MENU
×

MENU

アウトドアブームは“単なる流行”ではない。「山スカ」大ヒットの裏にある消費者の欲求変化を掴め!

「今度の日曜日、一緒に山に登らない?」

誰の言葉だと思いますか。
私の知っている28歳OLが友達に送ったメールです。

これまで登山と言えば、団塊世代以上の「年をとってからの趣味」程度にしか思われていなかったものが、ここにきて、特に若年層のレジャーの一押しイベントになり始めています。

この登山ブームの裏側にあるものは何なのか。
登山ブームの背景を探ると、今の消費者のニーズの変化が見て取れます。

今回は、広い意味でのアウトドアブームから、これからのマーケティングの新潮流を探ります。

■ 「山スカ」ってご存知ですか?

2010年のファッション業界においてもっとも注目されているファッションに「アウトドア」があります。

2010年秋・冬の主役になることは間違いないトレンドです。

その代表的な新しいアイテムが「山スカ」です。

山スカとは何か?

それは、「山歩き用のスカート」のことです。通称、「山スカ」と呼ばれています。2008年ごろから市場に投入され、当初はそれほどでもなかったのですが、2009年の春ごろからかなりの人気アイテムになっています。

351_2

登山の際にこの山スカだけを履いて登る人はほとんどなく、通常は下にレギンスやスパッツなどをあわせて着るものです。ミズノ、ゴールドウイン(ノースフェイス)などのスポーツメーカー、モンベル、チャムスなどのアウトドアブランドからも続々と女性向け山スカートが発売されています。

また最近では、ワンピースや、カラフルなジャンパー、帽子、手袋、靴にいたるまで、たくさんのかわいいアイテムが発売されています。

これらのアイテムの特徴は以下の通りです。

(1)コーディネイトが可能
(2)機能性がある(保温性、着替えやすい など)
(3)ファッション性がある

特に「ファッション性があること」がポイントで、最近ではこれまでにないようなカラフルで、かつ機能性も高いアイテムが小売店の店頭に陳列されるようになりました。

では、なぜアウトドアファッションが注目されているのか。

それは、今まで山には縁がなかったような若い女性の間で、山に登ること、外で遊ぶこと、自然の中に出かけることがトレンドになり始めているからです。

登山人口が爆発的に増えているわけではありません。年々増えてはいますが、過去のピーク人口から見るとまだまだです。

351_3は、女性が市場に参入してきたことで、ファッショントレンドを生み出し、その周辺商品、サービスにまで影響を及ぼすようになってきたのです。

では今回のアウトドアブームはどこからきたのでしょうか。

■ 富士山・高尾山、野外フェスが三大牽引要素

今回のアウトドア・登山ブームを引っ張る大きなポイントとして、「富士登山ブーム」があります。富士登山は昔からある夏の風物詩ではありますが、2005年までは20万人程度の登山者(毎年7/1~8/31の累計数字)だったのが、2007年ごろから増え始め、2008年には30万人を超えています。この富士登山ブームがアウトドアの流れを作るきっかけになりました。

351_4アウトドアブームは“単なる流行”ではない。「山スカ」大ヒットの裏にある消費者の欲求変化を掴め!

これらは大自然の中で行われることが多いため、アウトドアファッションに身を包み、バーベキューをしながら音楽を楽しむというスタイルが1つのファッションになりました。これが長靴が売れるきっかけになったとも言われています。

こうしたことが積み重なってきて、「ちょっと行ってみようか」という人が増え始め、2008年ごろからアウトドアや登山が時流になり始めてきたのです。

■ アウトドア市場で注目されるモノとコト

自然の中に身をゆだねる、大自然のパワーから何らかのエネルギーをもらえるアウトドア市場に人々の関心が寄せられています。ではその市場とはどのくらいの規模なのでしょうか。

登山の参加者は590万人(2008年度データ)。MS(マーケットサイズ:年間1人当たり消費支出金額)は3万400円ですから市場規模は約1800億円となります。

ピクニック・ハイキング・野外フェス等の参加者は2470万人程度あります。MSは1万5200円、市場規模は約3800億円になります。

上記の2つの市場を合計すると、顕在化している市場で約5600億市場。ギアやファッションなどのアウトドア用品の市場規模に限定しても、1500億~2000億程度(船井総研推定値)はあり、これが年々拡大傾向にあるのです。

