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2010年年末商戦は企業の命運を握る! メリハリ・巣ごもり・機能性消費に対応せよ

■ 年末商戦は企業にとって最重要期。2010年末はどんな商戦になる?

各企業にとって年末年始というのは1年間の売上を確保する上で最重要シーズンであり、決して失敗できない商売のポイントとなる時期です。

特に年末商戦は、昔から商売をする者にとって失敗すれば死活問題。ここで売上を確保しないと、借りていたお金や掛けを清算できず、商売を続けられなくなってしまうからです。つまり、新年を無事に迎えるための最重要期間が年末商戦なのです。

しばらくの間、日本では年末商戦は1つのお祭り的な位置づけになっていた感がありますが、この数年、特に今年はデフレが予想以上に続いていることもあり、年末商戦の結果が各企業の存続にもつながるほどの大事な商戦となります。

2010年の年末商戦はどうなるのか。

1つだけ確実に言えることは、昨年までと同じような売り方しか考えていない企業は売上が伸びず、企業の今後に大きな影響を及ぼす大打撃を与えるということです。今はそれほど厳しい時代です。

では、10年年末に売上を上げるための条件とは一体何なのでしょうか。今回はさらに、年末商戦の戦い方を考えることで、11年の企業の方向性も整理してみたいと思います。

■ 10年冬の賞与は増加するのか、減少するのか

まず、年末商戦を占う指標として冬のボーナス支給額があります。ご存知のとおり、ボーナスが多く出れば商戦は盛り上がり、少なければ盛り下がるというのが通例です。

すでに忘れてしまった方も多いかもしれませんが、10年の夏季賞与は前年に比べて1.1%増という結果でした。リーマンショック後の景気悪化で統計開始以来最悪となった09年から改善し、4年ぶりに賞与が増加しました。ここに各種政策効果も加わって、特に家電、車、リフォームなどの業界はプラスに転じました。

厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査(速報)では、9月の現金給与総額(事業所規模5人以上)は、1人平均で26万8010円。前年比0.9%増という結果で、増加は7ヵ月連続です。また、所定外給与は9ヵ月連続で増加し、所定内給与も29ヵ月ぶりの増加に転じています。

消費は基本的に所得の変動による影響を受けますので、その意味では消費にとってプラスの動きが出始めているのは事実です。

そして、年末商戦の鍵を握る冬のボーナス予想の一部が発表されました。民間企業(従業員5人以上)の10年冬のボーナス予想によると、1人当たり平均支給額は前年比2%増の38万8000円と2年ぶりにプラスとなりそうです。また、日本経団連が発表した大手企業の冬のボーナス妥結額は前年比3.8%増の77万6949円。07年以来、3年ぶりのプラスになりそうな気配です。

しかし一方で、東京都内の企業で構成される各労働組合の発表したデータによると、72万7407円で前年から2.05%のマイナスという話もでています。実際にでてみないと分からないというのが10年年末ボーナス状況のようです。

これらに加えて、円高進行や景気の先行き不透明感、政局不安などが影響し、本当に盛り上がるのかどうか微妙な年末であるというのが多くの人々の実感ではないでしょうか。

直近では政策要因(自動車、たばこ、家電製品など)による駆け込み需要の反動減が早くも10月から各種小売店の店頭で表れてきています。

多くの消費者はお金を遣うことに非常にナーバスになっており、例年以上に財布の紐を引き締める人も多いのではないかと私は思っています。

このような中で、消費を上向かせるためには、企業はどのような戦略を立てればよいのでしょうか。

■ 年末に売れる商品3つのキーワード「メリハリ」「巣ごもり」「機能性」

私は10年年末商戦を迎えるにあたって、次の3つをキーワードにして商売の組み立てを行うべきだと考えています。

  (1)メリハリ
  (2)巣ごもり
  (3)機能性

この3つに対応する企業、商品はお客様の欲求に応え、売上を上げられるのではないでしょうか。

■ 低価格商品にはもう飽きた? プチ贅沢も求める「メリハリ消費」へ

(1)メリハリ消費に対応する商品・サービスの提供

今年の年末商戦は、これまでの安売りだけに反応する消費トレンドから、できればちょっといいものを買いたい、こだわったものを選びたいという消費者が増えることが予想されます。「プチ贅沢」、「プチリッチ消費」です。

今年はエコポイントやエコカー減税などで家電製品や車に対して支出をした人も多かったと思います。年末はこれまで買えなかった「それ以外の商品」を購入しようと動く可能性があります。したがって、価格が高くてこれまで敬遠されてきた衣料品や雑貨なども売れる可能性が高いと私は見ています。

その一方で、単なる安売り商品やこれまでに見たことがあるもの、去年買ったものは買わないという傾向が強まるでしょう。また日用品などの生活必需品などには徹底して支出を抑えるようになります。

