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国民の97%が幸せと感じている国・ブータン!! GNHから考える企業経営のあり方とは?

ブータン国王夫妻が来日し、日本各地を精力的にまわる姿がニュースで流れました。
今、あらためてブータンという国が注目されています。

2011年が日本にとって大きな変化の年であったことが、
今まで以上にブータンの考える幸せ哲学に共感するきっかけにもなっていると私は思います。
TPPに対してさまざまな議論が沸き起こっているのも、これまでどおりの経済至上主義の論理だけではうまくいかないことが分かって、
もっと新しい価値観が必要なのではないかと多くの人が感じているからでしょう。

ブータンの唱えるGNH(国民総幸福度)とはいったい何か。そこから学べるこれからの企業経営のあり方とは何なのでしょうか。

■ 人生において何を大切にしていくか

さて、次の5つのうち、みなさんは人生の中で何を大切にされていますか?

  1. お金
  2. 名誉・出世
  3. 仕事
  4. 家族
  5. 命

さてどうでしょう。
どれを重要視するかは人によって違うことでしょう。
したがってどれを選んでも正解です。それぞれの人生にとって、何を大切にされるかで選べばいい項目です。

しかし、3.11の東日本大震災以降、大きな価値観の変化が起きていることをみなさん実感されているはずです。
それは、「お金や名誉よりも、家族、いのちを大切にしたい」という生き方が主流になり始めてきたということです。
必ずしもお金を持ち、出世することだけで人生の勝者ではないと多くの方が感じているのです。

3.11以降、さまざまな変化が起こっていますが、私の考える一番の変化は、
日本人の「気持ち」の変化(詳細は筆者の毎日更新ブログ「丸の内ではたらく情熱コンサルタントのブログ」をご覧ください)だと思います。
そこに、ブータンのワンチュク国王夫妻の来日が重なって、さらに強く日本人に訴えかけてくるのです。
Bhutan's King Wangchuck and Queen Wangchuck wave during their welcoming ceremony at the Imperial Palace in Tokyo

■ ブータンが提唱するGNHとは

国の生産性をはかる指標としてGDPという指標があります。
GDP(Gross Domestic Product)=“国内”総生産

また似たような言葉に、GNPがあります。
GNP(Gross National Product)=“国民”総生産

以前はGNPが指標としてはよく使われていましたが、最近では国内の景気をより正確に反映させる指標としてはGDPが使われるようになりました。

GDPは国内で新たに生産されたモノやサービスの付加価値の合計額のことをいいますDomestic(国内の)ですから、日本企業が海外で生産したモノやサービスは含みません。

あくまで日本国内の生産活動を数字として表し、景気を測るものさしです。長年、国の豊かさを表す指標として使われてきました。

そして、ブータンという小国がこれからの時代に重要になるのではないかと、世界に問いかけた言葉がGNHです。

ではGNHとはどのような意味なのでしょうか。
GNH=Gross National Happiness
のことです。

GNP(国民総生産)ならぬ「国民総幸福度・量」です。ブータンという小国はこの提言で世界中から注目される国へとなりました。

国の力や進歩を「生産」ではなく「幸福」で測ろうという「GNH」の考え方は、
1976年の第5回非同盟諸国会議の際に、ブータンのワンチュク国王(当時21歳)の「GNHはGNPよりもより大切である」との発言に端を発しているといわれています。

その後、2002年の国連総会で、当時、ブータンの外務大臣だったジグミ・ティンレイ首相が全世界にGNHという概念を伝え、この言葉が知れ渡ることとなりました。

物質的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさも同時に進歩させていくことが大事、との考えです。
ブータンはどのようにしてこのユニークな概念を打ち出したのでしょうか?

■ 経済発展だけでは国民を幸せにできない

1960年代から70年代初めに、ブータンでは先進国の経験やモデルを研究しました。
その結果として「経済発展は南北対立や貧困問題、環境破壊、文化の喪失につながり、必ずしも幸せにつながるとは限らない」という結論に達しました。

そこで、GNPの増大に走らずに、人々の幸せの増大を追求するGNHという考えに至ったのです。

このGNHという概念のもと、ブータンでは、

  1. 持続可能で公平な社会経済開発
  2. ヒマラヤの自然環境の保護
  3. 有形無形文化財の保護と推進
  4. よい統治

の4つを柱として開発を進めることになりました。

1999年にブータン研究センターが設立され、このGNHを数値化できないか具体的な研究がスタートしています。
まずはあくまでもブータン国内で通用する指標をめざして、幸福という概念を9つの要素に分けて検討しています。
438_4
「ブータンの人々の情緒がどのくらい豊かか――」
「人々がどのように時間を使っているか――」
「地域社会はどのくらいイキイキしているか――」

こうした一つ一つの取組みが、国民の幸せ度を向上させているのです。

ブータンは、人口70万人ほどの小さな国です。
国民1人当たりのGDPは2006年度で1人あたり1250ドル程度です。
日本などの先進国では1人あたり3万ドルですから、かなり低い数値です。

