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ITILを理解するための3つのキーワード

今回はIT業界で流行しているITILについて考えてみたいと思います。

ITILを簡単に表現すると、以下のようになります。

■ベストプラクティス
『ITILとは過去事例からIT運用管理のベストプラクティスを抽出した参照物』
■ソリューション
『ITILを実装するためのソリューションが各ベンダから提供されている』
■テクノロジー
『ITILではプロセス論を提供し、基本的にテクノロジーには言及しない』

では、3つのキーワードからITILを見てみましょう。

<ベストプラクティス>
ベストプラクティスは正しい、と直線的・短絡的に捉え、その実装に邁進するという姿勢は、『右に倣え』の志向につながり、競合優位を追求するというビジネスロジックに矛盾するため、結果、自社の競争力を削ぐ可能性がある、ということを前回ご説明しました。
残念ながら現在の市場におけるITIL実装の状況としては、この傾向が見受けられます。
つまり具体的には、ITILアセスメントにおいて、ITILに記述されたあるべき姿と、アセスメント対象企業の現状とのギャップのみを拠り所に、対策を立案するというパターンです。
ご理解いただけるように、この方法では、極論すればITの運用に関して皆が皆同じ姿を目指し、仮にそれが実現すれば、ITに関して、同じ特性を持つ企業が市場に並ぶことになります。
これを仮にITサービスをコアビジネスとする市場(例えばITアウトソーシング等)で考えれば、同じビジネス特性の企業が市場に並ぶことになり、結果競合優位が成立しなくなる、ということがご理解いただけると思います。
競合優位が成立しない企業が乱立した市場に待ち受けているのは、価格競争など、惨憺たる競争環境リスクです。
それ以外の企業においても、ITのビジネスに対する影響力が拡大の一途を辿る現状においては、ITの『右に倣え』志向は、ビジネスの『右に倣え』志向につながりかねないリスクと言えるでしょう。
よって、ベストプラクティスたるITILを実装するには、ITILで提唱されているあるべき姿とのギャップを見る前に、その企業が、競合優位を確立する戦略として、ITに何を求めるかを定義し、その戦略を実現するためにITILがどのように貢献するかについて、つまりITILの自社におけるポジショニングを明確化することがポイントとなります。
そのためには、ITILアセスメントにおいて、ビジネスロジックアセスメントと、ITILギャップアセスメントの二つのコンセプトを包含する必要があるということです。
ビジネスロジックアセスメントでは、環境分析、顧客分析、競争環境分析、自社分析を行って独自のビジネスロジックを構築し、その結果から、IT、ひいてはITILのポジションを導き出します。
そしてその結果にITILギャップ分析の結果を加えてITIL実装の対策を立案していくことによって、各社固有の競合優位を構築、あるいは支援するITILの実装が可能となります。

<ソリューション>
ベストプラクティスの段でご説明した通り、ITILを実装しようとしている企業ごとに、競合優位のロジックは異なり、結果、ITILのポジショニングロジックも異なります。
この点を考慮すると、ITIL実装対策の手段たるITILソリューションの選択肢は、幅が広い方がよいということになります。
ソリューションを決め打ちにしてしまうと、ITILポジショニングの方向性に対して、場合によっては対応できないリスクを負うことになります。
自社のビジネスロジックへの貢献を目的として策定したITILポジショニングに対応できないソリューションでは、導入する意味がありません。

<テクノロジー>
ITILでは、前述の通り、基本的にテクノロジーには言及していません。
正確には、必要な機能は提示されていますが、その実現手段としてのテクノロジー選択はユーザに任せています。
ITILはプロセス論ですので、純然たるテクノロジーによって影響を受ける部分はそう多くはありません。
例えばCMDBとしてのデータベース機能は必要ですが、それがOracleであろうが何であろうが、テクノロジー自体は重要ではありません。
可用性管理や性能管理等のインプットもテクノロジーに該当しますが、それはITIL云々に関わらず自社にとって使い勝手のよいものを選べばよいのです。
つまり、ITIL導入の議論に、テクノロジー論を持ち込んでもほとんど意味がないと考えた方がよいと思います。

以上、ITILについて3つのキーワードから考えてみました。
ITILも、IT業界の思考の呪縛から離れて見てみると、異なるアプローチが見
えてくることをご理解いただければ幸いです。
(この記事は2008年3月28日に初掲載されたものです。)