最近の具体的事例については、AERO CONCEPTなど、本物志向の商品が世界で支持され始めていることからもお分かりいただけると思います。(「ブランディングナビ」をご参照ください)

以上のことからも、10年年末商戦は、これまで以上にメリハリを利かせた消費傾向になるというのが筆者の見方です。

これは米国の年末商戦予想を見ても分かります。

全米小売業協会(NRF)によると、今年の米国年末商戦の小売売上高は2.3%増と予想されています。この数年間の中ではもっとも伸びるだろうとの予測です。米国小売業各社は年末に向けて臨時雇用を増やしたり、期間限定店舗を数百店舗出店したりと、年末で一気に取り戻そうとしていることが分かります。

NRFによると、10年の11~12月の小売売上高は4471億ドル(約37兆円)に増加し、08年の3.9%減、09年の0.4%増を大きく上回りそうだと見ています。

また、10年の米国の年末商戦の主役として期待されているのは、デジタル家電と衣料品です。

10月の小売業の売上では百貨店が2桁の伸びを示すなど、高価格商品にも動きがでてきています。米国でも単価の高いモノが売れ始め、単なる低価格商品には飽きがきているのが現状です。もちろん米国と日本では状況はまったく異なりますが、毎年の傾向は類似していますので、1つの参考にはなるでしょう。

したがって、各企業は単なる年末大安売りやディスカウント訴求、セールの前倒しといったありきたりのやり方を脱して、ちょっと質の高いモノを提案する、プチ贅沢を感じてもらえるモノを販売するといったことに取り組むべきではないでしょうか。

メリハリのきいた提案を消費者は求め始めているのです。

■ 個性的なおせち料理が続々「巣ごもり」を満喫できる商品が人気に

(2)巣ごもり消費に対応する

“コクーニング”(繭化現象)と呼ばれる行動です。繭の中にとじこもり家の外に出たくない消費者はこの数年増えていますが、今年の年末はさらに増加するのではないかと思います。消費者はボーナスが多少増えても、家の中でじっとしていたい、近場で済ませたいという動きは強まっています。

その動きは“ジモタク(地元・自宅で過ごし消費する)”からさらに距離が縮まって、“ヘヤゴモリ(自分の部屋にこもってネットで消費する)”へと移行します。

ネット消費は拡大し続けていますが、おそらくこの年末年始は自宅でモノやサービスを購入することがさらに増えることが予想されます。

これによって、自宅でできる健康器具やアロマ、香り系、インテリア雑貨、一部のデジタル家電、家具、おせち、自宅、周辺で着れるようなワンマイルウェアなどは人気となるでしょう。

自宅でくつろげる時間をどう楽しむか。それをサポートしてくれる商品を探し始めている消費者が増えています。ここに目をつけた商品は必ず売れ筋になると思います。

その代表的な商品の1つがおせち料理です。

百貨店でおせち料理の予約受け付けが始まっています。消費者の節約志向の高まりで年末年始は自宅でゆっくり正月を過ごす人が2008年ごろから増えています。それと共におせちの売り上げはここ数年増加傾向にあります。これまでは百貨店の土俵だったおせち市場には、スーパーやCVS、各ホテル、旅館、料亭、レストランなど各社が趣向を凝らしたメニューを作り、参入しています。

その中で百貨店のおせちはますます細分化し、新しい提案がでてきています。三越は、年越しそばをセットにしたおせち、そごう・西武は各地の郷土料理をベースに「おばあちゃんのおせち」の販売に力を入れています。

その他にもペットの犬と一緒に食べられるおせち、低カロリーの「ヘルシーおせち」、タイやインドネシアなどの「アジアン風おせち」など、これまでのおせちの概念を変えようというものもでてきています。

ここ数年は1万円台のおせちが人気でしたが、今年は3万円台のおせちの売れ行きが良いようで、ある百貨店では50万円を超える最高級おせちにも注文が入ったという話も聞きいています。

おせちは毎年の定番商品ではありますが、どこまでターゲットを明確にしたモノに仕上げられるかがポイントです。

外にでてお金を使うよりも、自宅、自分の部屋でゆっくりとネットをやりながら、のんびりと年末年始を過ごしたいという巣ごもり消費を好む人たちにとっては、おせちは最高の逸品なのです。このような商品やサービスは伸びる可能性が大きいと思います。

