支持されている理由と、その背景から見えてくる今の消費スタイルを考えてみたいと思います。

■ 新しい消費スタイル

3.11以降に世の中に出現し始めた消費スタイルを、私は下記の6つにまとめています。

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(参照:「丸の内ではたらく情熱コンサルタントのブログ」。上記1~5に関連する事柄についてはブログにまとめています)

すべてが重要なキーワードなのですが、今回は6番目の「参加型・共感型消費」に注目したいと思います。

■ 参加型・共感型消費とは

今の消費者は何かに参加したい、共感したいという欲求を強く持っています。

消費者は高度成長期のように、モノを購入することで得られる感動や興奮はまだ感じます。
しかし、消費者はもっと経営に関わったり、店づくりに関わったりなど、
今までは売り手だけが知る世界に入り込みたいと思い始めているのです。
経営のプロセス、商売の過程に消費者が入り込み始めたとも言える状況です。

その証拠に、企業のバックヤードツアーが流行したり、
動物園でも飼育係しか入れないバックヤードツアーが予約殺到の人気になっています。
「実際のところどうなっているのか?」という裏を見せる、
カラクリを紹介するものが消費者の心を掴むような時代になってきたのです。

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■ オリジナルヌードルを作れる喜び

日清食品のカップヌードルミュージアムは消費者を製造工程に参加させ、
オリジナル商品を作れるのと同時に、その会社のファンにしてしまうような施設です。

同社はこの施設の運営を通じて、企業理念を消費者に浸透させつつ、
今まで以上に消費者との接点を強化することを目指しています。
つまり、施設をブランディングの発信拠点にしているのです。
小さいお子さんを連れた若いママ達に大人気で、まるで“聖地”のような場所となっています。

「CUPNOODLES MUSEUM(カップヌードルミュージアム)」は2011年に横浜に開業した、
同社を代表する商品であるカップヌードルを主テーマにした企業博物館です。

オープンして以来、2012年の2月までで来館者総数が50万人を超えています。
現在でも月に10万人ペースは変わらず、年間120万人集客する企業ミュージアムとなります。
なぜこれほどまでに人気なのか。そしてその狙いとはいったい何なのでしょうか。

カップヌードルミュージアムの正式名称は、安藤百福発明記念館と言います。
日清食品の創業者であり、世界で初めてインスタントラーメンを開発した方です。
安藤さんを支えていた信条とも言うべき言葉が「Creative Thinking」。「創造的思考」です。

すべての子どもたちの中にある創造力や探求心を見つけて育てたい――。
これがコンセプトで、それを実現するための施設なのです。

同施設の一番の目玉は、自分だけの「オリジナルインスタントラーメンを作る体験ができる」という点です。
ひとつは「チキンラーメンファクトリー」。
もうひとつは「マイカップヌードルファクトリー」。
チキンラーメンファクトリーはスペースの関係上、一日に360人が限界とのことで予約は3ヵ月先まで満杯という人気です。
カップヌードルも1日3000個が限界のため、土日は順番待ちをしても体験することができない時もあるそうです。
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チキンラーメンは粉を練って製麺機に通して、麺を作って味付けして、
それをスタッフに揚げてもらって、自分で絵を書いたパッケージにいれてもらうという体験ができます。
まさに完全自分オリジナルのチキンラーメンづくりができるわけです。

またマイカップヌードルファクトリーでは、スープを選び、具材を自分で4種類選び、
自分で絵を描いたカップヌードルのカップにいれてもらってマイカップヌードルができあがります。
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いずれにしても、自分ならではのインスタントラーメンを作れるということが人気で、
子どもはもちろん、むしろ大人が楽しんで作っている姿が印象に残りました。

■ カップヌードルミュージアムは創業者精神を感じる場である

同社では安藤百福さんの作られた財団(安藤スポーツ・食文化振興財団)と共同出資して、
数十億かけて同施設を作りました。
この不況期に思い切った投資をしています。なぜここまでのものを作る必要があったのでしょうか。

そこには、創業者精神の伝承という、ブランディングの本質があります。
同社のミュージアム設立の理由を、同館の館長である、筒井之隆さんは3つ挙げていました。

(1)企業文化の発信のため(CSR、創業者の頸彰)
(2)ブランディングのため(安心・信頼・ロイヤリティ形成)
(3)20年先を見たマーケティング活動のため

「子どもたちが20年後のお客様になる。そして、またその子どもたちをつれてここに来てくれる――」。
そんな長期にわたる関係づくりを真剣に考えているからこその投資なのです。

ブランディング視点で見ると、同施設の価値が分かります。

日清食品では「最大の企業価値は創業者精神にある」と定義し、社内では創業者精神を語り続けることを大切にしています。

私はこの言葉を聞いてはっとさせられました。いかに創業者の思いをつないでいくか。
もちろん創業者だけでなく、現在の経営者の思いを重視している企業もありますが、
トップの思いを企業の全体に波及させ、そのもとで一体化することができるかどうかが、企業の盛衰を決めるということです。

その意味で、カップヌードルミュージアムが果たす役割は、お客様に対してだけでなく、社員にとっても貴重な場でもあります。
日々取り組んでいる仕事が、どのような意味を持ち、社会に何を提供しているのかということを確認できる貴重な場なのだと思いました。

■ 企業ミュージアムをブランディングの拠点とする

そもそもブランディングというのは、企業の「らしさ」、「独自性」を消費者に伝えるためのマーケティング手段です。
他の企業では作りえない、その企業のオリジナリティを消費者に伝えることが鍵となります。

ブランディングを確立するための施策として企業はマス広告や、PR活動、CSRなどを行います。企業ミュージアムもそのための施策の一つです。

他の施策と比べて企業ミュージアムの価値は、実際にその場所で、企業価値を体感できることにあります。
マス広告のように企業からの一方的な情報伝達ではなく、企業と消費者が直接つながり、交流できるものだからです。

企業ミュージアムは、これまではどちらかと言うと「お金が余ったから記念に作る」というものが多かったように思います。
しかし、これからの企業ミュージアムは日清食品のように、
「ブランディングにつなげるための施設」として、積極的な意味を持たせることが必要です。

箱モノとしての企業ミュージアムではなく、企業と消費者の交流スポットとしての企業ミュージアムへと考え方を変化させる必要がありそうです。
企業ブランディングの新たな取り組み方法として今後も注目したいと思います。

(出典:ダイヤモンド・オンライン