しかし、「国民の97%が幸せである」(ブータン国内調べ)と感じています。
これはアメリカやイギリス、中国やブラジル、インドなどの成長をめざす国々ではあり得ない答えです。日本でさまざまな形でアンケートをとっても、ここまでの幸せ度はないでしょう。

上記の「情緒がどのくらい豊かか」や「どのように時間を使っているか」、「地域社会はどのくらいイキイキしているか」、こういったことは、GDPにはほとんど影響を与えないでしょう。
これまでの価値観では、お金を稼ぐ仕事以外に、地域のために時間を使ったりボランティア活動をしたりすることは、
その本人は満足であっても決して評価されない仕事だったと思います。
しかしそれも3.11以降、大きく変化してきたように私は思うのです。

■ ホームレスや物乞いのない社会を実現

本当の意味での国の進歩とはいったい何なのでしょうか。
今、30代~40代の方のお子さんやお孫さんが大きくなるころ、「日本のGDPが増えていてよかった!!」と思うでしょうか
。それとも「日本のGNHが増えていてよかった!!」と感じるでしょうか。

ブータンはGNHという指標を掲げて自然保護を優先的課題として取り組んできた結果、
国土の26%は自然保存地区で、72%は森林地区になっているそうです。

そして同時に、経済的には豊かでなくても、ホームレスや物乞いのいない社会を実現していると聞きます。

あれもこれもと求めるのではなく、まさに仏教の教えである「足るを知る」の世界です。

これで十分と思える社会。無理に急がずに、しっかりと幸せの定義のできる社会。

これがGNHのめざす姿なのです。

■ GNHならぬ“EF”を企業経営の柱に

ブータンの提唱するGNHは日本のような成熟した社会には通用しないとか、
それはあくまでも小さな国だったからそうせざるを得なかったのだという意見もあります。

また、現在、隣国のインドの発展に伴って、経済的な豊かさを享受しているという面もあるのは確かです。

しかし、大切なのは、「何をもっとも大事な価値観とするか」という国の指針が定まっているということです。

これは経営においても同様のことが言えます。これからの社会では、何をもっとも大切な価値観とすべきなのかを見定めることが必要です。

私はこれからの企業経営の柱となる言葉として、EFという言葉を提言しています。EFとはEmployee Funという概念で、私の作り上げた造語です。

Employee Funという概念は次のような意味を持ちます。ちなみにESはEmployee Satisfaction(従業員満足度)、CSはCustomer Satisfaction(顧客満足度)です。

【EFの概念】
1. 企業とは、そこで働く従業員がイキイキと楽しく働ける環境を作ることこそを考えることが大切である
2. これが結果として、お客様に喜んでいただける企業体を作り上げる
3. EFの徹底⇒ES⇒CSへと繋がっていく

これを図にすると次のような考え方になります。
438_8
したがって、従業員はいかに仕事を楽しむか、いかに楽しく仕事をするかが大切です。

一方で、企業のトップは、いかに楽しく従業員が働ける環境を作れるかに全力を注ぐことです。これが企業価値向上のポイントになります。

私のお付き合い先の株式会社ボーンフリー(滋賀県、ジーンズ小売業; 堀江明廣社長)では、
会社のビジョンに「Fun」という言葉を取り入れていて、社員がいかに楽しく仕事をできるかを重要視する経営をされています。

店にジャズバンドを呼んでパーティーをしたり、滋賀の地酒の試飲会を開催したり、
関わる方々が楽しめることを経営に積極的に取り入れています。
それが社員にワクワク感を与え、お客様に圧倒的な支持を得る会社づくりにつながっているのです。

いかに社員が楽しく働けるようにするか――。

企業ですから生産性は上げなければいけません。
しかし、単に生産性を上げていくことだけではそこで働く社員は幸福にはなれません。

もう少し言えば、経営にこそ、働く場所にこそ「楽しさ」が必要であり、
それが結果として生産性を上げるきっかけになるということです。新しい幸せのカタチが経営に求められています。

そんな示唆をブータンという国は私たちに気づかせてくれたように思います。

新しい経営のカタチを考えることが、これからの私たちの幸せを作り上げるのです。

(出典:ダイヤモンド・オンライン

岩崎 剛幸
株式会社船井総合研究所 上席コンサルタント
経営者・幹部様向け/情熱経営・トレンドから学ぶ企業ブランディング
「組織は戦略に従う。戦略は思い(情熱)に従う」というコンサルティング信条のもと、出会うすべてのお客様に対して、情熱を込めたコンサルティングを行う。コンサルティングテーマは、「永続性を実現させるブランド戦略」。アパレル業界を専門領域として、アパレルメーカーの戦略立案、新業態開発を得意とし、SPA専門店、百貨店、GMS、品揃え型専門店にいたるまで川上から川下までのコンサルティングを実施している。現在はアパレル企業のブランド戦略づくりに特に力を入れている。立教大学兼任講師。 【ブログ】「丸の内で働く情熱コンサルタントのブログ」