■ “単なる機能性”ではなく、「高い機能性」と「デザイン性」が必要

(3)機能性商品に磨きをかける

いま、アパレル市場でよく売れているものの1つが「機能性○○」というものです。

最近では機能性インナーの代表格として、ユニクロの「ヒートテック」が爆発的な人気となり、09年は世界で5000万枚以上販売して話題となりました。

下着1枚を着るだけで冬もあったかいという機能が受けて、品切れになるほど売れています。

しかし、いま売れている機能性はそれを超え、「着るだけでエクササイズ効果が期待できる」、「履くだけでエクササイズになる」といった魅力的な機能性を備えたグッズです。

そのもっとも代表的な商品に、リーボックの「EASYTONE」という靴があります。コンセプトは「歩くだけで、美脚・ヒップアップ効果も。」というものです。

ジムに通ったり、運動をする暇のない忙しい女性のエクササイズ用に開発されたもので、散歩や買い物など日常に履いて歩くことで効率的な下半身エクササイズを目指そうという商品です。

イージートーンは、09年11、12月のわずか2ヵ月間に、全米で爆発的に売れ、日本でも在庫切れが続出しました。日本では今年に入って本格的なブームとなり、販売する小売店店頭では1日百足単位で売れる店もでるなどの大ヒット商品となっています。

もともとリーボックは80年代に大ヒットしたエアロビクスシューズなどフィットネスには定評があり、独自の技術でイージートーンを開発しました。

日本人はとてもめんどうくさがりですが、常に「楽してやせたい」、「手軽にきれいになりたい」というニーズがあります。

本当は毎日ジョギングしたいけれど、毎日はできない。毎日トレーニングにジムに行きたいのですがそれも続かない。できれば普通に生活しているだけで美脚を手に入れたい。

そんなニーズが強いのです。

「履くだけでエクササイズ効果がある」というコンセプトは、かなり明確なものです。誰が見てもわかりやすい効果は人をひきつけます。

私の知っているある健康器具メーカーも、「1日3分でヒップアップ」という健康器具を開発し通販を中心に爆発的に売れています。

そしてさらに、リーボックの場合は、見た目もおしゃれ。ゴツくありません。普通に履いていてもかっこいい。

つまり今は、おしゃれでかつ、美しくなれる機能を持っているというハイブリッド型機能を持つ商品であれば圧倒的に支持されます。

いつでも、手軽に、カンタンにきれいになれる。そしておしゃれであること。これが売れる機能性グッズのポイントです。

これはアパレルだけでなく、すべての商品にあてはまる条件となるでしょう。単なる機能性商品ではなく、これまでの商品以上に付加機能があり、かつ見た目、デザインがいいもの。それが売れる理由となるのです。年末にはこうした機能性のある商品を徹底的に消費者に訴求することが集客のポイントになるでしょう。

■ 「売り方の違い」では消費者は動かない不況期に売れ筋を作るための3つの条件

不況期には、次の条件を満たすものが売れ筋になると私はルール化しています。

  (1)ありそうだけどないもの
  (2)特徴はあるけど特殊でないもの
  (3)一言で語れるストーリー性のあるもの

この3つの条件を満たすものがよく売れる商品です。

先の年末商戦を勝ち残るための3つのポイントは、上記3つの条件にあてはまっているものばかりです。

最近、百貨店などの大型店はお歳暮を早くから予約販売して割引したり、福袋を前倒しして予約販売したり、また最終クリアランスセールを年内からスタートさせたりと、とにかくどうやって需要を先にとるかしか考えていないようなところがあります。

また、有名人の福袋を作ったり、有名シェフに協力してもらったおせち料理を作る、ブランド物を安くする。こうしたことは消費者の想定の範囲内です。どこにでもありそうな、どこでもやりそうなことです。こうしたことは、今の日本の消費者のココロを掴むポイントにはなりません。

単なる売り方の違いでは消費者は動かないことを売り手は知るべきです。すでに消費者側がこうした売り方に慣れてしまっていて、「どうせ安くなるのでしょう」と思われているところに売れない理由があるのです。

これではいつまでたっても正しい商売にはならないでしょう。そして、同時に企業として適正な利潤を上げることもままならないと思います。

消費者の嗜好の変化に目をやり、新しい提案をすることです。繰り返しますが、昨年やったことは決してやらないこと。それが今年の一番のポイントです。

十分な準備をもって最高の年末にしていただければ幸いです。

岩崎 剛幸
株式会社船井総合研究所 上席コンサルタント
経営者・幹部様向け/情熱経営・トレンドから学ぶ企業ブランディング
「組織は戦略に従う。戦略は思い(情熱)に従う」というコンサルティング信条のもと、出会うすべてのお客様に対して、情熱を込めたコンサルティングを行う。コンサルティングテーマは、「永続性を実現させるブランド戦略」。アパレル業界を専門領域として、アパレルメーカーの戦略立案、新業態開発を得意とし、SPA専門店、百貨店、GMS、品揃え型専門店にいたるまで川上から川下までのコンサルティングを実施している。現在はアパレル企業のブランド戦略づくりに特に力を入れている。立教大学兼任講師。 【ブログ】「丸の内で働く情熱コンサルタントのブログ」