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GREE「ラブホ予約アプリ」の爆速終了を考察する

GREEがラブホテルの予約ができるアプリ「Tonight for Two」のサービスが、9月3日をもって終了したことを発表しました。
当アプリはサービス開始の8月11日から1ヶ月足らずでサービス終了ということになり、
その終了までの期間の短さがニュースとして伝えられたようです。

またサービス終了の経緯についてGREE広報が「社内外から色々なご意見があり、それらの議論を踏まえて総合的に判断した」と説明したことから、色々なニュース記事やブログにて終了理由の憶測が広まっています。

■どんなアプリだったのか?
リリース当時の発表記事を紐解くと、本アプリについて下記のように説明されています。

『今夜のラブホテルが10秒で予約できます』、をコピーとし、ラブホテルの当日予約に特化させたもので、6月11日にGREEがサービスインした高級ホテルの当日予約アプリ「Tonight」のラブホテル版であり、せっかくホテルに行ったのに満室で入れなかったというニーズに対応できる、としています。

アプリを立ち上げると、GPS機能により現在地より一番近いラブホテルが順に表示され、
各ホテルの外観や部屋の内装、ロビー、アメニティなどが確認でき、気に入ったホテルがあれば、予め登録したクレジットカード情報をもとに、そのまま決済し、最短10秒で予約が完了する仕組みです。

加盟ホテル側としては同サービスを利用することで、周辺ホテルの情報をリアルタイムに見比べながら、当日の空室を自由に価格設定して販売でき、売上および稼働率の向上とともに、当日予約だからこそできる割安価格を利用者に提案することで、新たな顧客開拓、集客が見込める、というものでした。
コストとしても初期手続料3万円以外は、予約成立時の手数料のみとリスクを抑えた契約条件だったようです。

GREEとしては、突発的に発生する(=前以って予定が決まらない)傾向が強いラブホテル需要に対し、ユーザーに最も身近なデバイスであるスマホを活用したアプローチによって、マッチングを図るという狙いだったと考えられます。
当時の発表にもありますが、従来、GREEが培ってきたスマホのノウハウを活用できる事業、とアナウンスしています。

■なぜ終了したのか?
各所の記事等では、サービス終了の理由として

1)ラブホテルは突発的な需要特性のため、予約という概念に馴染まない
2)先行サービス(ハッピーホテルなど)がすでにある
3)上場企業としての適性の問題

などが挙げられています。

東証一部上場企業であるGREEがアダルト要素を含むラブホテル事業に関わるという問題は、火を見るより明らかですが、さすがに事前検討していないとは考えにくいので、あくまで事業性が不足していたという前提で、その要因を考えたいと思います。

■本アプリを取り巻く環境
ラブホテルに限らず、ホテルや旅館では間際のダンピング販売というモチベーションが存在します。
ホテル・旅館の空室(=在庫)は、通常の流通業と異なり、明日に持ち越せるわけではないので、稼働率の最大化を目指すにあたっては、基本的には毎日の在庫を売り切る必要があります。
ちょうど食品SMの惣菜コーナーのおつとめ品と同じです。

(ここではホテル・旅館のブランドイメージや、CRM観点からのダンピング販売自体の適否については考慮外とします。)

このモチベーション自体は、スマホの普及などに関係なく、従来存在しており、大手宿泊予約サイトでの「当日販売」設定や、クーコム株式会社によるホテル・旅館予約サイト「トクー」(http://www.tocoo.jp/)のように間際在庫の安値販売サイトとしての特性を強く打ち出したサイトが、その受け皿となっています。但し、割安ではあるものの、あくまで売れ残りであり、当然、当日空室がたくさんある施設=人気がない施設であることが多く、ユーザーが本当に利用したい施設が割安で販売されていることは少ないのが実態です。

これはラブホテルにも言えることで、やはり当日ダンピングしても販売したい施設と、知名度の低いアプリをダウンロードしてまで、わざわざユーザーが予約したい施設はミスマッチがあったことは容易に考えられそうです。

■サービス終了の要因
本サービスはマッチングのため、需要側(ユーザー)と供給側(ラブホテル)の両方を囲い込めて初めて成立します。一般的に事業のスタートアップ時には、需要側のボリュームもしくは供給側の目玉が必要とされますが、現行のスマホアプリ市場においてプラットフォームはgoogle play、App storeが掌握しており、需要の囲い込みが困難だった可能性があります。

本アプリに限らず、ネット業界では広告宣伝費を抑えてテストマーケティング的に展開しつつ、順次広告宣伝費を投下していくため、ある程度想定済みだったはずです。

となると、供給側の目玉が必要になるのですが、「スピーディーに少人数で事業を立ち上げた結果」(サービスイン時のコメント)として、リリース時点では関東1都6県のホテル情報約30件の掲載に留まり、たとえば港区で1件、渋谷区では0件という状態だったのを踏まえると果たしてユーザーが欲しいホテルがあったかは非常に疑問です。(※約1ヶ月後の終了時点では約40件の登録です。)

終了の要因については諸説があるようですが、当該業界を攻略していくために、ユーザーが欲している「押さえドコロ」を把握していなかった、もしくは説得できなかったことも終了の要因の1つと言えそうです。

山本 真輝
株式会社船井総合研究所
宿泊施設及び宿泊・観光関連企業の業績改善をコンサルティングフィールドとし、経営課題の解決に取り組んでいる。経営戦略の立案から現場オペレーション改善まで幅広いコンサルティング実績を有し、あくまでも「収益の最大化」を中心とした提案スタイルが多くのクライアントから評価を得ている。近年は業界関連企業(代理店・メーカー等)の商品戦略や営業戦略の構築、研修、講演なども手掛けている。