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営業(販売)戦略策定・実行のポイント[マーケティング戦略・営業戦略]

こんにちは、船井総合研究所の川原慎也です。

事業戦略を策定する際に、“営業(販売)戦略”の重要性が高まってきました。その背景としては、成熟期に突入している業界が増えてくる中で、「ボトルネックは市場」という企業が増えてきたことにあります。

今日は事例を踏まえながら、“営業(販売)戦略”の策定~実行における注意すべきポイントをお伝えしたいと思います。
大小たくさんの取引先を持つ卸業A社では、ある時期から売上は僅かながら増加しているにもかかわらず、利益が減少していくという状態に陥っていました。市場そのものの拡大が見込めないなかで、約3ヶ月の検討の後に新規開拓のターゲットを定め、順調に新しい取引先を増やしてきたなかでの結果でした。

営業スタッフ1人あたりの取引先数が増加する中で起きている現象だったがために、当初は「必要な提案営業が出来ずに、御用聞き営業になってしまっているのではないか」という仮説を多くの人が信じており、営業スキルを向上させなければならないという大号令がかかるような状況です。

しかしながら、効率を悪化させている原因を探っているうちに、ある事実を知ることになります。取引先の中でも小額の取引しかない会社に対しては、営業活動をすればするほど利益が減少するという事実です。これまではエリアで分けた営業拠点別で見ていたPLを顧客セグメント別のPLに置き換えてみることで、漠然としか捉えられなかった問題の核心が明確になってきたわけです。

よってセグメントした顧客の中で、営業スタッフが活動すると利益の出ない取引先に対しては営業しない方針を即座に打ち出したのですが、なかなか現場は方針通りに動きません。売上実績を重視するがあまり、少々効率が悪くても自分の担当にしておきたいというのが本音レベルではあったようです。

このジレンマを解決するために、該当セグメントの顧客を営業スタッフから強制的に取り上げる必要がありました。結局、全く別の部門がローコストで営業するといった対策まで落とし込むことで、従来の営業スタッフをより効率的な営業に集中させるような体制が出来上がったのです。

市場をボトルネックとして捉えると、どうしても「いかにして売上をあげていくのか」という視点にフォーカスしてしまいます。このA社においても“新規開拓”という方向性は間違っていたわけではないと思いますが、そこに行き着くまでに時間を掛けすぎたところに問題があります。ただし、そこからはどんどん新しい対策を講じて、比較的早い段階でブラッシュアップされた営業体制へと変革できたのではないでしょうか。
その点を考慮しながら、次の事例について考えてみましょう。

2期連続の赤字決算となった衣料系の販売会社B社では、戦略立案を担当するプロジェクトチームが「まず現場の数字を徹底的に洗い出した上で販売戦略策定の参考にしよう」ということで、現場の販売スタッフに対して様々なデータを要求していました。

そういった作業に慣れていない販売スタッフにとっては大きな負荷です。上層部の「ボトルネックは販売の現場だ」という雰囲気も感じながら、販売スタッフのモチベーションがどんどん下がっていったのは容易に想像できるのではないでしょうか。

しかも、私があとから要請を受けて気づいたB社の問題は、「ターゲット顧客の感性を商品企画スタッフが理解していない」ことと「多店舗展開の効率を重視するがあまり本部に権限を集中しすぎた」ことの2点で、結果として販売スタッフが積極的に考えることをしない風土を作ってしまっていました。

当然のことながら、結果として出てきたデータは、戦略立案に使えそうなレベルにはほど遠いものばかりです。そもそも根源の問題を解決せずに、販売の現場に変革を促しても得られる効果はたかが知れていることは明らかです。

組織の事情でそこは後回しにしたとしても、仮説-検証のプロセスが根付いていない企業で、結果系のデータをいくら集めたところで絶対に答は見つかりません。そこから出せるのはいくつかの仮説に過ぎないのです。B社はそこからさらに時間を要して販売戦略策定にこだわったのですが、現場の理解、納得を得られるものは出来なかったようです。
さて、この2つの事例から学ぶべきポイントは、『スピード』です。

こと“戦略”というと、じっくり時間をかけてなるべく失敗しないレベルまで練り上げようとしてしまいがちです。事業戦略や開発戦略といったテーマの場合は、仮に失敗するとそこにかけた多大な投資を回収できないリスクがあるため一定の時間をかける必要があります。

しかし、営業活動や販売活動といった領域の戦略においては大きな投資を伴わないケースも多々あります。その場合、戦略立案に時間をかけるのではなく、仮説-検証のサイクルを素早く回していく(現場で実行して確認する)ことが、本来の目的を達成する近道ではないでしょうか。