アウトドアが注目されると下記のようなモノやコトに注目が集まります。

351_5消費者欲求の変化がもっとも顕著に表れている事象であると言えます。

もしかしたらアウトドアブーム自体は一過性のものかもしれません。
しかし、その時流を支えているお客様の欲求の変化こそ、私達が見ておかなければならない大きなマーケティングの潮流なのです。

登山やアウトドアが、瞬間的、一時的変化である「ファズ」だとすれば、その裏にある、お客様の欲求の大きな変化こそが本当の「トレンド」です。ではその変化とは何か。

このトレンドが「達成感を味わいたい」「充実感を得たい」「少しだけ自分の限界に挑戦してみたい」という非日常の消費傾向があると私は考えています。

普段の生活の中に、ドキドキがなくなってきている。

刺激を求めているのだけれど、そんな経験をする機会が減っている。
未経験のことにチャレンジしたいのだけれど日常では危険すぎるし、そこまで冒険したくない。でも山やアウトドアならそれができるかもしれない。そんな思いが若い女性を山に走らせているのです。

モノが溢れ、ブランドに飽きた女性達が次に求めたものは、「知的欲求の充足」でした。

これは自己実現欲求と言ってもいいかもしれませんが、もう少し軽い、ライトな感覚です。

自分自身を磨く、自分の知性を磨くことにお金と時間を使うことが2000年を過ぎたあたりから増えてきました。

例えば、女性に人気のあるものには次のようなサービスがあります。

 ・ ジム
 ・ 英会話などの教室
 ・ 朝活
 ・ マラソン
 ・ 料理、マクロ
 ・ ダイエット
 ・ ゴルフ

しかし、こうしたことは何らかの「知識」や「技術」につながるものです。やり続けていくとだんだん飽きてきます。

飽きてくると次に欲しくなるのが、「今までに体験したことがないことを経験したい」欲求です。

不況の影響で会社でも認められない、仕事もつまらない、彼氏とデートしてもマンネリ気味でつまらない。テレビは政治の話ばかり。こんな日常から離れて、自分だけの達成感を味わいたい。そして、どうせ時間とお金を使うなら、普段感じることが少ない、達成感や充実感を感じられる体験をしたいのです。

それがたまたま「山とアウトドア」にあったということです。

物質的な欲求、利便性など、単なるモノやサービスを求める時代から、充実した時間を過ごしたい、達成感を味わえるような体験をしたいという「非日常」を求める時代に世の中は明らかに変化しました。

i-Padの世界的な流行も、そのモノの価値というよりも、その中から生まれてくる世界、新しい情報、知的欲求を満たしてくれるアプリ、そこからの新しいコトとの出会いに期待できるからだと言えます。

Twitterの大流行も、見ず知らずの人とつながり、そこから生まれるサプライズ体験が人を引きつけています。

いかに消費者をドキドキさせるか。

今までに体験したことがないことだ! と思わせられるか。この非日常体験の提供こそが、これからの時代のマーケティングの潮流としておさえておくべきポイントだと私は思います。

アウトドアや登山を自社とは関係ない、単なる1つのブームと見るのではなく、そこに人々の興味関心が向いている本質とは何なのかに目を向けることが大切です。

充実感や達成感を味わいたい消費者の嗜好にどう対応していくか。

これからのマーケティングの新潮流の1つです。

岩崎 剛幸
株式会社船井総合研究所 上席コンサルタント
経営者・幹部様向け/情熱経営・トレンドから学ぶ企業ブランディング
「組織は戦略に従う。戦略は思い(情熱)に従う」というコンサルティング信条のもと、出会うすべてのお客様に対して、情熱を込めたコンサルティングを行う。コンサルティングテーマは、「永続性を実現させるブランド戦略」。アパレル業界を専門領域として、アパレルメーカーの戦略立案、新業態開発を得意とし、SPA専門店、百貨店、GMS、品揃え型専門店にいたるまで川上から川下までのコンサルティングを実施している。現在はアパレル企業のブランド戦略づくりに特に力を入れている。立教大学兼任講師。 【ブログ】「丸の内で働く情熱コンサルタントのブログ」